6年生通信ー10月
1.総合的な学習「ふるさと再発見」無事終了
2.言葉の教育を考える
3.算数「比例と反比例」の導入
4.大失敗「ふるさと再発見」発表会
5.国語のお遊び,50号突破に寄せて
6.言葉を自分のものに
7.作文のエチュード
10月3日(火) 第49号
「ふるさと再発見」無事終了!
■あいにくの雨でしたが,今日総合的な学習「ふるさと再発見!」が無事終了しました。思い思いの場所に,出かけていった子供たちは,それぞれが満足した表情で帰ってきました。先週の青空交流会に続いて,また一つドキドキの体験を積んだ子どもたちに拍手です。
■思えば,こうした活動を5年生から積み上げてきて,子供たちはずいぶん力を付けました。まず,計画を具体的に立てるということをつかみました。5年生の雪祭りでは,「バスで大通りまで行く」とカードに書いて,それで計画はできたと思いこんでいた子も多かったものです。
こちらから「バス停は,どこ?」「乗る時刻は?」「料金は?」「着くまでの時間は?」「降りるのは,どこ?」「降りたら,どちらに進むの?」…と,限りなく確認をしないと具体的にならなかったのを思い出します。そして,生き生きと計画を立てる子供たちのたくましい姿を本当にうれしく思うのです。
また,青空交流会もそうでしたが,バスや地下鉄の中でのマナーもよく,周りの方への気配りも自然にできる子供たちです。大声で騒いだりせず,かといって暗く沈んだりもせず,明るい表情で落ち着いてバスや地下鉄を利用していました。
■それぞれの場所で,インタビューしたり,点字を探したり,アンケートをとったりと工夫した活動が展開されました。活動の計画段階から,まとめの発表を見通して,テープレコーダーに取材の様子を吹き込んで「これをみんなに聞いてもらうんだ。」などと,張り切っているグループ。パソコンで,アンケート用紙を作り,「これを30枚印刷してください。」と要求してくるグループ。子供に「まかせる」ことで,子どもが大きく育つことを改めて感じた取り組みでした。
■保護者の皆さんには,次々に企画される総合的な学習に対し,ご理解をいただき,本当にうれしく思いました。おかげさまで,子供たちが育つ活動を実現することができましたこと,心より感謝いたします。本当にありがとうございました。
■ただし,いくつかまだ課題も残っています。こんなことがありました。
ある4人のグループが,計画を立てていてケンカになってしまいました。その結果,グループはA君,B君の2人,C君,D君の2人に分裂。(これは,よくあることですし,こうしたことを通じて子供は育つという側面もありますので,一概に好ましくないこととは思いません。)
グループが分裂したので,行動計画書は2種類作らなくてはなりません。ところが,行動計画書はA君,B君たちの1枚しか提出されなかったのです。そこで,計画書を提出していない2人の方に,提出するようにと言いましたところ,C君とD君が今朝になって「昨日,仲直りしたから一緒に活動する」と言ってきたのです。
そこで,私は学年全員を前に言いました。
「仲直りしたことは,良かったね。でも,それと計画を立てることは別です。出された計画は,4人できちんと話し合いをして決めたものではないでしょう?それなのに,C君,D君がその計画に合わせて活動するというのは,筋が違います。分かりますか?」
子供たちは,キョトンとしていました。うなずく子がいません。子どもたちの生活の中の論理が垣間見えました。
子供たちにとって,「仲直りをする」ということと「一緒に計画を立てる」ということは,混然一体としているようです。大人でも「職場の人間関係を大切にする」ということと「仕事の業績を上げる」ということをごっちゃにしている人もいますから,あながち子どもばかりを責める訳にはいきませんが,ここは指導のしどころです。
次のように話しました。
「あなたが交通事故を起こして,相手をけがさせたとします。相手に,心から『申し訳ありませんでした。』と謝ることは絶対に必要なことです。場合によっては,お菓子折りを持っていくとか,入院したとしたら毎日お見舞いに行くこともしなくてはいけません。しかし,それと相手への補償は,また別の問題です。謝ったから補償をしなくても良いとか,補償したから謝らなくても良いとか考えてはいけません。それと,同じことです。計画は計画で4人できちんと立てなくてはなりません。謝って,人間関係がよくなったから,計画も何となく一緒にやるというのでは,よい学習になりません。」
こんな話をしていましたら,子供たちの中から「なるほど…」といった声が上がり,ようやく納得したようでした。
