カンナ: | ? んだあ〜?この質問は? 意味がよく分からねえぞ。 |
紅蘭: | 栃木ゆうたら、大神はんの故郷やな。それがどうかしたんかいな。 |
さくら: | 大神さんの故郷だっていうだけで十分です! |
紅蘭: | ……何がどう「十分」なんかよう分からんけど、とりあえず情報を詳しく見てみよか。 …おおっ、こりゃすごいで! |
カンナ: | なんだなんだ? なにがすげえんだ、紅蘭? |
紅蘭: | ウチらが戦った黒鬼会の親玉、京極な、あいつもなんと栃木出身やて! |
カンナ: | なにぃー? |
さくら: | 京極が? |
紅蘭: | せや。なんや「京極」なんていうからてっきり京都の人間やと思てたんやけど、そういや京なまりなんてなかったなあ。 |
さくら: | 「京極」ってやっぱり京都の名前なの? |
紅蘭: | ウチもようは知らんねんけどな、一番有名なんは藤原定家に連なる歌人の家系らしいで。 |
カンナ: | へえーっ。 |
紅蘭: | まあ、それはええわ。しかしあの京極が大神はんと同じ栃木出身やったとは……ホンマ栃木に何があんねやろ? |
カンナ: | あれ? ってことは何か? 最終決戦は栃木県人どうしのローカル決戦だったってことか? |
紅蘭: | …………。 |
さくら: | カンナさん、そんな言い方はやめてください! 栃木のどこがいけないっていうんです! 大神さんの故郷ですよ!? |
カンナ: | (しまった)い、いや、あたいは沖縄の人間だからよ、栃木ってよくわからねえんだ。一体どんなとこなんだ? |
さくら: | ……それは…… |
紅蘭: | ウチもよう知らんなあ。さくらはん、知ってはる? |
さくら: | …えーと、えーと、栃木は…… |
カンナ: | うん、栃木は? |
さくら: | 大神さんの故郷ですっ! |
紅蘭: | そらもうええから。 |
さくら: | えーと、えーと……(さくら脳フル回転中) |
紅蘭: | (なあ、カンナはん、ウチら悪いこと聞いてもうたんとちゃうか?) |
カンナ: | (みてーだな) |
さくら: | 栃木は…… |
紅蘭: | いや、さくらはん、無理に…… |
さくら: | …そうっ、日光があります! |
カンナ: | おおっ、日光か!そりゃすごい!(日光ってどんなとこだっけ?) |
紅蘭: | せやせや、日光や!なんや、立派なもん持っとるやないか!(よう知らんけど) |
さくら: | そう、日光ですっ!日光と……日光と……えーと… |
カンナ: | (ああっ、墓穴の底でさらに墓穴掘りはじめたぞ、紅蘭!) |
紅蘭: | (ホンマや!これ以上やったら栃木の方が気ィ悪くするわ!どないしよ?) |
かえで: | そう、日光よ。 |
紅蘭: | あっ、かえではん!(助かった!地獄に仏とはこのことや!) |
かえで: | あなたたち、日光という土地の持つ意味をよく分かっていないようね。 |
カンナ: | へえ、そんなに重要なとこなのかい? |
かえで: | もちろんよ。日光に祭られているのは東照大権現、徳川家康公よ。江戸、つまり今の帝都を綿密な風水術に基づいて設計し、降魔の封印を強めた当人だわ。そして今なお強力な霊となって北から帝都を守っているのよ。 |
カンナ: | へーっ、そうなのか! |
かえで: | そして日光山を整備したのはあなたたちが前大戦で戦った天海僧正よ。 |
紅蘭: | なんやて? |
かえで: | 天海はさくらのお父様とおなじように、葵叉丹によって反魂の術を受け、操られていたのよ。おそらく叉丹は日光山を整備した天海の知識を利用して、家康公による日光山からの守護の力を弱めようとしていたのでしょうね。 |
カンナ: | そういうことか。 |
かえで: | つまり日光は帝都の守護にとってきわめて重要な北の結界子・霊的スポットなの。そこに大神君のような非常に珍しい「触媒能力」をもつ存在が誕生したり、京極のような高位の陰陽師の家系が移り住んでいたりすることは、別におかしいことでもなんでもないわ。 |
紅蘭: | ふーむ、栃木おそるべし、やな。 |
カンナ: | ほんとだな。隊長の故郷ってすごいとこだったんだな。 |
紅蘭: | そや!これからみんなで大神はんの部屋に、栃木の話、聞かせてもらいにいきまひょ! |
かえで: | ふふ、それはいいわね。じゃ私はお茶菓子でも持ってくるわ。 |
紅蘭: | ほな、ウチは中国の茶でもいれてきます。 |
カンナ: | あたいはなんか腹にたまるものでも…… |
紅蘭: | いやあ、なんや楽しみやなあ……(一同去る) |
|
|
さくら: | …栃木……栃木……そう!宇都宮はギョウザがおいしいです!……それから…栃木……日光……ギョウザ……うーん… |
| (ひゅうぅう〜) |
紅蘭: | もしかして、ウチとさくらはんが芸者のナリして深川の料亭に乗り込んだあのときかいな。あっちゃー、大神はん、あんときはほんまいろいろ迷惑かけてしもおて…
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大神: | いやいや、君たちの心情も痛いほどよくわかるしね。俺だって、華撃団の隊長という立場さえなければ同じことをしていたかもしれない。何はともあれ一件落着でよかったよ。
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さくら: | ほんとに、すみませんでした…くすん。
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大神: | だから気にしなくっていいってば、さくらくん! さて、ご質問の内容だけど… こりゃ痛いところを突かれたなあ。
