佐野自然塾

縁遠い行動経済学

20110104日付

 

人間の思考の不合理さを体験してみる

 行動経済学の観点からすると、私がなぜ金儲けできないかハッキリと分かった。この歳で今さら分かったのは間抜けたはなしだが、現実だから仕方がない。それはこの問い2によって明らかとなった。私は弟分には9万円渡し、兄貴分は11万円取ればよいと考えた。親分が2人に分けるようにと渡した20万円の報酬。その際に付けてくれた条件を全く捨象してしまった。それで大儲けする機会をむざむざ失ったわけだ。なんたる阿呆ものであろう。
 私が考えたのは単純だ。兄弟分の関係だから半々はおかしい。少しだけ差額を出して分け合うのが妥当だろう。どちらにせよ欲目で動いたことだから、余り差を付けると後々揉める可能性がある。そう、「仁義なき戦い」にならぬよう処理するのが望ましい。そんな風に判断した。これでは儲け話も我が身から素通りだ。
 ただ以前に見たテレビで、ある食品メーカーの社長が出てきて興味深い意見を述べていた。氏の会社は常に開発に熱心に取り組み、幾つものヒットを出していた。しかしそれだからといって生産向上は控え、上がった事業成績は常傭社員の待遇などの方に還元していた。何故かの問いに対し、人の腹は1つですからと応えていた。 言わんとすることは、人の食べることには限りがある。自社製品を売りまくれば市場占有率を高め、結果として他社を押し退けてしまう。それよりは良いものを出せば一定のシェアは獲得できるので、後は社員が喜べる会社にしておきたい。そういう内容のことを語っていた。
 これにはいたく胸を打たれた。たしかに人の腹は1つだ。もし食品業界が右肩上がりに成長しようとすれば、ビールにしてもそうだが国内市場は飽和する。後は海外進出しかない。サントリーとサッポロはそのための合併を目論んだが、ダメだった。日本経済全体からすれば、これこそが国際化の流れだから、是非とも乗りきろう。でなければ停滞だ。こう刷り込みされた私にとって、この社長の経営論はショックだったのだ。