子供たちの見方や判断は,まだ多分に混然とした感覚的なものです。しかし,そこに「筋」(=論理的な思考力を働かせ,自己制御していく見方や判断)を通して,考えていく力を育てていかなくては,と考えさせられた一こまでした。
これで,総合的な学習は終わりましたが,今後は教科の学習や行事への取り組み等の中で,「筋」を大切にしていきたいと思いました。
エトセトラ
・日曜日に参加してきました,全国スポーツレクリエーション祭石川大会太極拳大会では,おかげさまで7位入賞を果たせました。1学期に参加した東京での全国大会は男子の部で6位でしたが,今回は男女混合で7位でしたから,こちらの方が上位と言えます。これも,「先生がんばって!」と拍手で送り出してくれた子供たちのおかげと感謝しております。保護者の皆様にも,ご理解をいただき感謝しております。ありがとうございました。
10月4日(水) 第50号
言葉の教育を考える
■漢字の書き取りテストを実施しました。
今,学習している「暮らしと道」までの範囲から,27問の出題です。先週,問題を予告し,ノートに1回練習しておいたものです。
(1)筋肉 (2)早朝 (3)映画を映す (4)深呼吸 (5)片道 (6)巻き物 (7)子供 (8)穴倉 (9)胸 (10)垂れ幕 (11)晩ご飯 (12)梅干し (13)天地創造 (14)絹織物 (15)川沿い (16)穀物 (17)延長 (18)岩塩 (19)机並べ (20)発展 (21)経済 (22)貴重(23)縦横 (24)鉄骨 (25)仁愛 (26)宣言 (27)単純 |
結果は,右のグラフのようでした。
■コンピュータが発達し,漢字の読みは別として,書きの必要性,重要性は以前ほどではなくなってきています。しかし,単に漢字が書けるということ以上に,漢字の書き取りには重要な意味があります。
それは,「知識を一つずつ確実に自分のものにしていく」という,知的な営みそのものの訓練になっているということです。
■ここ3週間くらいベストセラーとなっている『上司が「鬼」とならねば部下は動かず』(染谷和巳著 プレジデント社)という本に,次のような下りがあります。
相手を理解する,相手に理解させる,これによってコミュニケーションは成立する。 言葉が通じなければコミュニケーションは成立しない。(中略)言葉が通じない人とは,話し合いはできない。いくら時間をかけて話し合っても,社員の意識は変わらない。会社の幹部社員は,社員と話し合う前になすべきことがある。 私が主宰する研修では,漢字の読み書きテストを行っている。中学2年生程度の漢字で「読み」25問,「書き」25問の計50問を課す。50問中,30以上できる人は30人に1人。平均が10問で,10以下の人も少なくない。正解が1個あるいはゼロという人が30人中必ず2,3人いる。研修講師はこの結果を研修進行の目安にする。 講師は体験から,「理解力と表現力は漢字の読み書きの点数と比例する」ことを発見した。漢字の出来が悪い人が多いときは,研修の進行が鈍る。講師が質問しても答えが返ってこない。講師が言っていることがわからないのである。やさしい言葉に言い直して説明し,何度も同じことを繰り返し,たえず顔を覗き込んで「わかりましたか」と念を押す。相手は立派な大人なんだからと,どんどん話を進めて,後でその人が何もわかっていないのを知って愕然とした経験を何度も味わった。(中略) なぜ言葉が大事か。言葉の価値とは何か。 第一に言葉は思考の土台である。土台がなければ建物は建たない。言葉を奪えば考えない人間ができる。(中略) 第二に言葉は国そのものである。(中略)国の歴史が言葉に残り,先人の思想が言葉によって伝わる。国語が堕落すれば国が堕落し,国語が滅びれば国が滅びる。 第三に言葉は人間の成長の糧である。人は言葉を食べて育つ。粗末な言葉しか食べなければ栄養不良児になる。 |
私も,この部分についてはまったく同感です。
■今回のテスト結果から,少し分析してみますと,やはり5点以下の子供たちは,知識の理解力,定着力が不足しがちです。反対に,21点以上の子どもたちは授業時間におおむね学習内容を理解し,表情も明るく楽しそうに学習に取り組んでいます。
では,家で何が何でも漢字の書き取りを訓練すればよいのかというと,そこはそう機械的に考えるわけにはいきません。「書き言葉」は,「話し言葉」と密接に結びついており,その橋渡し的存在として「読み」という領域も重要です。
漢字の書き取りは,主に私の仕事ですから,ご家庭では次のようなことを見直してみてはいかがでしょうか。(ちょっとチェックしてみてください)
○朝,家族と「おはようございます。」の挨拶が明るくできているでしょうか?
