6年生通信ー8,9月
1.2学期開始
2.教育実習生,夏休み体験発表会
3.算数「比」,国語・音読
4.実習生授業の批評
5.「川とノリオ」終了
8月18日(金) 第43号
2学期が始まります
■2学期が始まります。楽しみです。子供たちは,どんな夏休みの話を聞かせてくれることでしょうか。また,生活表を見るのも楽しみです。一人一人のドラマが,1枚の生活表に凝縮していて,いつも子どもたちが帰ったあとの教室でゆっくり見るのは,私の至福のひとときです。さてここで,いくつか私の夏休みを報告します。
■盲導犬候補生だったフレンドですが,適性試験に不合格!我が家に帰ってきました。性格や歩き方等はよいのですが,ちょっと神経過敏なところがあるためでした。子供たちからも,「盲導犬になれるといいね。」と応援してもらっていたのですが,仕方ありません。今後は,セラピードッグを目指して,新たな訓練をしていくことになりました。ちなみに,今回の適性試験では全体の半分以下の合格率で,盲導犬になるのも「狭き門」なのだなあと感じました。
■修学旅行でお世話になったログハウスに,お礼を兼ねてプライベートで1泊してきました。皆さん,私の顔を見るとすぐに「ああ,北野平小学校の…」と思い出してくださり,感激しました。我が家の子供たちは,下見に続いて2回目の宿泊でしたが,「いいなあ,修学旅行でこんなところに来られて。」と言っていました。
■まったく仕事のことで恐縮ですが,この夏,私はインターネットを活用しての教育実践の研究会を立ち上げました。全国規模です。その立ち上げにかかわって,多くの人と会い,毎日10通以上のメールやファックスを送り,出版関係の打ち合わせも含めて動きました。久しぶりに,指が腱鞘炎になりかかりました。パソコンの前に座り続けたもので,背中や腰がこわばり,毎晩家人に腰をマッサージしてもらうという状態でした。一見,学級の子供たちとは何も関係ないようですが,この取り組みの中で私は様々なことを学びました。直接授業のヒントを得たこともありますが,それ以上に教育観,そして学校や社会のシステムについて考えさせられたことが多く,それはきっと子どもたちとの接し方や,授業づくりに生きていくのではないかと思っています。
■その合間に,区民センターで太極拳の講座を担当したり,趣味の読書を楽しんだりもしました。充実した休みでした。
さあ,今日からは2学期。まずは,明日の夏休み生活発表会に向けて,今日から動きます。子供たちの生活リズムの回復に,ご協力をお願いします。
8月21日(月) 第44号
教育実習生・渡邉さん登場!
今日から,6の1に教育実習生が入ります。今日1時間目は,さっそくミニ歓迎会を行いました。
みんなで拍手で渡邉先生を迎えたあと,各グループごとに自己紹介と歓迎の出し物をしました。
1グループ | 人形劇「渡邉先生がやって来た」 |
2グループ | イントロクイズ(学校の掃除の時間や朝の放送にかかる曲を,どの場面でかかるか渡邉先生に当ててもらう) |
3グループ | 学校クイズ(図工室と図書室の椅子の数は?等) |
4グループ | 自己紹介,呼びかけのあと,みんなで声をそろえて「よろしくお願いします!」 |
5グループ | ○×クイズ(学校全体では男子と女子どちらが多い? 他にもたくさん。) |
6グループ | 学校紹介の紙芝居(いろいろな部屋) |
どの出し物にも,子供たちの精一杯の歓迎の気持がこもっていて,楽しいひとときでした。その後,みんなで「ビリーブ」を合唱。司会の苅屋さん,木下さんの心のこもった歓迎の言葉で締めくくりました。
夏休みの体験発表会
土曜日,2組と合同で夏休みの体験発表会が開かれました。一人30秒から1分の間に,自分の体験の中から,一番印象に残ったことをスピーチしようという活動です。
金曜日,始業式のあとに作文用紙半分(200字…普通に読んで30秒)を目安に原稿を書き,それを見ないで言えるように練習させました。こうした準備と練習にも,だいぶ慣れた子供たちは,本当に全員が(3名欠席は残念でしたが)見事に堂々としたスピーチを聴かせてくれました。
その中には,自然な笑いがあり,また聴く方にも集中があり,あっという間の45分でした。中でも感動させられたのは,「特にどこかに出かけたということはないのですが,友達と会えたことが,私にとってはとても心に残りました」「自由研究は,出来映えはまあまあだけれど,僕としては今までで一番がんばれたと思います」などのように,自分の心を見つめ,それを素直にスピーチにしてくれた子がたくさんいたことです。
6年生も後半。いよいよ思春期に入ってきます。人の目を気にしすぎて,いじけたりすることなく,自分探しをしながら素直に伸びていってほしいと願っている私にとって,これらのスピーチには,とても感動させられました。
8月22日(火) 第45号
算数「比」
■算数は「比」の学習からスタートです。
今日は,「ミルクとコーヒーを混ぜて,ミルクコーヒーを作る」という状況が問題場面です。4つの混ぜ方が提示され,その違いから,割合の概念をつかんでいくという学習でした。
ともこは,ミルク2杯,コーヒー3杯。 かずおは,ミルク2箱,コーヒー3箱。 なおみは,ミルク4杯,コーヒー6杯。 ひろしは,ミルク3杯,コーヒー4杯。 |
まず,この状況を教科書の絵で確認した後,「この中で濃さの違うのは,誰だろう」と,考えていきました。
すると,意見は3つに分かれました。どんな分かれ方をしたと思いますか?
