ワンダー! 1月号
平成14年1月19日(土) 第82号 今年もよろしく!
◇3学期が始まりました。今年も残り少ない日々ですがどうぞよろしくお願いします。
さて,今日は黒板に次のように書いて子供たちを迎えました。
(犬のしっぽの絵)(葉っぱの絵)曜! 兄から三学(木の絵) またみんな(手の絵に ゛) 「外の反対」四九 元(木の絵)二 がんばろう! |
黒板を見て,さっそく子供たちはわいわい始めます。
質問してくる子には,「ナイショ!」と返します。
答え合わせは,もちろん全員そろってから。
みんなで声を揃えて読んでみると…
おはよう!
きょうから3学期
またみんなで
なかよく
元気に
がんばろう!
◇長い休み,子供たちはどんな過ごし方をしたのでしょうか。話を聞くのがとても楽しみです。今日は,自然な会話の中で。明日は学年での発表会で,たくさんの生き生きとした報告が聞かれるのを楽しみにしています。
日本人は,人前で自分のことをきちんと話すのが苦手な人が多いと言われます。以心伝心の文化が,その原因の一つであると言われますが,これから国際社会に巣立っていく子供たちには,きちんと話す力を育てたいと思います。具体的には,
・口の形をはっきりとさせ
・適度な大きさの声で
・聞き手の方をしっかりと見ながら
という,話す技術と態度を意識すること。それと,
・魅力的な内容の話を
・ユーモアも交えて
・順序よく
というような,内容・工夫で話してほしいと思います。
ご家庭でも,一度練習すると自信が深まるかもしれませんね。
◇さて,私自身の冬休みについて少しご報告を。
まず,最大の出来事は,全道の教職員に呼びかけて開催した「授業道場 野口塾」というイベントを主宰し,実現したことです。これは,野口芳宏氏という元北海道教育大学函館校の教授であった先生を招いて,講義を聴き,さらに数人の会員による研究発表を野口先生に鋭く切っていただくというものです。(野口先生は,国語授業の名人として広く知られています。著書も多数。私はとても尊敬しています。)
1月14日の成人の日,朝9時30分から午後5時までびっしりの研究会に,全道から42名の先生が参加し,研修に励みました。その準備,そして当日の発表,その後のお礼状等の後始末など,けっこう忙しかったですがとても実りの多い1日となり,やりとげた満足感を味わうことができました。
◇プライベートな面では,6年生の息子を東京・山形へ2泊3日の一人旅に出したことでしょうか。
息子は,3年生くらいから将棋に興味を持ち始めました。私は普段ほとんどテレビを見ないのですが,将棋がペーパー初段なもので,将棋のテレビ放送だけはけっこう見ました。そんな影響もあったのでしょう。5年生くらいからめきめきと腕を上げ,今息子は3段。もう私はまるきり歯が立たなくなってしまいました。
そんな息子が,「東京の将棋会館に行ってみたいな。あと,山形の天童に行って,駒を彫っているところを見てみたい。」と言い出しましたので,「それなら,自分で計画を立てて一人で行って来い。」と背中を押したのです。
初日の夕方,電話がかかってきました。
「さっきホテルに着いたよ。でもね,お父さん…。」
こう言うと,息子は急に涙声になりました。
「飛行機が揺れてね,すごく具合が悪くなったの。おなかの調子も悪くて夕食のカレーライスを残しちゃった。そしてね,そしてね…,何だか僕ホームシックになったみたい…。」
さすがに私の胸もキュンとなりました。
「そうか。…がんばれ。…将棋会館での将棋はどうだったんだい。」
「うん。6勝2敗。」
「そうか。具合があまりよくない中でも,よく戦ったんだね。よくやったね。もうひとがんばりだよ。今日ゆっくり休めば,明日は元気になっているさ。だから,がんばれな。」
電話を切った後,しばらくしんみりとしてしまった我が家でした。
次の日も,天童に向かう新幹線に乗り遅れて次の便に乗るなど,いろいろあったものの何とか2泊3日の旅を終えて千歳空港に手を振って現れた息子は,心なしかたくましく見えました。
今回の息子の一人旅は,この学級の子たちを,あれこれ教えずに新札幌方面に送り出したのと,基本的に同じです。「かわいい子には旅をさせよ」をまさに文字通りしたわけです。泊を伴う,しかも見も知らぬ土地ということで,息子も我々もハラハラドキドキの度合いはとても大きいものでしたが,やって良かったと思っています。
◇後は,本も読みました。ミニ論文も30本ほど書きました。老人ホームでの太極拳講座の指導ボランティアもしました。まずまずこんな冬休みでした。
今日からは,またこの学級の子たちと,残された日々を精一杯充実させていきたいと思います。どうぞよろしく!