(「おはよう」よりは,「ございます」まできちんと言わせたいものです)
○新聞やニュース番組,科学番組等,政治や国際社会,科学用語等の専門用語に触れる機会は,毎日の生活にあるでしょうか? ○読書の習慣は,できているでしょうか? ○「ありがとう」「ごめんなさい」をきちんと言わせるようにしているでしょうか? ○手紙を書く機会があるでしょうか? ○高学年として要求される,ちょっと抽象的な言葉を使って会話できるでしょうか? (例えば「多様」「具体的」「解消」「貴重」「くつろぐ」「比較する」など) |
上のチェックがすべてできているなら,まず間違いなく漢字の書き取りも25点以上ではないかと予想していますが,どうでしょうか。
言葉の教育は,一生を左右するものだと思います。日常生活からの積み上げから,見直していきたいと思っています。
10月4日(水) 第51号
算数「比例と反比例」の導入
■今日の授業記録です。まず,黙って次のように表を書きました。
1 | 2 | 3 | ||
1 | 2 |
そして,言います。「1のときは,1なんです。そして,2のときは2なんですね。では,3のときは下はいくつになるでしょう。」
子供たちは,「???」という顔をしながらも,全員が「3」とノートに書きました。そこで,それが正解であることを告げ,「すごいね〜。」とほめます。「でも,わかっても秘密は言わないでね。」と言いつつ,上段の4マス目には「5」と書きます。すると,すぐに子どもたちは「5」と書きました。「わかった,わかった!」と喜んでいる子もいますが,理由は聞かずに予想だけ発表してもらい,正解が「5」であることを告げます。そして,最後のマス目には「100」と書きます。すると,またほとんどの子が「100」と記入しました。正解です。
表が完成したところで,「どうしてわかったの?秘密がわかったんだね。」と投げかけますと,「上と下は,同じ数が入るんでしょ?」と言います。「なるほど,同じ数が入るのか。じゃあ,それを式で表してみよう。」と投げかけ,「上×1=下」であることを押さえました。
■次いで,(2)として,次の表を示します。
1 | 2 | 3 | ||
2 | 3 |
同じように,3の下を聞くと,「4」の予想です。ここでは,秘密を明かさずに,上段の3の隣に「9」,さらに「24」と記入すると,それぞれ「10」「25」と予想が立ちました。そこで同じように式を聞くと「上+1=下」となりました。
この後,上と下の和がいつも同じ例,そして時速と所要時間のように,反比例する例を示し,それぞれを式で表した後(お子さんのノートをご覧下さい),「今日の学習は,変わると変わるという勉強なんだよね。これを算数ではともなって変わる量と言います。」とまとめました。
■この後,さらに@からCまでと同じ例を日常生活から探してみたところ,教科書も参考にして,次のような例が出されました。
・「上×α=下」…カメラのシャッターを押した回数と,表示される数,子供の数とおやつの数等
・「上+1=下」…満年齢と数えの年の関係,1才違いの兄弟や夫婦の年等
・「上+下=一定」…カメラのフィルムで使った枚数と残りの枚数,お菓子の食べた分と残りの分等
・「上×下=一定」…時速と所要時間,面積が一定の場合の縦と横の長さ等
■このように,「伴って変わる2つの量」への感覚を問うことは,比例や反比例という概念を獲得する上で,とても重要な学習です。こういう感覚がないと,算数は一気に訳の分からないものになり,機械的なものになってしまいます。そして,その基礎は日常生活の中に,どれだけ子供たちが主体的にかかわって「数や量を変えていける」体験があるかにかかっているのです。
昨日では,この「日常生活の中から探す場面」で,多くの子の反応が急に鈍くなってしまいました。これは,やはり主体的に数量にかかわる体験が不足しているところに根があるのではないかと考えました。