■子供たちの考えは,次のようでした。
◎「かずお」…パックだから濃さが違う(1人)
◎「なおみ」…他の3人は,「コーヒーからミルク
を引くと1。でもなおみは引くと2。」(22人)
◎「ひろし」…他の3人は,みんな2と3。なおみのも,2で割ると2と3。(8人)
お互いに,自分の考えの根拠を出し合って,まず一人が「ひろし」派に移りました。しかし,他の子はどこをどう考えればいいのか,分からない様子です。
■そこで,ここでの学習の割合という考え方に着目させるために,次のように考えさせました。単純化・極端化の手法です。
「差が1」だと皆同じ濃さになるなら,「2と3」も「1と2」,「9と10」,「99と100」も同じ濃さになるのだろうか。
「割った値が同じ」だと同じ濃さになるなら,「2と3」も「4と6」「20と30」も同じ濃さになるのだろうか。
しかし,ここで子供たちの思考が,ぐんと落ちてしまいました。それは,「ミルクとコーヒー」あるいは何かと何かを混ぜると,濃さが違うという体験そのものが希薄で,そのために予測することができていないようなのです。
そこで,この次の時間に実際に混ぜて様子を見てみようか,と投げかけますと,思いがけない反応が返ってきました。それは,「めんどくさい。」
■子供は,答え(結果)が大切という価値観を持ってしまいがちです。答え(結果)に至るまでの追求段階にこそ学問のおもしろさがあるのですが,それが分からないと「めんどくさい」が先に立ちます。ミルクとコーヒーを混ぜると言えば,「おもしろそう!」というのが自然な反応ではないかと思っていましたので,上のような反応はちょっと意外でしたし,また「追求のためには,準備等に手間ひまを惜しまない」という心を育てなくては,と強く感じました。
国語・音読
■国語の授業開きは,音読から入りました。「川とノリオ」の「また早春」の場面です。
久しぶりに音読をしましたら,やはりウソ読みがかなり復活していました。また,漢字のところで止まってしまう子も目立ちました。(長い休みの間,文章を読むことから遠ざかっていた子が多かったようです。)
■今日のウソ読みの例をいくつか挙げてみます。(左が正しい)
@「呼んでいる」→「呼んでる」
A「川下さして」→「川下をさして」
B「かっぷりことうかんだまま」→「かっぷり,こと,うかんだまま」
C「取り巻いた」→「取り囲んだ」
D「立ちすくむ」→「立ちくすむ」
■上の間違いには,それぞれ原因があります。
@は,日常子供たちが使っている話し言葉と,この物語で使われている書き言葉の文体を使い分けられないところに間違いが生じています。
Aは,逆に作者が意図的に使った助詞省略の文体に注意が行き届きません。
Bは,語の組み合わせを理解できていないため。
Cは,似たニュアンスであれば,言葉の選択は大体でよいという言語生活に狎れているのが原因でしょう。
Dは,語彙の不足が原因でしょう。
■しかし,その間違いを他の聞いている子が瞬時に指摘できるようになってきていますので,今後音読の力もだんだんついていくことでしょう。読解力の基礎であり,大部分でもあるのは,正しい音読の力です。夏休み,中学校の教師と話し合う機会がありましたが,「小学校では,音読をがっちりやってほしい。」と力説していました。英語の教師は,「声を出して読むということそのものに抵抗があると,英語は絶対にできるようにならない。」と言っていました。そんなことを思い出しました。
8月25日(金) 第46号
渡邉先生,はじめての授業
■渡邉先生がはじめて授業に挑戦しました。算数「比」です。
昨夜,遅くまでかかって指導案を作っていました。本番は,ちょっと緊張はしていたと思いますが,なかなか堂々とした指導ぶりでした。本号では,この授業の様子をお伝えし,私の分析を加えます。おうちの方に,授業ってどんなふうに考えて組み立てているのかを知っていただくよい機会だと思いますし,渡邉先生の資料にもなると思いますので。
■今日は,「比の値」の概念と求め方を扱いました。
まず,前の時間の復習から入ります。算数は,積み上げの教科ですから,前までの時間に学習した内容を振り返り,そこを足場にして積み上げていくというのが,私の算数授業のスタイルです。渡邉先生もそれにならって,授業を組み立てました。
最初に,コップを2個と3個,色を変えて板書し,「これを比で表しましょう。」と発問しました。これには,子供たちほぼ100%挙手。「2:3」と答えることができました。