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紅蘭: | 海軍大臣はんって、あの… ええと、山口はんとかいう御仁とちゃうんかいな。
|
大神: | そうなんだ。んで、俺はあの晩、あの料亭で山口閣下とともに杯を交わしたんだ。なのにおれ、あの件が一件落着して、制服姿の閣下にお会いするまで… あのおじさんがまさか海軍大臣だなんて、ぜんぜん気づかなかったんだよなあ。
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さくら: | くすくすっ。大神さん、海軍の少尉さんなのにとんだ失敗でしたねっ。仕方ないですよ、夜の料亭って暗くってあまり人の顔ってよく見えませんし…
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大神: | それに、俺のような末端の一将校にとって、閣下は雲の上のようなお人だからね… なんてったって海軍は巨大な組織だからな。
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紅蘭: | ほんまほんま、でっかい会社とかやったらそんなもんやて。どこぞの大学院生みたいに、就職活動しときながら内定もらうまで社長の名前も知らんかった人間もおるんやしー。
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筆者: | うげ。
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大神: | それに対して、京極陸軍大臣とばったり出くわしたときは、すぐにわかったんだけどなあ…
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さくら: | 大神さんが身を挺してシロ(←入れ替え可)を助けたときですよね。あのときの大神さん、とってもかっこよかったです…(はぁと)
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大神: | まったく、陸軍大臣がすぐわかって海軍大臣の顔がわからなかったなんて知れたら軍法会議もんだよな。あはは…
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さくら: | あぐ。
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紅蘭: | 何やいなさくらはん、いきなり入れ歯はずれたみたいな声だして。
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さくら: | あ、あたし… 報告書に書いちゃいました… 京極と大神さんの対決の顛末、ぜんぶ…
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大神: | ち、ちょっとまってくれさくらくん! 上層部に持っていく帝撃の報告書かっ? ぜんぶって、ことの成り行きぜんぶ書いちゃったのっ?
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さくら: | はい、ぜんぶ… だって、だって、大神さんかっこよかったんだもん、これ報告したら大神さんの株あがると思ったんだもん… うぇーんっ!!
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大神: | だーっ! わ、わるかった、落ち着いてくれさくらくん、しかし、しかし… どうしよう…
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さくら: | どういうこと、紅蘭?
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紅蘭: | えーとやな。OVA第一巻で、幼少のすみれはんが霊子甲冑の研究者に、三体の試作機を紫・黄・白の三色すなわち”三色スミレ”に着色するよう命令する場面があったよな。
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大神: | ちょっと待ってくれ、いまテープの頭出しするから…(きゅるるる)
|
紅蘭: | …作者はん、自分でサクラファン言うくらいやったらちゃんとLD買わんかいな。レンタルビデオのダビング、うわー貧乏くさー。
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大神: | 仕方ないだろ、プレーヤーもないんだから。…えーっと、あったぞ、ここだ。
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さくら: | ええと、それで、『三色スミレに色を付けるときに最初は右から壱、弐、参なのに…』
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紅蘭: | 『色を塗っているときは左から壱、弐、参となっている。しかし塗り終えると、右から壱、弐、参にもどっている』
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さくら: | 『しかし、色は右から紫、黄色、白のままである』 …だ、そうです。
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紅蘭: | うわ、ほんまや。いつの間にか番号だけ入れ替わっとる。うわははは、こりゃNGや、NGやぁ!