(以前も懇談でお話ししましたが,調理や掃除など,日常生活の中では,常に「数や量を感覚的に計算する」ことが要求されることを,もっとやらせてやって下さい。そういう活動では,調味料や洗剤の量,水加減,時間の配分等を考えなければなりませんから,いやでも数量感覚は発達します。例えばおやつを与えること一つでも,個別包装のものを与えるより,大きなロールケーキを与え,「3人で同じになるように分けてね。」と包丁をあずける方がずっと良いのです。カレーのルーを,「これだけ入れなさい。」と切り分けてやらず,レシピを見て「お米の量が違うから,後の分も計算してね。」とまかせた方が良いのです。)
自分が操作すると確かに数量も変化するという感覚を,もっともっと豊富にもたせてやりたいと思いました。
ご案内
○明日,「ふるさと再発見!」の発表会です。ご都合のつくかたは,どうぞのぞきにいらしてください。子供たち,見やすさと楽しさにこだわって,いろいろ工夫しています。
10時40分頃から体育館へどうぞ!
○やっと50号を越えました。今日は調子に乗って2号出しました。読まれてのご感想やご意見(厳しい方が勉強になります)などお寄せいただければうれしいです。
10月5日(木) 第52号
大失敗!「ふるさと再発見!」発表会
■本日3,4校時に実施された「ふるさと再発見!」の発表会は,大失敗に終わりました。 次のようなことがたくさんあったからです。
【発表内容】 ・これは,けっこう内容的によいものが多かったです。この子たちの気持ちの優しさと これまでに積み上げてきたまとめかたの成果が,よく表れていました。(中には,いくつか,課題に対応していないで,自分たちの体験のみを報告しただけの発表もありましたが。) 【発表方法】〜これが,大失敗です ・まず,立つ位置がステージの奥の方に引っ込んでいたこと。 何度も「前に出なさい。」 と指示を出したのですが,子供たちはすぐに引いてしまいます。自信のなさの表れです。 ・また同じく立つ位置が図の*寄りに立つ子が多かった。 これも,6年生の方にいた方が安心という,自信のなさの表れです。 ・声が小さい。5年生に書いてもらった評価カードには「聞こえない」という言葉がたくさんありました。 ・見せる画用紙等の発表物のかげにかくれて話をしている。 ・発表物に,小さな文字を書いたり,小さな写真を貼ったりし,それを指し示して説明している。 |
■事前に私達は次のような指導をしています。
・教室でするのと違って,体育館での発表は「見えにくく,聞こえにくい」から,画用紙には小さな文字などを入れない。大きな画用紙に大きな絵やグラフを描き,それを示しながら大きな声でゆっくり話すこと。
これが,どういう意味か考えることができなかったのでしょう。準備が始まってから,いくつかのグループの発表物について,「この文字では見えないよ。」とアドバイスを与えたりもしたのですが,首を傾げている子たちもいました。
■発表中,何度も5年生から「聞こえません!」の声が出ました。しかし,言われて声を大きくする子は,ほんの数人。後の子は,そのまま続けるのです。自分が聞こえているから,5年生も聞こえているはずだと思っているようです。
さらに,画用紙で口元を隠しているので,なおさら聞こえません。画用紙を顔の前からはずすようにとそばから助言を与えても,臨機応変に動くことができません。
■すべての発表が終わってから,6年生の子供たちに自己評価をさせてみました。もっとも良いのが5,最低が1の5段階です。すると,
5…2名
4…15名くらい
3…多数(35人以上)
2…7,8人
1…3人
という評価でした。やはり,自分たちが聞こえているから5年生にも聞こえているはずだと思ったようです。そこで,5年生の評価カードを少し読み上げてやりました。
