《遊戯室》
♪♪♪♪♪♪♪♪♪〜
米田: | なんでえ、誰か先客がいるのかぁ。 |
大神: | あ、米田支配人。どうされたんですか? |
米田: | いや、なに。新しい浪曲のレコードを買ったんでな、ちょっと聞こうと思って来たんだ。 おめぇ、そろそろ夜の見回りの時間だろうに。何をやってんだ? |
大神: | 実はこのところの流行歌のレコードを聴いていたんですが、それらを聞いているうちに昔の数々の戦闘を振り返っていたんです。そうしているうちにいくつかの謎に気づきました。 |
米田: | 謎ぉ? いってぇどんな謎だ。 |
大神: | そのことについてなんですが、後日、花組団員と加山を交えて作戦司令室にて討論をしたいのですが。 |
米田: | いいじゃねぇか。よし、さっそく明日の朝に行おう。 |
大神: | ありがとうございます。 |
《翌朝、作戦司令室》
マリア: | 隊長、今日の議題は何でしょうか? |
大神: | うん。昨夜、最近街ではやっている歌謡曲を聴いていたんだが、その時いろいろ謎に気付いたのでみんなと討論したい。 |
さくら: | 最近の流行歌って、どんな曲ですか? |
大神: | まずはこの曲を聴いてくれ。 |
♪…太正維新の そのために 起こった決意の 一一・九… |
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大神: | これは『一一・九事件 太正維新行進曲 陸軍の歌』だ。 この日、俺達のこの帝劇も襲われ、俺とさくらくんは一度花やしき支部に逃れ、そして天武で戻ってきた。その後、ここに立て籠もった君たちと再会したとき、京極と鬼王が現れた。そこで一つの疑問が生まれた。 その疑問とは、何故あれだけの力を持っていた彼らがほとんど無防備の我々を攻撃せずに挨拶だけで去ってしまったのかだ。それに、さくらくんを捕らえるか殺そうとしていたのに何もせずに帰ってしまった。 |
すみれ: | そう言われてみれば解せない話ですわね。 |
大神: | さらに付け加えるなら、マリアに関しても謎だ。 |
マリア: | 私のどこが謎なんでしょうか? |
大神: | さくらくんが京極を斬ろうとしたとき鬼王が邪魔をした。ここまではいいだろう。鬼王はさくらくんよりも剣の腕は上だった。さくらくんが京極を斬るのは無理だったろう。しかし、その時飛び道具を持っていたマリアが何故彼らを撃たなかったかということ。 |
カンナ: | なるほど、確かに謎だな。 |
マリア: | あのときはすでに弾丸は撃ち尽くして一発も残っていませんでした。撃とうと思ったんですが、無理でした。 |
大神: | なるほど、弾の携行数に限りがあったか。あの夜の維新軍は不意打ちだったからな。 |
マリア: | ええ。帝劇の中でまで大量の弾薬を所持していては、火気厳禁でボルシチが作れませんから。 |
大神: | そういう問題ではないと思うが…。さて、それでは京極達の方はどうだろう。 |
カンナ: | 魔神器の片割れを手に入れたんで、余裕ブッこいていたんじゃねえのか? |
レニ: | 京極は「次の行動に移る」と言っていたね。 |
さくら: | あたしもカンナさんやレニの意見で正解だと思います。でも魔神器が無効だったとしても、破邪の血を持つあたしを殺さないでおかなかった理由としては弱いような気がします。 |
紅蘭: | もしかすると、あいつらも気が付いてへんかったんとちゃうの? かなりおマヌケな奴ら。 |
米田: | まあ、こりゃ京極本人に聞かなきゃ真相は不明のままだな。なんだったら反魂の術で…。 |
さくら: | お願いですからそれだけはやめてください。お父様ならともかく、超太い首のあの男を蘇らせるなんて。 |
大神: | それでは次の議題に移ろうと思う。 |
♪…空襲なんて恐るべき 護る帝都の鉄の陣 老いも若きも今ぞ起つ 栄えある帝都防衛の 誉れを我ら担いたり… |
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大神: | これは『空襲なんて恐るべき』です。 ここで気づいた謎だけど、ミカサ発進前に降魔兵器に襲われた。その時に我々の代わりに戦ってくれたのが月組だ。 |
加山: | そういえばそうだったなぁ。 |
大神: | その月組だが、加山、お前は戦っているときは甲冑を着ているわけじゃなく、生身だったよな。 |
加山: | その通りだ。 |
大神: | 月組の隊員はどのような人物がいるのか知らないが、もしかして、我々花組より強いのではないだろうか? |
レニ: | 花組に来て欲しい。戦力が増強する。 |
マリア: | 月組の訓練方法が知りたいですね。花組の訓練の参考になるかもしれません。 |
米田: | おいおい、そんなことをすると素性がばれちまう。隠密部隊にならねえだろうが。 |
すみれ: | 少尉。このわたくしが花組にいるのですよ。月組よりも強いに決まっていますわ。 |
織姫: | そのとおりでーす。少尉さーん。エリート部隊出身の私がいまーす。月組なんて必要ないでーす。 |