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大神: | よし、これは当のすみれくんにも見てもらうしかないな。おーい、すみれくーんっ!!
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すみれ: | ぐげ。
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紅蘭: | すみれはーん、そんなとこ隠れとらんではよこっちこんかいなーっ。
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すみれ: | ち、ちょっとお待ちになって、さ、作戦タイムですわっ。(キネマトロン取り出す) お、おじいさま、おじいさまっ!
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| ごにょごにょごにょ…
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さくら: | すみれさんたち、なにごにょごにょ相談してるんでしょうか…
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紅蘭: | さあな。おおかた神崎重工のお人と、うまいいいわけの考えでもしてるんちゃいますの。
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すみれ: | ………そう、それがいいですわ! それで参りましょう!
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| ピシュン…(キネマトロン切れる)
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すみれ: | 失礼。長らくお待たせいたしました。この神崎すみれが皆さんのどーんなご質問にもお答えしましてよ、おーっほっほっほ!
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紅蘭: | うわー、うさんくさー。
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大神: | まあまあ。で、すみれくん、この現象はどうやって説明できるのかな。
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すみれ: | 皆さんはおそらく単純なNGだとお思いでしょうけど、それはあさはかというもの。世界に冠たる神崎重工が、そのようないい加減な仕事をするわけがございませんわ。
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さくら: | じゃあ、どうして途中で番号だけ入れ替わってるんですか?
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すみれ: | 当然ですわ。皆さんは霊子甲冑のボディの塗色が、ただの一度で済むとお思い?
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紅蘭: | うわ、多層塗膜で逃げるつもりかいな。
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すみれ: | そのとおーりっ。皆さんがお乗りになる自動車も、何層にも色の違う塗料を塗り重ねて塗装しておりますわ。だから塗料片ひとかけらを元に車種が特定できたりするのですわ。
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大神: | つまり、三色スミレの塗装途中で番号が入れ替わってたのは、機体を左右置き換えた上で、それぞれ色の違う下塗りをしていた、と言いたいわけか。
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すみれ: | さっすが少尉ですわっ。多層塗膜はこの業界の基本、あまりに当たり前のこと、あれをNGと思うのはまさに素人の浅知恵というものですわ。おーっほっほっほ!
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紅蘭: | …ちょいとまち。ほんなら真ん中の二号機は、同じ黄色ばっかり塗ってたんか。
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すみれ: | …うぐ。
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紅蘭: | 技術者が塗装を面倒くさがってたということは、つまり塗装なしで甲冑としては完成品やったはずや。すみれはんのわがままでしゃあなしに色塗ってるだけやのに、なんでわざわざ多層塗膜にせなあかんの。
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すみれ: | …うぐぐぐぐ。
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大神: | おお、さすがは紅蘭、メカニックとしてのするどいつっこみ。
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紅蘭: | さあさあさあ! どうやねんすみれはんっ!!
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すみれ: | う、うう、神崎重工に落ち度はないのですわ。ぜーんぶ間抜けな作画監督のせいなのですわ。なのに我が社の名誉のためとはいえ、どうしてわたくしがこのようにいじめられなければなりませんの… うえーん少尉ぃぃぃっ!!
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大神: | うわ、むぎゅうぅぅぅ苦しいすみれくぅんんっ
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さくら: | あーーーっ! すみれさん、どさくさにまぎれて大神さんに抱きつくのなしですーっ!!
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すみれ: | うるさいですわね、こうなりゃ転んでもただでは起きませんわよ、うええええん少尉ぃぃわたくしもう耐えられませんのーっ!!
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さくら: | あーーだめですーーっあたしもーーーっ!!
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大神: | むぎゅぅふたりともはなれてくれぇもごもごもごぉぉ
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紅蘭: | はあ… いっしょにやりたいのはやまやまやけど、ウチってそんなキャラとちゃうしなぁ… ほんなら皆はん、またなー。はあ…
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