「聞こえない」「聞こえない」「意味が分からない」「聞こえない」…
聞いているうちに,ようやく子供たちは事態を悟ったようです。
「分かった? 自分たちが思っているほど相手には伝わっていないんだよね。これを挽回するのは,学習発表会だね。」と話しますと,ちょっと元気をなくした子供たちですが,「うん。」とうなずいていました。
■しかし,一番反省しなくてはならないのは,指導した私達です。「自分たちが思っているほど相手には伝わっていないんだよね。」は,そのまま私達が受け止めなくてはなりません。体育館の広さという条件を,もっともっと子供たちにきちんと話して聞かせるべきでした。
また,一人一人が十分に自信を持って発表に臨めるように励ましをもっと密にするべきでした。まだ少し,照れや口ごもりも見られます。十分に一人一人に自分への自信を育てきっていないこと,反省しております。これから,学習発表会に向けてまた気持ちを新たにがんばりたいと思います。
成長は,失敗を糧とすることで本物になります。あまりにも順調にいきすぎるのは,要注意です。その意味で,今回の大失敗は,次に生かすべきものだと考えます。
■お忙しい中,3名の保護者の方が参観に見えました。ありがとうございました。感想などお聞かせいただければうれしいです。
10月11日(水) 第53号
国語のお遊び
■授業が予定より早めに終わったときなどのちょっとした時間を使って,よく言葉遊びをします。今日は,三字熟語さがしをやってみました。5分間で,一番たくさん見付けた(ノートに書いた)子は,なんと29個。なかなかの成績です。ま,平均は15個くらいかな? グループでノートを見せ合って,傑作な熟語を披露し合いました。
・水不足 ・肺活量 ・芸術祭 ・太平洋 ・非常識 ・郵便局 ・大魔王 ・大爆発 ・微音読 ・日本海 ・砂時計 ・優良品 ・白雪姫 ・本塁打 ・世界一 ・実験台 ・詐欺師 ・再生紙 |
こうしたことをすると,子供たちの持ち味がよく出ます。
「一年生」「二年生」あるいは「月曜日」「火曜日」…と,並べてゆく子。
教室を眺め渡して「掲示板」「道具箱」など,身近なところから考えてゆく子。
「筋肉質」「金王冠」「黄緑色」…と,「き」のつく言葉を探してゆく子。
どの子も,楽しそうに取り組み,お互いに「よく考えたねえ」などと認め合っている姿をうれしく思っています。
懇談などで何度かお話ししていることですが,語いの少ない子は,思考力も伸びません。日常生活の中から語いを増やすように導くことと,こうした言葉遊びを通して語いを開発していくことが,子供たちの基礎力を伸ばすことにもつながります。ご家庭でも,折に触れて遊んでみてはいかがでしょうか。
■子供たちは,国語辞典をさっと引けるようになりました。辞典にはさむ付箋紙も,かなりにぎやかになってきました。そこで,国語辞典を作る方の立場に立ってみようと,次のような学習もしました。
「みんな,青って知っているよね。では,青を辞典ではどう説明しているでしょう。引いてみましょう。」こう言うと,子供たちはさっと引いて,「青い空の色」「澄み切った空の色」「三原色の一つ」などと,説明されているのを探しました。
そこで,「では,みんなが辞典を作る人になったとしたら,『赤』をどう説明しますか?」と問いかけますと,次のようなステキな,あるいは傑作な回答が得られました。
○秋に出てくるもみじ色 (A)
○サンタクロースの服の色 (K)
○フェラーリの色 (T)
○情熱の色 (O)
○血の色,また高い温度をもつ火の色。夕焼けの色など (M)
○熟したリンゴやイチゴなどについている (M)
多くは,「血の色」などと書いた子が多く,答え合わせを辞典でしてみると,多くの辞典がそのようになっているのを見て,「やった,僕と同じだ!」などと喜んでいました。