この復習の場面で,ほとんどの子が正解を出せるということを私はとても重視しています。もし,ここで正解できなかった子がいたら,すかさず第2問も同じレベルの問題を出します。例えば「1:3」のような。とにかく,全員ができるというところから授業を始まることが大切なのです。渡邉先生は,ここをきちんとクリアできました。
■次に,コップ4個と6個の絵を描き,「まず,これを素直に比で表しましょう。」と指示しました。これも,小さなことですが大切です。「4:6」と答える子もいれば,「2:3」と答える子もいては,やっと分かりかけた子が混乱します。
ここも,「4:6」と確認してから,「もっとシンプルな形にしましょう。」と,次の指示を出しました。ここには,指示の出し方の原則が生きています。それは,「一時には一事の指示」という原則です。ここをただ「比で表しましょう。」とやると子供たちの活動は拡散して,混乱しやすいのです。だからといって「比で表します。最初は素直にやって,それからシンプルな形に直してね。」などと言うと,とたんに子どもたちの達成率は落ちてきます。
(家庭生活でも「あれをして,次にこれして,あ,そうそうこれも忘れないでね。」などと言いがちではないでしょうか。参考になりませんか?)
的確な指示により,子供たちはここもうまく考えていました。しかし,ここで「できた人?」と挙手を求めたところ,今度は少し挙手する子が減っていました。そうなら,ここでは,もう1題,同じレベルの問題を出して確認すべきところです。
「できるまでやる」これも,授業の大原則です。(しかし,できない,分からないことを無理に何度も強いるのではなく,ちょっとやればできることを,できるまでやるということです。念のため。)
■授業場面は,いよいよ新しい「比の値」の概念に入りました。ここで,渡邉先生は,ミスをしました。コップ2個と3個の絵を描いて,「2個は,3個の何倍ですか?」と問うたのです。子供たちの動きがぴったりと止まりました。(おうちの方,どうしてかお分かりになりますか?)
ここは,「3個は2個の何倍ですか?」と逆に問い,直感的に「1.5倍」,「分数では3/2倍」というステップを経て,「2個は3個の何倍」に進むと分かるのです。昨日,私との打ち合わせで,「ここはポイントだからね。」と押さえていたのですが,やはり緊張していたのでしょうか。
子供たちの思考には,文脈があります。この文脈に沿って問題を与えていかないと,文脈の切れたところを,器用に埋めていける子はいいのですが,そうでない子はドロップアウトしていきます。途中,横から私が口を出し,渡邉先生はここを軌道修正しました。そこでまた子どもたちの反応がよくなり,授業は進みました。
■しかし,ここでまたミスが出ました。「2個は,3個の2/3」というところから,「これを比の値といいます。」とまとめたのですが,これでは「分数の答えの別名が比の値なのだ」と受け取る子がいる可能性もあります。ここは,いくつかの比の値を出して,それを比較し,「この分数の部分を見ると,2つの数の割合が容易に比較できる。これを比の値と呼ぶ」という概念づくりに時間をかけるべきところでした。
だから,まとめの問題をしたとき,挙手をした子は,1問目が9人。2問目は6人でした。授業は,正直です。教師の進め方のミスは的確に,子供の反応に反映します。ここは,明日の復習場面でもう一度扱うことが必要です。
■ま,ざっと上のようなものでしたが,最後に子供たちに一言感想を書いてもらいました。みんな,渡邉先生を応援している内容でした。一部ご紹介します。
○字がていねいで,教え方もていねいでわかりやすい。(多数)
○言葉がよく聞こえやすかった。(K)
○名前をちゃんとおぼえていてすごかった。こんな短期間で全員おぼえられるなんてすごーい。勉強の方は「比の値」すごくわかりやすかったでーす。(S)
○おやじギャグをいわなくていいと思います。(匿名希望)
○とてもくわしく教えてくださって比の何倍というのがよく分かりました。でも何でひっくり返すのとかを今度教えてください。(K)
○授業のやり方が横ちゃんに似ていた。それに,字がとってもきれいで見やすかった。横ちゃんだったらざつになる時がある。(O)
え〜,私も反省しなくては,なりませんね…。
9月12日(火) 第48号
「川とノリオ」終了
