日本酒は現在心有る蔵の過去からの伝統の造りに(偽物造りではなく)真の意味での 進んだ科学技術、冷蔵技術を取り入れることによって至上最高の品質に達していると言えよう。 そしてこのままいい意味での競争を続け、更に新たな境地へ向かってほしいと願うところだが、 日本酒には様々な問題が蓄積している。その問題は戦争〜戦中統制経済、戦後の 経済効率優先主義など社会の歪みから生じたものを中心にたくさんある。以下列挙してみる。

● 日本酒が抱える諸問題
蔵元数の減少
   10年前には2500ほどもあった蔵が、現在1500を数える程まで激減している。 原因として低品質偽清酒の傲慢なシェア強奪によって小さなまじめな蔵がやっていけない、 というのもあろう。下の後継者不足も深刻である。また環境破壊による水質汚染も考えられる。

後継者不足
   これが最も深刻な問題であろう。蔵主、杜氏、蔵人などの絶対的な不足である。 日本酒を魅力のあるものとして社会に認識させられないために、それを発展させようという力が 官にも民にも育たない。それどころか良好な発展を阻害する低品質偽清酒の傲慢なシェア強奪が続く ばかりである。

水質の劣化
   高度経済成長期〜バブル期の歪みとして国土を徹底的に破壊し尽くすという 愚行があげられる。不必要な化学薬品による家庭排水汚濁、森林伐採、不必要なダム・堰による 水周りの生態系変化、ゴルフ場・・・水によって移転・廃業を余儀なくされた例は後をたたない。

おかしな法制度による偽物の氾濫
   詳しくは「日本酒について思うこと」 「日本酒の種類」などに譲るが、添加物 や名称の規定、表示・情報公開の規定の無さなど、何か大きな力と利害が働いているようにしか 思えないおかしな法律が続いている。自ら変えるべき酒造メーカーもそこに甘えているふしがある。

情報公開の無さ
   上の法制度も手伝い、その成分などについてなど、あまりにも情報が公開されない 狭い業界。その結果として、他の酒類に比べて競争力の無さとごく狭いマーケットを奪い合うだけの 需要創造力の無さを生む。

社会的認知度の低さ
   本当の日本酒がすばらしい技術・品質・伝統であること、また偽者ばかりである現状、 その価値感覚(安っぽいイメージで定着)など、日本であるにも関わらず、全く社会が日本酒について 認知していない。提供サービスのソフト面の絶対的不足。

消費量の慢性的な減少
   絶対消費量、酒全体でのシェアなどの減少。その挽回策として偽物をやっきになって 売ろうという甚だその頭を疑いたくなる状況

海外生産日本酒の増加
   平等な競争市場土壌、きちんとした規定・法制度ができないままに、海外生産清酒 の輸入量がどんどん増加している。ただでさえ(いいもので市場をとるという、真の)競争力がない ところに無理矢理「国際化、グローバルスタンダード」「規制緩和」を持ち込もうとしている。

酒造好適米の不足
   ある品種が不足し続ける状態。普通より造りづらい米を造る農家への利潤の低さ。

同じような味になる創造力の無さ
   「ある米+ある酵母=こういう味」に従い、流行っている味(端麗辛口とか)を やたら造り、どの酒もすぐ同じような味になる、商品として致命的な個性の喪失。

精米後の白糠の処理
   日本酒は米を削れば削るほどクリアな味になるが、その削った米、白糠は どうなるのか?これを使って造った“白糠糖化液”の使用表示の義務の法制化がされていない。 やたら削る傾向にある現在の日本酒業界では大きな問題のはずだが、あまり情報は聞いたことがない。


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