ペルーの旅7日目(11月25日=土)

 

朝、快く目覚める。高山病など跡形もない。

前日、ホテルへ着いたのは夕刻で、治安の上でもうろうろ歩くことはできなかったので、この日は市内ツアーのタクシーが来るまでの午前中、ホテルの近辺を散策してみようという気になる。昨日のうちに確かめておいたホテルの位置だと、まっすぐ南下していけば程なく恋人岬に出られることを知ったので、地図の通り歩いてみる。岬には迷うことなく、ほんの10分ぐらいでついたろうか。

リマのこの日の気温は、日本の5月ぐらいという感じだったろうか。もっと暑い感じを予想していたのだが、それほどでもなかった。ワイシャツ1枚着ていればいいという感じ。恋人岬は、市民憩いの公園になっていて、花壇などがきれいに整備されていた。中央に恋人岬の名の由来になっているのか、男女一組が抱きあっている巨大な石像がある。日本だとちょっと照れくさい感じがなきにしもあらずだが、ラテンの地ではこれくらいの表現は問題はないらしい。岬だけあって、公園などの下は一応切り立った崖になっており、海が迫っている。太平洋。この海が遠く地球の反対側の日本まで広がっていると思うとなかなか壮大。公園でベンチに座って、遊んでいる子供や散歩している犬などの姿を見ていると、それなりに退屈もせず、ゆったりとした気分に浸ることができた。

さて岬を後にすると、地図に従ってちょっとだけ遠回り。東に迂回すると、初日に泊まったLa Haciendaホテルのそばを通る。到着した日は暗くてよく分からなかったけれど、なかなかいいホテルなのだろう。おそらく。ホセ・ラルコ通りをそのまま北上、ディアゴナル通り、リカルド・パルマ通りと交わるロータリーあたりがミラフローレスの一番の繁華街らしい。市役所があり、その傍らにセントラル公園。何の花かは分からないが可憐に咲き誇り、近くの路上では絵が所狭しと並べて売られていてさながら<戸外の美術館>のよう。いわゆるキオスクなどが立ち並び、物売りが行き交うなどにぎやか。

午後から、車が迎えにきて市内半日ツアー。国立人類学考古学歴史学博物館、黄金博物館をめぐる。平日ならこれに天野博物館も一緒にまわってくれるらしいのだが、昨日のリリアナの友達のでぶっちょのオバサンは「土曜だから残念ながら開いてないわねえ」といっただけ。その分ツアー料金が安くなっているのかどうかは確かめようがない。

迎えに来た運転手は30代であろうか40代なのか、皆目見当がつかない。行き先はわかっているから苦労しないものの、彼なりに善意で町の案内をしてくれているのだろうが、私にスペイン語が分かるわけがない。英語であっとしても、だが。

まず、国立人類学考古学歴史学博物館。入場料10ソル。なんか部屋がやたらたくさんあったという印象。旅行のたびにだが、博物館に行くにはあらかじめある程度の予習をしておかないと、説明文なんか当然分からんし、見るものが多いだけに本当に苦行になってしまう(文物を見ることはそれはそれで好きなのだが)。ここでの展示で分かりやすかったのは、ナスカ文化のミイラ。余り気持ちのいいものではないけれども。展示についてはそれなりのものはそろっているのだろうが、電気の節約のためか、部屋に出入りするたびに係員が照明を点消灯するのには参った。まあ、別に追い立てるようについてくるわけではなく、あくまでもこちらのペースにあわせてくれるのだが。それぐらい電気のありがたみを感じていないほうが、よくないのではあろうが。

次の予定の黄金博物館に行く前に、運転手にチップを弾んで、ここからそう遠くないラファエル・ラルコ・エレラ博物館に行ってもらう。ここは個人収集の博物館。私的経営というわけなのか、建物も近代的で展示室も黄金の小物などが置かれている部分は非常にきれい。展示の中身というと、やたら土器がたくさんあって、それが同じようなものばかりなので、少々退屈といえば退屈。<地球の歩き方>によるとモチェ文明中心に4万5千点にのぼるという。形の区別のつかないような土器が山積みにされていて(実際はそれほど乱雑な置き方をされているわけではないのだが)、果たしてこれ1点1点ずつにちゃんと目録なんかついているのかなあ、と要らぬ心配をした次第。ここの博物館には別棟があり、さしずめ<ペルーの秘宝館>。古代の土器を展示しているのだが、露骨な形状・形態で、ちょっと照れる。カップルで入場するのは効果あり、か、あるいは逆効果か。ちなみに子供の入場は許されていないらしい。

20分ほど走り、黄金博物館へ。実業家が収集した文物の集大成だそうで、木々が生い茂る閑静な一角にある。入場料20ソル。まず1階。武具中心の展示。鉄砲やら剣などが雑然と並んでいる。なぜかよく分からないが、日本の甲冑や戦場の旗指物のようなもの、日本刀なども。2階に上がると土器やら織物やら。ただ並んでいるだけなので、ふんふんと通り過ぎるだけ。地下1階に降り、ここは施設の名の由来の<黄金>の展示。金銀の装身具がびっしり並んでいて、この階は見ごたえあるというべきか。しかし、全体にこの施設はやはり個人の収集道楽の域を出ず、展示の仕方が非常に乱暴だという印象を受けた。展示品の数を減らしてでももっと体系立てた展示をしたらどうだろうか、というのが率直な感想。

ホテルに送り届けてもらった後、まだそれほど暗くないので街の中心部に出かけ、夕食。レストランでビールと肉料理をいただいた。路上で日本円を両替。詳しくは比較していないが、割とレートはよかったような気がしている。お金も準備できたことだし、中心部のロータリーを挟んで北東にあるおみやげマーケットへ。民族楽器ケイナ(日本の古楽器笙のようなやつ)ほか、頼まれていた土産を買う。ここの売り子さんが、高校を出てまもなくという感じの若さなのだが、いかにもラテンという感じのエキゾチックなべっぴんさんで、おまけにつるしてあるカバンなどをとってもらうときには豊かな胸元がのぞいたりして、すっかり悩殺されてしまった。やっぱ、女性は日本の次はラテンに限りますなあ。おかげで買う必要のないものまで買ってしまいましたかな(?)。

ホテルに戻り、この日一日回ってみてツアーの値段からして空港への送りも含まれていてもいいのじゃあないかという気がしてきたので、リリアナの知り合いの例のでぶっちょのおばさんのオフィスに問い合わせてみることにした。情けないことに、質問の中身をあらかじめ英語でメモしておく。ホテルの主人に「ここに電話してみたいのだが」というと、彼は酒が入っていたせいか、歌をうたいながらという感じで妙に上機嫌、妙に親切げな態度で、快く彼自身でダイヤルしてくれた。夜であったから、結局オフィスにはつながらなかったが、このオヤジの陽気さを見ているとこちらまで随分楽しい気分にさせてもらった。

深夜(日本ではすでに土曜午後)、Jリーグの天王山、磐田−柏戦放映を見ていて夜更かししてしまった。


※Jリーグテレビ観戦に関して、6日目の行動として一時、記述していたのは誤りでした。6日目の項から削除し、訂正いたします。

 

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