総合的な学習・今,どこから手をつけるか

 以下は,1999年11月10日(水),苫小牧市で開催された市教研集会生活科部会に招かれた際のレジュメである。
 総合的な学習の時間については,趣旨や実践例についての研修を進めることも大切だが,この99年後半から2000年度にかけては,具体的に行動を起こすべきときである。そう考え,主に特別委員会の業務について具体的かつ大胆に提案した。


1.はじめに
 ・もう待ったなし!〜「みんなでやるんだ!」と意志統一をしよう
 ・考えがまとまってからスタートするのでは,実りは少ない。歩きながら考えよう
 ・今こそ校長のリード性を発揮するとき〜改革の時代は,リーダーの提案が大切
 【盛り上がる話題例】
 ・「2010年,大学入試は募集定員より受験者が少なくなる」
 〜受験体制が変わるよね。国立大学もなくなるし。
 ・「西暦2025年のシュミレーション」
  〜就労人口は,50%を割る。フリーターの増加(社会貢献意識の低下)。余暇の増加。→福祉,国際理解,心の教育,環境への取り組みって必要だよねえ。
 ・「インターネットは,人類史上第3の改革」「バーチャルエージェンシー」,情報化の波
 〜情報の進み方ってすごいね。→「ホームレス」(ホームページを知らない人)にならないようにしなくっちゃ。
 ・「情報公開」「評議員制」「学校選択」
 〜学校そのものの存在意義の問い直しをしなくては。学校教育の枠組みを変える取りかかりが,総合的な学習なんだろうね。
 ・「教育改革の波」
 〜世界と日本の教育史に一貫して流れてきたのが「総合」なんだね。日本の教育史では,大正,戦後に次ぐ第3の波のまっただ中にあるんだ。(生活科の基礎研究(1)をご参照ください。)

2.具体的な方策(1)〜「総合」特別委員会をつくろう
 ・研究部にまかせられるものではない! 生活科の立ち上げの時とは全く違う
 ・メンバー〜少数精鋭で(多ければ,クリアな方針は示しづらい。召集すら難しければ,志気が下がる。必読「ドイツ参謀本部」渡部昇一)
  「=校長or教頭+教務主任+研究部+学年メンバー < 7人 」の公式

 【考えられる推進委員会の業務】 

・生活科授業研を開催しよう
 〜生活科の理念と方法に学ぶ。の姿の見取りを交流することは,現在のカリキュラムの中でできる最良の「総合」への準備。

・教科の発展としての総合的な学習授業研を開催しよう
 〜3年生以上なら,教科の発展としての学習を。自己選択課題で調べ学習をしたり,コンピュータを使うなど。

・児童の実態をさぐろう
 〜アンケートが一般的。職員会議などの中で,教師の見取り(うちの学校の子って,〜がいいところよねえ。)を交流するのも効率的。

・学校の名刺を作ろう
 〜地域への働きかけの条件整備のひとつ。ついでに,服装や言葉づかいも見直すチャンス。

・学校だより等にて,2〜3回シリーズくらいで保護者への説明を行おう
 〜懇談で,配布する資料を作成することも効果的。保護者は言わないだけで,関心は高い。先手必勝。

・埋もれている教材発掘マップを作成しよう(校舎内,校地,地域)
 〜生活科マップがベースとなる。 3年生以上ならと一緒に取り組める。取り組むこと自体が総合的な学習になりうる。

・地域の活動暦を作成しよう
 〜生活科暦がベースとなる。これもと一緒に作りたい。

・人材リストを作成しよう
 〜保護者,地域の組織,公共機関にアタック。しかし,お願いして活躍の場がないと失礼に当たるので,配慮は必要。謝礼についても,早いうちから交渉。 これは,には委ねない方がよい。