加山: | 大神。月組は隠密部隊だ。隠密故に謎もある。だがお前にだけは特別に教えよう。俺達月組は『ムーンプリズムパワーッ、メーイクアップ!』と唱えることで、悪の侵略から地球を守る正義の戦士へと変身するのだ。 |
大神: | ・・・マジで議事録に書くぞ。 さて、それではこの議題はこれで終了し、次に移ります。 |
♪…空襲だ警報だ 恐い恐いもアワビのおばけだよ さほどでもない魔物達 もっと恐いが流言だ どっこいその手にかかるな乗るな… |
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大神: | これは山田工作作曲の『何だ警報』です。 |
アイリス: | やまだ、こうさくぅ? |
レニ: | 山田工作。日本を代表する作曲家。代表作は「糸蜻蛉」、「あの道」。 |
大神: | この曲では武蔵のことを「アワビのおばけ」という言葉で表現されている。我々は空中戦艦ミカサで武蔵に突入した。で、謎なんだけど、帝都上空に停滞していた武蔵に突入するのにとても時間がかかっているような気がするんだ。 |
かえで: | 大神くんの気のせいじゃないの? |
大神: | ミカサが発進してから武蔵に突入するまで機関室の戦闘(ザコ戦+土蜘蛛戦)、甲板での戦闘(ザコ戦+土蜘蛛戦)。これだけでも約1ヶ月分シナリオを消費しているんです。ミカサが発進したときの速度から見てもミカサはかなり高速で飛行しているはずです。それなのに帝都上空にいる武蔵にたどり着くまで時間がかかりすぎです。この時は戦闘ばかりなので、プレイヤーもかなりうんざりしているはずです。 |
紅蘭: | ミカサの性能的な問題ではないようやけど。どないしたんやろうか。 |
マリア: | 長官、このことに関して何か情報はないのでしょうか? |
米田: | うむ。その現象に関しては俺も承知している。その現象に関する詳しい原因や理論などの内容は国家機密だ。とりあえず逆相対性理論とだけ言っておこう。 |
大神: | これも機密ですか。 |
米田: | 以上で、今回の討論会を終了する。解散。あ、かえでくんは残ってくれ。 |
かえで: | 今回の討論会はあまり実りのないものでしたね。 |
米田: | それよりも武蔵へ突入するまでのあの時間の経過だが、討論会ではあのように言ったが、実はまだ何もわかっちゃいねえ。早急に調べといてくれないか? |
かえで: | それでは、先ほど大神くんに言った機密というのは…。 |
米田: | まっかな嘘だ! |
稽古後の楽屋にて…
マリア: | あら、レニどうしたの? 難しい顔をして。 |
レニ: | 昔の公演の記録を読んでいたんだけど…おかしな所があるんだ。 |
マリア: | おかしな所? |
レニ: | マリアとさくらの主演の「シンデレラ」。 |
すみれ: | というと、あのドラマCDの春公演「シンデレラ」ですわね。 |
さくら: | それで、おかしな所って何なの? レニ。 |
レニ: | 記録ではカンナが最初の場面で「木」の役をしている。そして意地悪な継母役のすみれに命令されて、シンデレラ役のさくらが木を切り倒している。 |
カンナ: | ああ、思い出したぜ。切られるとき「シンデレラ物語に庭の木なんて必要だったのだろうかぁ〜?」と大見得きったんだっけ。 |
レニ: | そこがおかしい。これを読んでみて。 |
カンナ: | なんだこりゃ? えあすて・あう… これ何て読むんだ? |
レニ: | "Erste Auflage. Kinder-und Hausmarchen. Gesammelt durch die Bruder Grimm"(注:ウムラウトは省略しました)「グリム兄弟によって収集された、子供と家庭の昔話」。通称、「グリム童話」の初版。1812年のクリスマスに発行。 |
アイリス: | ねえレニー、せつめいしてよー。 |
レニ: | それではこの物語を要約する。 |
物語名 〜Aschenputtel(灰かぶり)〜 |
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昔、1人のお金持ちの男がいました。男は妻との間に子どもが1人いました。しかし、母は病気が重くなり、死んでしまうことに。 「かわいい子よ、私はお前をおいて行かねばなりません。でも、天国の上で見守っていますよ。私のお墓の上に木を植えなさい。そして何か欲しいものがあったらその木を揺すりなさい。そうすれば手に入りますよ。それに困ったことがあったら、助けを送りますからね。」そう話すと母は目を閉じ、死んでしまいました。 |
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カンナ: | それじゃ、木はあったんだな。そうか。そうか。 |
レニ: | だけど、その後がまた間違ってる。 |
