平成23年度卒業式式辞

 春の明るい日差しの中、晴れの卒業の日を迎えた104名の皆さん、卒業おめでとう。
 今、皆さんに手渡した卒業証書は、小学校の全ての学習を修了したという証です。胸を張って、中学校に羽ばたいてください。

 本日の式に際しましては、東月寒中学校S校長先生をはじめ、たくさんのご来賓の皆様にご来校頂きました。誠にありがとうございます。

 さて、皆さんの小学校時代で、もっとも大きな社会の出来事といえば、やはり約1年前の東日本大震災でしょう。この災害は、皆さんが、将来自分の子に、そしてやがては孫にも語り継いでいくべき大きな出来事です。
 何を語り継いでいくのでしょうか。

 まずは、地震や津波の恐ろしさや備えの大切さです。
 そして、それ以上に語り継いで欲しいのは、日本人の心についてです。大変な状況の中でもパニックになったり、略奪をしたりせず、冷静に、被災地のあちこちに笑顔の花を咲かせた多くの日本人たちのこと。また、日本のために心のこもった支援をしてくれた多くの国のことも語り継いでいかなくてはなりません。

 今、日本は世界で一番人気のある国だと言われています。平成18年にイギリスが33か国を対象に行った調査では、「世界に良い影響を与えている国」1位になったのが日本でした。
 だから、今回の震災でも各国が熱意をもって助けてくれたのです。

 昨年11月、ブータン王国のジグミ・ケサル国王が、日本を訪れ、国会で演説をしました。ケサル国王は次のように述べました。
「私自身は押し寄せる津波のニュースをなすすべもなく見つめていたことをおぼえております。(中略)いかなる国の国民も決してこのような苦難を経験すべきではありません。しかし仮にこのような不幸からより強く、より大きく立ち上がれる国があるとすれば、それは日本と日本国民であります。」

 この言葉を聞いて、私は昭和18年に日本でフランス大使を務めたポール・クローデルの言葉を思い出しました。クローデルは、次のように言いました。
「日本人は貧しい。しかし高貴だ。世界でただ一つ、どうしても生き残ってほしい民族をあげるとしたら、それは日本人だ。」

 また、貝塚を発見したことで有名なアメリカのエドワード・モースは、『日本その日その日』という本に、
「世界中で日本ほど、子供が親切に取り扱われ、そして子供の為に深い注意が払われる国はない。(中略)また、日本人の母親ほど、辛抱強く、愛情に富み、子供につくす母親はいない。」
と書いています。

 このように、外国から高く評価される日本人の優しさや節度ある心が確立したのは、江戸時代だと言われています。
 江戸は当時の世界で最大の都市でした。上水道や下水道の整備は世界一。また、教育を受ける子供の割合も世界一でした。農民や町民の子も、ほとんどが寺子屋に通い、読み書きや算盤を覚えていたのです。人々の暮らしは環境にもやさしく、市民の文化が花開きました。みんなで取り組んだ「江戸しぐさ」も、この時代に完成していますし、今も「江戸学」が世界中でブームになっているほどです。

 こうした、外国の人々を感動させたかつての日本人の優しさや節度ある心が、今回の大震災でも発揮されたのです。
 そして、その日本人のDNAは、今も皆さんの中に引き継がれています。誇りをもって、日本の心のバトンを引き継いでほしいと思います。

 皆さんならできます。先日の6年生を送る会で、在校生の言葉に「6年生はあこがれでした」「6年生はかっこよかったです」という言葉がたくさんありました。遠足で、運動会で、学習発表会で、委員会やクラブ活動で、そして休み時間の廊下やグラウンドで、皆さんが見せてくれた優しさやがんばり、節度ある心が在校生に響き、それがあの送る会で響き返してきていたのです。
 どうぞ皆さん、優しさ、がんばり、節度という心を忘れずに、中学校でもよい人間関係を築いてください。そして、やがて皆さんが、日本の復興の中心となって活躍してくれることを心から期待しています。繰り返します。皆さんならできます。

 最後になりましたが、保護者の皆様にお慶びを申し上げます。本日は本当におめでとうございます。お子さんは人生において最も多感な時期に入ります。悩むことも多いでしょう。
 しかし、皆様の前向きに生きる姿が、必ずお子さんを勇気づけ、良い方向に向かわせていきます。お子さんが夢に向かう姿を、どうぞ温かく見守り導いてやってください。
 そして、いつまでも「子供にあこがれられる大人」でいてください。
 これまでいただきましたご厚情に深く感謝いたします。そして、今後ともよろしくお願い申し上げます。

 さあ、卒業生の皆さん。羽ばたきの時です。胸を張って、笑顔で飛び立ちましょう。
 がんばろう、日本! がんばろう羊っ子!

 平成24年3月19日
札幌市立羊丘小学校 校長 横藤 雅人

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