連載 子供が育つ総合的な学習 第4回・7月
「早く形を決めないで(1)」
前回まで,3回連続で話し合いに焦点を当ててきました。今回からは,実際の活動場面について具体的に考えていきます。
■ある学校で,3年生が地域探検をしました。グループごとに探検してきた結果を,次々に報告します。「○○さんの店の裏に畑があって,そこの隅にこんなものがありました。」
と,あるグループが写真を提示します。授業者がそれを,実物投影機でテレビ画面に拡大します。それは,地面から4本の柱が出ており,その上に全面が金網の箱が乗ったものでした。子供たちが,口々に反応します。
「何だろう。」「鳥を飼っているのかな?」
発表している子が,得意げに言います。
「残念でした。ウサギでした。」
こんな調子で,生き生きとした発表が続きます。地域への愛着が増す,活動例の一つです。
■授業者は,そうした子供たちの発表を受けて,グループの発表が終わると,それを大きな地図に記入していきます。この場合は写真を地図の上に貼りました。
このとき,ほんのかすかにですが,子供たちがすっと静かになりました。なぜでしょう。
■発表は,どんどん続きます。実物を持ち込むグループ,ビデオを流すグループ,…。とても生き生きとしています。探検が,子供たちの企画によるもので,準備から発表まで,よく話し合いがされていることが伝わってきます。しかし,それを受けて授業者が地図上にそれを位置づける場面になると,同じようにすっと静かになるのです。
■その理由は,授業も終了間際になってから浮き彫りになってきました。同じように授業者が,地図に記入しようとしたとき,ある子が口を開きました。
「先生!あのさあ,あのさあ,…。僕たちが行ったところ,そこじゃないと思う。」
すると,ほかのグループの子たちも口を開き始めました。
「私たちのも,そこじゃないと思う。」「私たちのは,この辺だと思う。」「え〜,もっとこっちじゃないの?」「いや,先生ので合っていると思う。」
一気に騒然という感じになりました。授業者が,次々に地図上に位置づけていったことが,どうやら子供たちの中に違和感を生じさせていたようなのです。
授業者は,あわてました。子供たちがバラバラなことを言い始めて,どうしていいか分からなくなってしまいました。時間が迫ってきていることもあり,
「だって,ここが○○さんの店でしょう?じゃあ,ここが△△なんじゃないの?」などと必死に説明しているうちに,授業終了の時間になってしまいました。
■さて,この授業の問題点はどこにあるでしょうか。私なりの答えは,次回お届けします。