・日課表,チャイム,時数計算を検討しよう
 〜毎週3時間ずつ総合という固定時間割では,うまくいかない。B週は,総合的な学習を中心にダイナミックに動く週。A週は,教科の学習を進める週,などと柔軟に展開するのがよい。(この案は,大宮の高橋順氏のものである。)
 〜チャイムも,中休みと給食くらいでよい。
 〜時数計算は,これまでのように35で割り切れるようにはなっていない。15分を1モジュールで考えるなど,これも柔軟に。これまでのタスクオンタイムの発想から,タイムオンタスクへ切り替えたい。
 〜すべてを5日制とのかかわりで考えなければ。各学年で,学年だよりなどで時間割を毎週知らせていくスタイルになることと思われる。

・予算措置の検討をしよう
 〜外部から人を呼べば,それなりにかかる。新たな教材を購入する必要も出てくる。特に,国際理解と情報は外部講師中心の授業を組むのがよいと言われているので,交通費等をどうするかなど基本方針をはっきりさせておく。

・カリキュラム作成の基本方針を策定しよう
 〜カリキュラムは,仮キュラムと考え,「歩きながら」変更を重ねていく。しかし,それにしても,基本方針がなければ各学年・部署が作業に入れない。「実態と目指す力」 「学校のテーマ」「教育目標とのつながり」「行事や特別活動との関連」「カリキュラム編成の原則」など,明確な指針を打ち出したい。
 〜また,国際理解と情報については,3〜6年までのある程度系統的なカリキュラムが必要。そして,それは地域の中学校とも連携が必要。(外部講師に中学校の教師を招くのもよい。)コンピュータについては,リテラシー(活用能力)を学年ごとにどこまで高めるかを考えていく。 (できれば,1年生から教科やゆとりの時間等でコンピュータや英会話については取り組み始めたい。)
 〜総合以外の教育活動とのバランスと関連を図ろう。例えば,国際理解は総合でやるから,教科では国際理解的な観点を入れず,しっかり教科内容を教え込む,これでは意味がない。「生きる力」を様々な場で育むという構えが必要。また,総合的な学習は改訂の目玉だが,改訂の趣旨には「基礎・基本」や「ゆとり」もある。

・環境を整備しよう
 〜が自分で掲示を取り替えることができる工夫(クリアファイルの活用),に働きかけ,自ら学ぶ掲示(あみだくじ型の掲示)等,アイディアの生かしどころ。
 〜ビオトープ,校内ホームページ,体験コーナー,が参画できる環境を構成しよう。

・学習集団の組織について検討 しよう
 〜従来の一人の担任が,同年齢の決まった学級を継続的にという図式から,の活動に合わせた柔軟な組織づくりへと変換が必要。活動との願いに合わせて,「学級」「学年」「任意グループ」「地域別」「縦割りグループ」など柔軟に。

3.具体的な方策(2)〜「仮キュラム」をつくろう
 ・「今できること」からまず歩き出す(横断的にならすぐにできる)
 ・「紙キュラム」はつくりたくない
 ・2002年のシュミレーションは,大胆に

 【超大胆なカリキュラムの例・私案】

 議論沸騰させることが,今必要である。できるだけ数字を入れて,具体的に提案する。例えば,以下のように。(こんな提案なら,どんな職場でも「ちょっと待った!」といろんなところから叫ぶのでは。)

A週(通常の教科学習中心。年間25週程度。原則として日課は5時間目まで。)
・コンピュータリテラシー,国際理解(含む英会話)は,系統的なカリキュラムにより,1年生から週1〜2時間程度実施する。
・教科の学習は,横断的な構成を柔軟に構築する。学期に1〜2単元実施する。(ただし,目標は教科の目標を達成するものとする。)
・基礎基本の内容(読み書き計算,基本技能)については検定方式等を取り入れて,一人一人に確かな学力を保証する。
・高学年では,教科の学習のまとめには,できるだけコンピュータを活用する。(時数は教科でカウントする。)