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おまけ
・今日,2年生に3名の転入生が入ります。1組にも入るかな? お子さんから聞いてみてくださいね。
平成14年1月21日(月) 第83号 新学期開始!
◇以前書いたような気がしますが,私は「教育とは別れの日に焦点を定めた営みだ」と考えています。この子たちとの生活も残すところ47日。私の持てる力を精一杯出し切って,別れの瞬間までの時間を輝かせたいと思います。
さて,土曜日は私が教室に入ると,もう待ちかねていた子供たちから次々に冬休みの報告が入りました。
「先生からの年賀状,届いた!」
「ディズニーランドに行った!」
「歯が抜けたよ!」
と,いろいろなことを一気に話しかけてくるので,とてもさばき切れません。でも,とても楽しい幸せなひとときでした。
私に押し寄せてくる軍団から離れたところでは,黒板のメッセージを読んでいるグループ,あるいは子供同士で話に花が咲いているグループと,まあにぎやかなにぎやかな新学期のスタートでした。
◇冬休み中に,神さんのお宅に赤ちゃんが誕生していました。12月23日生まれ。男の子,名前は「翼」くん。それをみんなにお知らせして,拍手で祝福しました。佐・翼くんが照れていました。
◇朝の挨拶をすますとすぐに始業式。廊下に並んだところで,「おっ,並び方がきれいだね。歩き方,話の聴き方もきれいに,しっかりね。」と声をかけますと,子供たちの背がすっと伸びました。
その後の,始業式での話の聴き方もなかなか良かったです。意識をちょっと向けさせるだけで,動きがきれいになります。かわいい!
◇転入生が一人入りました。
M.Tさん です。
手稲区の西宮の沢小学校から来ました。どうぞ,よろしく!
◇転入生が入ったら,私は学校の案内を子供たちに任せます。まず,学校のどこを案内するとよいかを挙げてみます。子供たちからは,「玄関のインターホンを教えないと」とか「図書室の場所を教える」など,いろいろ出されました。私の方から玄関の靴箱の位置も一緒に決めてあげるようにお願いして,各号車毎に案内ツアーに出発させました。
1号車の9人で,玄関から1階の各部屋を。
2号車の7人で,2階を。ちゃんと校長室や職員室にもご案内です。
3号車の9人で,3,4階を。トイレや水飲み場も教えました。
この活動は,生活科の学校探検の発展でもあります。転入する子にとっても,迎える子にとっても,自然で楽しく,意味の深い学習です。
Mさんも,学校の中を歩くうちにだいぶ表情が柔らかくなっていきました。
◇Mさんを迎えた後,まず背の順を変えました。
休み中に急に背が伸びた子がいて,けっこう順が変わりました。一番入れ替わったのは,板くんでした。伸びたんだねえ。
◇次いで,席替え。またお見合い方式です。次のようになりました。(略)
◇今日の学活で係も決定しました。(略)
◇さらに,冬休み中に誕生日を迎えた子が神野さん,矢野くん,今日が誕生日なのが藤井さん,それと休み前に高橋さんが誕生日を迎えたということで,この4人を肩車しました。4回響く「ハッピーバースディ」。にぎやかに楽しい新学期の始まりとなりました。
平成14年1月30日(水) 第84号 言ったでしょ!
