連載 子供が育つ総合的な学習 第3回・6月

「話し合いを重視しよう(3)」

■企画後すぐに活動に入らない
 総合の授業づくりは,企画の話し合いから始まります。この話し合いから,子供のイメージや意欲はかき立てられるのです。そして,子供はすぐに活動を開始したがります。生き生きとした顔で「先生,始めてもいい?」と言い出します。つい,すぐにその思いや願いをかなえさせてやりたくなります。
 しかし,ここは,ほとんどの場合すぐに活動に入らない方がよいのです。以下の2つのワンクッションを入れることで,子供は育つことが多いのです。
 B動き始めるまで時間をおく
 Cモノを準備させる

■動き始めるまで時間をおく
 例えば,私は企画の話し合いは,日課表の最終時間に多く設定します。すると,子供が「始めてもいい?」と叫んだときに「うん,やろうか。あっ,でもちょっと待てよ。あと5分で帰りの時間だね。残念!明日にしようか。」などと切り返すのが容易です。(これを1時間目にやったら大変。「2時間目は算数の予定だけど…」なんて言っても「やりたいコール」が起こって,一苦労します。)
 こうして,一晩寝かせると,子供の中にいろいろな変化が起こります。「忘却する」「興奮が落ち着く」という意欲面から考えるとちょっとマイナスの変化も起こりますが,それ以上に「ワクワク・ドキドキを一晩持ち続ける」「資料に当たる」「家の人に次の日のことを話し,アドバイスをもらう」「自分のやりたいことをはっきりさせる」「モノが自分で準備できる」等のプラス面も多いのです。
 企画は温めが大切,という原則に則り,動き始めまでに時間をとるようにしましょう。

■モノを準備させる
 子供が「やりたい!」と叫んだとき,それぞれが描くイメージはまだ漠然としています。それを実現可能なレベルのイメージにするには,「場所」「モノ」等が見えることが必要です。総合の活動は,子供参画の活動ですから,子供にモノを準備させることが大切です。すべてのお膳立てを教師が整え,子供にホイホイ与えるのは避けたいものです。
 私の実践ですが,目の不自由な方に点字でお手紙を書くことになりました。そこで,点字ペンの存在を知らせました。子供たちは,すぐに「それ欲しい!」と言いました。そこで,子供たちのその声から点字ペンを取り寄せることにしました。しかし,業者の方から時間がかかりそうという返答が来ました。すると,それを知った子供たちの中に,千枚通しとカッターマットで点字を打つ子が出ました。木工用ボンドで,ポツポツを打つ子も出ました。びっくりさせられました。
 思いや願いがはっきりしていれば,活動は子供が自分で切り開いていくのだなあと感動させられました。

■総合的な学習は,「問題解決的な学習」です。見方を変えると「体験的な学習」でもあります。
「問題解決学習」と「問題解決的な学習」は,どこが違うのでしょう。「体験学習」と「体験的な学習」は,どこが違うのでしょう。

「問題解決学習」では,問題が解決できたかどうかが大切です。
「体験学習」は,体験が目標になる学習です。
 しかし,「問題解決的な学習」では,問題を解決しようとする中で学び方や自分自身を知ることをより大切にします。「体験的な学習」では,体験を手段として,やはり学び方や自分自身を知ることにねらいがあるのです。
モノをホイホイと与えては,問題は解決しても,学習は成立しない。体験は成立しても,学習は成立しないと考えています。


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