A ,B週共通
・テーマ名「チャレンジ」として,週1時間程度自己選択課題,グループ選択課題に取り組む時間を設ける。
・週1時間,「おもしろ発見タイム」として,クラブの発展としての活動を放課後の時間帯に設ける。

B 週(総合的な学習中心。年間10週程度。6時間目もあり得る。)
・地域学習,環境,福祉・健康,自然体験,ものづくり等を行事や児童活動,芸能教科と連動させ,取り組む。
・自己選択課題で企画からプレゼンテーションまで個人,一部グループで取り組む。


 【コンピュータリテラシーの目安・私案】
 *総合的な学習は3年生以上だが,1年生からコンピュータにはなじませていきたい。国語や図工,生活科の表現等で柔軟に取り組んでいきたい。

学年 育てたいリテラシーと主な内容
お絵かきソフトや簡単なゲームでコンピュータの起動,終了,データの保存,タブレットやマウスの基本的な扱いができるようになる。
キーボードも使って,絵日記を書くことができる。
ワープロ,表計算ソフトを使って,自分の学習についてまとめることができる。デジタルカメラの画像を文書に貼り付けたりすることができる。
インターネットに接続し,必要な情報を集めたり,集めた情報をワープロなどを使ってまとめたりすることができる。
電子メールやテレビ会議システムを使って,情報を発信・受信することができる。
個人の学習テーマに沿って,ホームページを作成し,全校に発信することができる。また,年間を通じて更新し,ある程度まとまったらアップロードし,全国・世界と交流を進めていく。


【国際理解の目安・私案】

*これも,1,2年生の内容を示した。総合的な学習は3年生以上というような形式的な割り振りをするのではなく,小学校6年間で何を育てるのかという視点でとらえたい。また,中学校との連携もにとっては,非常に有意義であると考える。

学年 育てたい力と主な内容
外国語の歌やゲーム(じゃんけん等)に親しむ。修得単語数20語程度。
外国の挨拶や食べ物について調べ,体験したりして外国の文化を知る。外国語(英語が中心)で簡単な挨拶ができる。修得単語数累計70語程度。
いろいろな国の生活ぶりを調べ,外国の文化に対する理解を深める。簡単な自己紹介や家族紹介ができる。修得単語数累計120語程度。
英語の歌やことわざを覚えたりする。修得単語数累計200語程度。
諸外国と日本の習慣や歴史の違いを調べる。簡単な英語の絵本を読む。
翻訳ソフトの助けを借りて,日本の文化や歴史,現状を英語でホームページにまとめることができる。


 【チャレンジの例・私案】

*総合的な学習に隠れてしまいがちだが,「児童一人一人の興味や関心に対応する教育」も大切。ゆとりの時間などを活用して,検定中心の活動を取り入れるのは,「生きる力」に直結する。
*週に1時間,全校一斉に「チャレンジタイム」とし,学年・学級の枠をはずし,自己選択の活動を推進する。
*検定中心なので,担任以外の職員や外部の人材も活用していく。
*活動メニュー例としては,つぎのようなものが考えられる。(結果が明確であり,一人で取り組めるもの。)

昔遊び  ・けん玉  ・お手玉  ・割り竹  ・竹馬  ・折り紙
ことば   ・暗唱詩文 ・百人一首 ・アルファベット  ・ローマ字(キーボードタッチタイピング)
音楽    ・リコーダー
体育    ・なわとび  ・サッカーボールリフティング  ・鉄棒
社会    ・国名,県名  ・国旗  ・ハングル   


