「も…もう一度教えてくれ 鳳…愛とは…愛とは何だ?」
「無償のやさしさではないか…」
とりあえずビートエックスの名場面を引用ー。ビートエックスで扱った愛はかなり広い人類愛みたいなものでしたが、この対談集で扱ってる愛はもう少し小さな男女の愛、恋愛ですな。
別に僕が愛について困ってるとか悩んでるとかいうことはないんだけど、とりあえず三田誠広は本全部読もうと決めてかかってる作家なので読破。つーか刊行昭和53年って古いな。僕生まれてないし。
対談相手は尾崎亜美、五輪真弓、落合恵子、高橋靖子、中島梓、三田夫人の6人。わ、分らない……尾崎亜美と五輪真弓くらいしか。それぞれの人との恋愛談義なんですけど、まあ恋愛観なんて一番人それぞれでイイ部分だと思うんでホント様々。そんな中でやっぱし興味あるのは三田誠広の言動でしょうか。イデアの愛を信じてるみたいな発言をしています。高校の倫理の授業くらいで出てくると思いますけど、イデアっつーのはプラトンという大昔の哲学者が言っていた観念的な理想世界のことですな。そんな、現実には無いような愛。コレは分る気がする。刊行当時はまだ『いちご同盟』は書いてないと思うんだけど、アレに出てくる良一と直美の愛なんかはそんな感じがする。恋愛にも至ってないような愛なんだけど、アレには幼くともどこか観念的な愛が描かれていたように思う。三田誠広は埴谷雄高が大好きなんで、その方向の愛の形を押し進めていくと『死霊』の三輪与志と津田安寿子の抽象恋愛になるんじゃないかとちょっと思った。現実はともかく、文学で描く愛としては、そういうの、イイんじゃないかと思う。ブッチャけた言葉で言えばスーパーピュアな愛。そういうのもイイ。そのあたり、三田誠広、奥さんとの恋愛は本当かどうかかなりピュアに語ってます。これは『高校時代』という三田誠広の私小説を読むと良く分るんですが、普通のようでどこか物語的な恋愛譚があった模様です。
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