男は2年後に再婚しました。継母は意地悪で、娘が2人いました。そして子どもをいじめました。灰だらけのため、いつしかその子どもは「灰かぶり」と呼ばれました。 ある日、王子のお后選びの舞踏会が開かれることになりました。灰かぶりはたくさんの仕事を押しつけられて、舞踏会には行けませんでした。 すると、白い鳩が2羽現れ灰かぶりの仕事を手伝い、そして言いました。「舞踏会に行きたいのならお母さんのお墓の木の所へ行って、木を揺すって、素敵なドレスをお願いしてごらん」 灰かぶりは木を揺すると銀のドレスと銀の靴、さらに黒馬6頭立ての馬車が現れました。 |
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さくら: | 木を揺するとドレス… ひょっとしてあたし、木を切っちゃいけなかったの? |
レニ: | それに「魔法使いのおばあさん」や「ガラスの靴」、「ネズミの御者にカボチャの馬車」は登場しない。 |
アイリス: | え〜っ。じゃあ、魔法使いのおばあさんをしたアイリスって… |
レニ: | 「魔法使いのおばあさん」や「ガラスの靴」が登場したのはC・ペロー作の改訂版。「ガラスの靴」を有名にしたのは「ディズニー」の影響。ついでに最後まで解説する。 |
舞踏会に現れた灰かぶりに王子様は一目惚れをしました。 しかし、12時直前に灰かぶりは急いで城を出ました。後を追った王子は灰かぶりを見失いました。 |
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紅蘭: | このへんは変わらんみたいやね。 |
次の日。 | |
アイリス: | つぎの日? |
次の日も舞踏会が行われました。灰かぶりはこの日もたくさんの仕事を押しつけられて、舞踏会には行けませんでした。 すると、鳩が再び現れ灰かぶりの仕事を手伝いました。 灰かぶりが木を揺すると、昨日よりずっときらびやかな金のドレスと金の靴、白い羽根飾りを頭に着けた白馬6頭立ての馬車が現れました。 灰かぶりがお城につくと、王子は階段で待っていました。 王子はこの見知らぬ姫が誰なのか、どこから来て、どこから来たのか知りたかったので、家来達によく見張っているように命じました。さらに、速く走れないように階段にタールを塗らせました。 12時の鐘が鳴り、灰かぶりは急いで城を出ようとしました。ところがタールを塗っていたため、金の靴が片方脱げてしまいました。 |
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さくら: | あ、あたしみたいに、階段を転げ落ちて脱げたわけではないみたいですね。 |
レニ: | ヨーロッパでは靴は女性の性器を象徴しているという考え方がある。12世紀のフランスの寺院には片足が素足の女性の浮き彫りがある。これは性的に堕落した人を表している。よって王子の策略で片方の靴を脱いだシンデレラは、王子と不適切な関係を持ったと解釈する人もいる。 そして紅蘭が演じた姉たちに受難が訪れる。 |
紅蘭: | ウチら? |
王子は残された金の靴を履くことの出来る女性を捜しました。そして灰かぶりの姉たちにも靴を試す時が来ました。 継母は娘に言いました。「もし、靴が入らないときはこのナイフで足を切り落とすんだよ」 上の姉は爪先は入るが踵が入らなかった。姉は踵を切り落とし、無理矢理履いた。しかしばれてしまいました。 次に下の姉が履こうとした。継母は「もし小さすぎるようだったら、爪先を切った方がいいね」足が大きすぎたので、娘は歯を食いしばって爪先を大きく切り取り、急いで靴を履きました。しかし、やはりばれてしまいました。 |
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マリア: | これ、本当に童話? 子供向けの物語にしては残酷すぎるわね。 |
最後に灰かぶりが靴を履きました。靴はピッタリと合いました。そして灰かぶりは王子と結婚することになりました。 | |
アイリス: | わーいっ、メデタシメデタシ! |
レニ: | いや。実はまだ終わらない。 |
さくら: | え、あたしもこれで終わりと思ってたんだけど…違うの? |
レニ: | 第2版ではさらに残酷なエンディングが待っている。ペロー版では謝罪する姉たちを快く許し、身分の高い貴族と結婚させてあげている。でも、 |
結婚式には2人の姉も参列しました。灰かぶりのおこぼれをもらおうと、横に付いて行きました。しかしいつもの鳩が現れ、姉たちの両目を刳り抜きました。姉たちは身もだえて苦しみ、とうとう目が見えなくなってしまいました。 | |
カンナ: | おー、くわばらくわばら。ホント、恐い話だな。 |
マリア: | これではとても芝居には使えないわね。 |
カンナ: | へっへっへ、すみれ〜。あんまり意地わるいと目ぇ刳り抜かれるぞ。 |
すみれ: | あ〜ら。わたくしは意地は良くってよ。あのイタリア語の話せないイタリア人よりはね。 |
織姫: | ハックション!!! 失礼デース、イタリア語話せマース。たとえばCinderella(シンデレラ)をイタリア語名にするとー、"Cenerentola"(チェネレントラ)になりマース。 |
一同: | おおーっ! (・O・)(・O・)(・O・) |
織姫: | ・・・だっからなんでみんな驚くデスかーっ! |