 【ある2週間の○年生の時間割例・私案】

*15分モジュールにすると,かなり柔軟に時間割を組める。
*中休みと昼休みは,原則としてチャイムを鳴らしてしっかり確保する。自由な遊び時間は,にとってとても貴重な時間である。
*体育やPC(パソコン),家庭科等の時間は,場所の関係で調整が必要である。基本的な割り当てに則りながら,柔軟に調整を図っていく必要がある。
*横藤案では,「国際理解」と「PC」は,ある程度系統的な扱いをしているので,A週,B週共に時間割に位置づけている。この辺りは,各学校で十分に論議していただきたい。この提案では,論議を活発にするため,あえて大胆な示し方をしている。
*以下の時間割では,一見すると社会科が少ないように見受けられる。これは,「横断的な学習」として,国語や理科と連携させて実施していると考えていただきたい。(単独であるのは,社会科固有の学習)
*下は,あくまでもイメージ。例えば,「PC」や「国際理解」,「学活」などのない週もありうる。時数配分も,
*B週の水曜日は午前中,自然体験でゆったりと過ごすイメージ。その疲労回復のために,給食後下校。他学年は午後も授業。ただし,年間時数を計算すると,6時間目に通常の学習という設定も考えられる。あくまでも柔軟に構想していきたい。
*B週においても,体育は適宜実施するのが望ましい。また,国語や算数はコンスタントに実施した方がよいと考えられる。

B週 A週
PC 国語 自然観察 道徳 国語 国語 国語 横断的 算数 国語
横断的 福祉 国際理解 音楽 算数 家庭科 図工
体育 理科 体育 横断的 算数 PC
国語 算数 国語 算数 音楽 体育 理科 横断的
算数 音楽 体育 理科 体育 道徳 国語 チャレンジ 国際理解
チャレンジ クラブ 児活 学活 児活 国語

4.具体的な方策(3)〜今こそ,授業をもとに話し合おう
 ・やるとやらぬは大違い〜やったところから見えてくる
 ・生活科は,総合の血族〜まず生活科からやって,感想交流から下のようなことの実感ができれば。 
 【授業研究の話題例】
 ・やっぱり活動は,具体的じゃなくちゃ。「総合」では,社会的な課題とたちの実生活との距離感を縮める課題や切り込み口が大切だね。
 (例)川〜環境問題へ,おにぎり〜国際理解へ
 ・活動を選択させることって大切だよね。〜フレーム型の活動構成
 (レール型,放任型では適切な選択に結びつかない。適度なフレームの中に,の主体的な活動が展開する。原則的には,みんなが始めから終わりまで同じ事をしているのは望ましくない。しかし,形が一斉に見えても,選択が生きていればOK。反対にそれぞれが別々の活動をしていても,主体的な選択の結果でなければダメ。ただし,メディアリテラシーや技能修得,マナーなどはほとんどみんな同じ事をしていることもある。ねらいと内容に合わせて柔軟にとらえたい。)
 ・表現は,「総合」でも重視したいね。
(生活科は,自然な表現と交流。総合は,コンピュータなどを活用して,電子新聞やホームページづくり,プレゼンテーションを。どちらも,こまめに書く習慣を。スピーチ能力も育てたい。)
・この活動で何が育ったのかなあ。ここ(問題解決)が見えなければ,総合はうまくいかない。見る目を肥やしていかなくては。

生活科 共通点 総合
・低学年児童の発達に配慮
・身近な社会や自然
・身近な社会や自然
・幼稚園との連続
・感情の重視
・没頭
・その子のペースで
・現実生活を対象とする
・具体的な活動,体験
・地域や人とのふれ合い
・自己選択・表現と交流
・の問題発見,解決
・支援(中心)
・感動,喜び
・より広く
〜世界へ,地球規模で
・現代の課題へ
・より豊かで高度な思考,表現に
〜表現からプレゼンへ
〜気付きから調査へ
〜コンピュータも使って

 ・日常の授業が「の問題解決」になっているかどうかを話し合っていかなくては,総合も絵に描いた餅になる。


結論
 総合への取り組み,今できることから始めよう。
 すぐ,始めよう。
 明るく楽しく始めよう。
 大胆に,ロマンいっぱいに始めよう。
 具体的に始めよう。

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