連載「子供が育つ総合的な学習」ー第2回・5月

「話し合いを重視しよう(2)」


■子供の声から
 あることについて,「内部探検」をします。すると,そのことについてどこまで知っていて,どこからよく分からないのかが見えてきます。そして,そのギャップを埋めたくなります。それが,具体的な活動への意欲です。
 「内部探検」までは,教師が子供たちに投げかけ,リードしてもいいのです。というより,ここまではがっちりと教師がリードすべきです。
 しかし,具体的な活動をどうするかは,ぜひ子供たちの声から始めたいものです。ここも教師の方で「では,〜について〜で調べてみましょう。」などと引っぱってしまうのは,総合的な学習のように企画を重視する学習では厳禁です。子供たちの意欲がしぼみます。視点の設定,活動のアイディアが小さくなりがちです。
 子供の声に教師が引っぱられるように活動に入ることが望ましいでしょう。
「内部探検」をした段階で,開放的で,ある程度問題解決的な活動に慣れている子供たちなら,「先生,みんなで調べてみようよ!」と声が出るでしょう。

■よりクリアな企画へ
とは言え,実際にいつも活動に対する意欲が満点で,具体的なところまでを描いた企画が提案されるとは限りません。上に「開放的で,ある程度問題解決的な活動に慣れている子供たちなら」と書いたのには,なかなかそうでない場合も多いという含みがあります。 今年度私が担任している学級も,開放的ではありますが,企画力が十分でなく,アイディアを生き生きと描き,表現する子は多くはありません。もうひとつクリアな企画へとステップアップしてから動かないと,動いているうちに何をしているかわからなくなってしまうことが多いものです。
 そこで,私は,多くの場合,次のようなクッションをおきます。
 @「内部探検」の結果を,書かせる
 A活動の許容範囲を伝える
 B動き始めるまで時間をおく
 Cモノを準備させる
 
■書かせる
 企画段階で,書く活動を一つ入れると,子供たちの思考は高まります。書くことは,論理的な思考が要求されます。言語を組み立てることによって,子供は漠然とした「思い」を「願い」「アイディア」へと高めるのです。何をはっきりさせるために活動に入るのかがよりクリアになり,ますます意欲的になります。
書かれたものから拾い上げて,「○○さんは,〜してみたいんだって。」などと,広めていくことで,子供発信でありながら,洗練された企画ができてきます。

■許容範囲を伝える
 次に,活動の許容範囲を教師側から伝えます。この許容範囲のことを私は「フレーム」と呼び,それを伝える指導段階を「フレームワーク」と呼んでいます。フレームワークによって,子供たちはますます活動の具体的なイメージを描くようになります。フレームを示すことで,子供たちはより意欲的になり,より自由にのびのびと活動していけるようになるのです。
 大体,次のようなフレームを示します。
 ・時間(活動終了の時刻)
 ・空間(活動できる範囲,行けない場所等)
 ・ルール(してはいけないこと,持ち物等)
 ・表現(最終的にどのようにまとめるか)
 フレームワークについては,私のホームページ上にいくつか論文や実践報告がありますので,そちらをご覧いただければ幸いです。
(http://www3.plala.or.jp/yokosan/framework,mitori.htm等)

■ある授業づくりの話し合いの席上で,私がこのフレームワークの話をしていましたら,「教師側からあれこれ制約して,子供の活動を狭めるのは違うと思う。」と反論されたことがあります。そこで,「じゃあ,先生はこの活動をスタートさせるときに,何と言って子供たちを送り出してやりますか?」と問い返しました。その先生が,おっしゃったことは,その先生が選ばれた一つの素材に子供たちを向かわせようとするものでした。そこで,「その活動ならフレームが狭すぎませんか?子供の選択幅がほとんどないのでは?」と言いますと,その先生には「いやあ,無意識に狭めているものなんですね。」と理解していただけました。どんな活動にもフレームはあります。
 この連載の第1回に書いた授業の始めのあいさつにしてもそうですが,無意識に子供をある方向に揃え,狭めていることが多いものです。フレームを意識することで,より子供たちが自由に活動できる条件を整えようとしているのです。

 次回は,B動き始めるまで時間をおく,Cモノを準備させるについて論じます。


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