◇国語で,かぎ括弧(「 」)の書き方を学習しました。
・会話文のかぎ括弧は,行を替えること。
・かぎ括弧は,一番上のマスから書き始めること。
・上のかぎは,マスの右下に。下のかぎはマスの左上で,句点(。)の横に書くこと。
・文字とかぎを同じマスに入れないこと。
こんな約束事を使って,正しく書けるように指導します。
さて,これをどのように指導したかを報告し,子供に力をつける秘訣を考える材料としてみたいと思います。
◇まず,教科書の表記を例に,上の要素を説明します。教科書の例文は,右のようでした。
次に,「先生と一緒に書きましょう」と言いながら,まず
「日本人は、」と書きます。そして「ここで行を替えるんだよね。」と言いながら,かぎ括弧を次の行の一番上に書いて,ここで机の間を巡って正しくできているかどうかを確認をします。
さて,この段階でどの程度の子が正しく書けると思いますか?4択にしますので考えてみてください。
1 ほとんど全員が書ける 2 3分の2程度が書ける 3 3分の1程度が書ける 4 ほとんどが書けない |
全体への指導は,けっこうていねいにゆっくりとやっているつもりです。
ですが,いざ書かせてみるとそう簡単に全員ができるわけではありません。
正解は「3分の2程度」です。
◇ここで,間違えている子には改行の場所を示したり,かぎ括弧の位置を教えて,続けます。またかぎ括弧のおしまいの位置の場所で確認。さて,このときに先ほど間違えた子たちは正しく書けるようになっているでしょうか?これも4択で。
1 今度はほぼ全員が書けるようになっていた 2 わずかに書ける子が増えた 3 ほとんど変化なし 4 逆に書けない子が増えた |
これは,3が正解です。子供が,「分かる」「できるようになる」ということは,そんなに簡単なことではありません。
◇一通り,上のように「教師と一緒に正しく書き写す」ということをしてから,次の段階に入ります。ここでは
先生が「こら。」と言った。 |
という文を,正しく書かせます。今度は,一々立ち止まらずに一気に最後まで書かせます。
さて,一度教師と一緒に正しく書くという下地があってのこの問題,どの程度の達成率でしょうか? またまた4択でお考えください。
1 今度こそほとんどの子が書ける 2 わずかに書ける子が増えた 3 ほとんど変化なし 4 逆に書けない子が増えた |
◇問題文が変わると,子供たちは「応用」を求められるのですね。ここで正しく書けた子は,何と4名でした。(何と,といってもほぼ私の予想どおりでしたが。)
ことほどさように,正しい知識や技能の獲得ということは難しいものなのです。
しかし,ここに来て間違えも2度3度と重なってくると,さすがに多くの子が分かりはじめます。「ああ,何だ。そうか。」などというつぶやきがぼちぼちと聞かれはじめます。 ここで,私は次の問題を提示しました。
先生が「あら。」と言った。 |
冗談のようですが,基礎的な技能を身につけさせるためには,このような「一部変化」がとても大切です。さあ,今度は?
1 今度こそほとんどの子が書ける 2 わずかに書ける子が増えた 3 ほとんど変化なし 4 逆に書けない子が増えた |
今度は,2でした。これだけやっても「わずかに増える」程度なのです。
ここでたたみかけます。また冗談のような例文ですが。
先生が「ありゃ。」と言った。 |
これくらいやって,ようやく「ほとんどの子が自信を持って書けるようになる」のですね。(出席26名中,一気に24名が正解でした。)
◇以上の指導は,約25分間の指導でした。この25分間で,子供たちは一つの技法を獲得したのです。そして,後半はとてもおもしろがりました。分かる,できる楽しさを感じていたからです。
ここまでやって,確実に変化させることが大切です。ここまでをきちんとしないで「言ったでしょ!」と分からない責任を子供に押しつけるのは,いけないことです。
ある子が言いました。「お母さんは,すぐに『何でできないの。』『この前言ったでしょ。』って言うの…。」周りの子も頷いていました。
この言葉と様子にちょっと胸が痛くなったものですから,長々と拙い実践を書かせていただきました。