連載 子供が育つ総合的な学習 第8回・11月
「言葉と活動・心情の乖離を避ける(下)」
■生活科や総合においては「3つのH」〜Heart(心情),Hand(具体的な活動),そしてHead(認知)が互いに補い合いながら,一体となって子供を内面から育てていくのです。ところが,不用意に教師がかかわることでここが分断されます。では,どのように扱えばよいのでしょうか。
■これまで実践してきて,もっとも有効と思われるのは,書き言葉を生かすということです。生活科や総合では,活動の前後によくカードなどに記録をさせますね。まず,あの書き言葉を,より子供の内面が表れるように導いていくのです。
■それにはまず,回数を書かせることです。3年生以上でしたら,200字程度を小刻みに何度も書かせます。
その際は合い言葉として,
○したこと
○見たこと
○思ったこと
の3つを書こうと,提示し続けます。1年生から6年生までこの3つの合い言葉でよいと思っています。(なお,こうした短作文についての実践は,実に数多く方式や事例が示されています。このMM発行人の藏満さんがかかわっておられる授業づくりネットワーク運動の「見たこと作文」などは,そのもっとも優れた方法だと思います。)
■さて,子供たちが書きました。しかし,それは玉石混交です。その中から,玉を拾い出します。つまり,「見たこと」「思ったこと」が表れているもの,部分を抽出するのです。「見たこと」「思ったこと」とは,どのようなことなのかを,子供達が書いた文章に,アンダーラインを引くなりして,具体的に示していくのです。これにより通常,1か月もたたないうちに子供達の書き言葉は変化します。
例えば,
「今日,野菜の苗を植えました。おもしろかったです。」
と書いていた子も,1か月後には
「昨日は天気が良かったので,苗はどれだけ伸びているかな,と楽しみにしながら見に行きました。すると,高さが3cmくらいも伸びていました。太さも一回り太くなっていました。やっぱりお日様に当たると元気になるんだなと思いました。色もこい緑になってきたみたいです。」
となります。ここには,「したこと」「見たこと」「思ったこと」が,バランス良く入っています。つまり,認知や心情が,活動と一体となって表れています。生き生きしています。
■こういう文章がどんどん出てくるようになったら,シメタものです。これを,そのまま使います。例えば,
「車椅子に乗って段差を越えるとき,○○君が前車輪を上げてくれました。そのとき,後ろにひっくり返りそうになってこわかった。車椅子に乗っている人は,いつもこんなこわい思いをしているのか,と思った。」
という文章をそのまま紹介し,
「同じ事を感じた人?」
と聞くだけで,それぞれが生き生きとした活動の様子や自分の実感を語り始めるでしょう。決して「車椅子を押すときに注意しなくてはならないのは,どんなことですか?」などと,観念的に訊かないことです。
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北海道は,生活科や総合的な学習の取り組みが活発で,また研究や実践のレベルもそこそこではないかと自負しております。それは,「よい生活はよい綴り方を作り,よい綴り方はよい生活を創る」というかつての北方綴り方運動の遺産があるからではないかと考えています。