■お久しぶりです。いつも給食を食べている間に書いてきたこの通信ですが,このところ実習生の渡邉先生との打ち合わせや,外部とのあれこれでその時間の確保も難しくなり,発行が間遠になってしまいました。
昨日,私の周りに集まってきた子供たちが「先生,『共に育つ』出さないの?」「お母さんが,ないと寂しいって言ってるよ。」などと言ってくれましたので,今日は一念発起して(?)書くことにしました。
しばらく出していない間に,いろいろありました。ここでは,国語「川とノリオ」について,報告します。
■実習生の渡邉先生,成長が著しいです。もともとのセンスの良さに加えて,授業を見る目が肥えてきました。昨日,私が「川とノリオ」の最後の場面を授業しているのを見て,彼は実習日誌に次のように書きました。
(前略)今日で終わった「川とノリオ」の単元では,ノリオの心情理解に様々な方法をとってきたが,今日ほど難しく,そして今日ほど子供たちの力が伸びていると感じたことはなかった。発問がよくかみあっていて,とても参考になる授業だった。 |
私は,次のように返事を書きました。
(前略)「?」があれば,今日の国語のように,子供たちがどちらかと言えば沈黙している時間が長くても,発言がぽつりぽつりといったものでも,十分に子ども主体の学習が成立しています。反対に,活発に反応しているようでも「?」が希薄だと,それは教師主導なのです。その見かけにとらわれず,子どもの内面を見て,授業の善し悪しを考える先生の「目」に敬意を表します。 |
ともすれば,授業を表面的に見て,子供が華々しく発言すればそれでよいと見てしまいがちですが,彼はそういう外面を見て判断するのでなく,一人一人の内面に生じるものに目を向けようとしているのです。わずか3週間で,こういう視点を自分のものにしつつあることに,お世辞抜きで心からの敬意を表したいと思います。(普段は,あまり実習生をほめないのですが)
■さて,上のような感想が出た授業ですが,ノリオの心情に迫れば迫るほど,子供たちは段々と無口になっていきました。しかし,目は文章から離れず,また発言もぽつりぽつりとですが,とぎれなくノリオに寄り添った見方が出されるようになりました。発言が多くないのは,戦争で母ちゃんを失ったノリオの悲しみが,分かるだけに,それを言葉にできないということだったのでしょう。
本当にこの学級の子供たちは気持ちが優しく,それがこうした読みとりを可能にしたのだと思います。この話の初めの方では,戦争の記述を面白がったり,それに反応してふざけたりしたこともありました。それが,話の内容を理解することで,そうした低いレベルから抜け出していってくれたこと,手を合わせたいような気持ちです。
■子供たちの一口感想から,すべて一部抜粋でお届けします。
○ノリオはやぎっ子の鳴き声を聞いて,いやになって取っ組み合ってとても母ちゃんが死んで悲しい思いをしたんだなあ,と思いました。(K)
○もしノリオのお母ちゃんがヒロシマに行っていなかったら,今ごろノリオはお母ちゃんにあまえてしあわせにくらしていたんだろうなあーと思いました。(I)
○ノリオはまるで心の中に「母ちゃん」がいつまでも残ってて,それで楽しめないんだろうかとも思った。(M)
○ノリオは,サクッ,サクッ,母ちゃん帰れと言っているから,まだ母ちゃんの死がなっとくいかないんじゃないかなーと思いました。(中略)ノリオは,このあともこの日が来ると母ちゃん帰ってこないかなーと思う。(S)
○ノリオは,母ちゃんと父ちゃんの両親を亡くしたのは,すごいショックだったんだと思う。もしぼくだったら生きがいをなくしていたと思います。(O)
○日がさをさした女の人を見た時,ノリオは今すぐ母ちゃんに会いたくなって,その思いを草をかりながら言ったんだと思った。かわいそう…。(I)
○この勉強で対比のことがよくわかりました。ザアザア音を増す川のひびきなど,心の中で感じることをうまくかけているなあと思いました。戦争のない時代に生まれてきて良かったと思います。(T)
○ノリオは,母ちゃんのことをずっと思っていて,待っているけど,もう帰ってこないことがかわいそうだと思った。ノリオがこのままひとりぼっちなのが,こっちまで悲しくなりそう。(H)
○たぶんノリオは母ちゃんのことがわすれられないと思うから,母ちゃんのことをぜったいにずーっと1日思い出していると思いました。けど,ノリオはやぎといっしょにあそんで,母ちゃんのことを少しでもわすれるようにして,自分をさびしくならないようにして,やぎといっぱいあそんでいると思いました。(K)