暗黒騎士団と非干渉条約を結んだロンウェー公爵は、ガルガスタン陣営との全面戦争に向けて動き始める。
 デニムには、バルマムッサ収容所の住人を武装蜂起させる命令が下った。バルマムッサに赴く前に、デニムには会いたい人物がいた。ゼノビアの聖騎士ランスロットである。

聖騎士ランスロット
「どうしたんだい、うかない顔をして? バルマムッサでの武装蜂起の件かい?」

デニム
「とても危険な任務だって、レオナールさんが言ってました・・・」

聖騎士ランスロット
「きみらしくもないな。おじけづいたのかい?」

デニム
「そういうわけじゃないけど・・・・・・」

聖騎士ランスロット
「いいんだよ、誰だってそうだから」

デニム
「ランスロットさんも、怖いと思うことがあるんですか?」

聖騎士ランスロット
「そりゃ、もちろんだよ。戦いのたびに震えがくるぐらいだ。だけどね、死ぬわけにはいかない、そう思えば、怖さなんてなんとかなるもんさ」

デニム
「死ぬわけにはいかないか・・・。僕は革命のためなら死んでもいいと思っている・・・。へんですね。そう思っているのにふと気づくと、死の恐怖におびえてる自分がいるなんて・・・

聖騎士ランスロット
「命を賭けるということと死ぬということは全然違うことだ。きみが本当に民のことを考えるのなら死んではならない。自分の戦いの行く末を見届けなければ。・・・それに、きみには姉さんがいるじゃないか。そのためにも生きなければ」

デニム
「ランスロットさんはどうなんですか? 誰かのために死んではいけない・・・?」(つづく

主人公なのだが

 正直言うと、第一章のデニムのセリフで特に記憶に残っているものがない。理由は簡単で、カチュアやヴァイスが、デニムの意見を代弁しているから。イベントシーンでは、ほとんどこの二人がしゃべっている。第一章のデニムは、さほど目立たない。言い換えれば、歴史に全く関与できない存在なのだ。
 そんなわけで、これが、唯一印象に残っているセリフである。デニムのためにも、早く第二章以降の語録を作りたいと思う気持ちは十分にあるのだが、はたしていつになることやら。

死について、ちょっと考えてみる

 デニムの言う、戦いによって死ぬかも知れない恐怖、というのを体験したことがない。「殺されても文句の言えない場所」に行ったことがない。だから、死ぬかもしれない、という覚悟をしたことがない。もちろん、人が生物である以上いつか死ぬことは覚悟しているが、この場合は覚悟と言うより認識と言った方が正しいだろう。

 多分、誰もが自分の命より大切なモノがある。思想(システィーナ)だったり、愛する人だったり、故郷だったり、デニムのように革命だったり。それらのためなら、命をもかけるだろう。それでも、いざとなったら怖い。当然のことだ。デニムのセリフは、正直な気持ちだろう。
 あるマンガで、戦場で怖いなんて感じるのは命を張ってないからだ、というようなセリフがあったのだが、白々しく感じた。そんな人間ホントにいるの? 何度も死線をくぐりぬけ、死ぬことをいとわない人は、恐怖をも乗り越えられるのだろうか。
 それとも、ランスロットの言うように、死ぬわけにはいかないと思えばこそ、恐怖を乗り越えられるのだろうか。
 この答えが出せるのは、いつになることやら。

 死について考えているつもりだが、はたしてどこまで本気か自分でもわからない。
「少なくとも当分は死なないだろう」
 という気持ちがある。死を覚悟する暇もないまま死ぬ事態(事故、暗殺、突然死)は起こらないだろう、とどこかで思っている。そんな私が、死について人に役立つ文章を書けるのは、いつになることやら。できれば、その「いつ」まで生きていたいものである。