50号突破に寄せて
■お二人の保護者の方から,本紙50号突破ということで感想をいただきました。どちらも一部抜粋でご紹介します。
○共に育つ50号達成,ご苦労様です。50号達成ということは,四捨五入すると100号じゃないですか。凄いことです,なんていう冗談はさておいて。これだけの内容を,いつもいつもワープロ化するのはとても大変なことです,ご苦労様です。
「ふるさと再発見」の発表会が失敗したとのことですが,ちょっと残念ですネ。生徒に指示しても,NGであればホワイトボードや机をステージに上げれば,そこに画用紙などの資料を置くことが出来,生徒がステージの奥に行くようなことが防げたのでは,と読みました。○○の話では,確かに説明する声も小さい人もいたが,聞く側の姿勢としては,必ずしも良いとは言えない場面もあったとか(私は見ていないので,何とも言えないのですが)。
以上が最近の「共に育つ」を読んでの感想です。学習発表会を楽しみにしています。これからも「共に育つ」の発行を楽しみにしています。
→発表会は,確かに私達の方の読みと工夫が足りなかったと反省しています。今後にご期待ください!
○4月に発行が始まったときには,それまで見えていなかった我が子や学級の様子が手に取るように分かるので,とてもありがたく思いました。
中に,私達親が反省させられることや,先生のお考えも盛り込まれ,時にはドキッとさせられながら楽しみにしています。最近は,先生もお忙しいようで,発行回数が減っているのが残念です。でも,○○が,この頃学校でのこと,先生のことをよく話して聞かせてくれるようになりました。とても楽しそうに。学習発表会の劇も,先生が作られたそうで,家族みんなで楽しみにしています。
無理なさらない程度に,今後も続けてください。今度は,目指せ100号!(あら,無理させようとしていますね!)
→教育実習生さんが来た辺りから発行回数が減ってしまいました。また,がんばります! でも,100号は,う〜ん…。もっと多くの方が応援メッセージをくだされば,その気になるかも…,なんちゃって!
10月18日(水) 第54号
言葉を自分のものに
■算数では,「比例と反比例」の学習が終わりに近づいています。今日,扱ったところは,次のようなところでした。
長方形の縦の長さと横の長さの間には,どのようなきまりがあるか調べましょう。
(1)縦の長さとそれに対応する横の長さの積を比べましょう。 (2)縦の長さxcmと横の長さycmの関係を式に表しましょう。 (3)xの値が8mのとき,それに対応するyの値を,y=24÷xの式から求めましょう。 |
こうした教科書の記述を読む場合,子供たちの読み方には,いろいろなレベルがあります。
@「分かろう」「ここは,〜だな」と考えながら読み進む子。
A自分に分かる(ピンとくる)言葉をつなぎ,それで全体の意味を推し量ろうとする子。
B自分に分かる(ピンとくる)言葉だけを見て,「なんとなく」先に進む子。
C字面を追って,それで「読んだ」という子。
■言うまでもなく,教科書を読む際は,@のような読み方を促すようにしなくてはなりません。高学年ともなれば,言葉が難しく,BやCのような読み方をしている子は,いつまでたっても内容をよく把握することができません。そして,その学習内容がよく分からないだけでなく,「読む=考える」という脳みその訓練自体がスポイルされてしまいます。 そこで,私は上のような場合は,次のように進めています。
(1)縦の長さとそれに対応する横の長さの積を比べましょう。 |
まず,声を出して読ませます。声に出して読むのと,目で読むのとでは,読みに注がれるエネルギー,そしてそれに伴う文意の理解に格段の差が生じます。
次に,私がゆっくりと読み,書かれている言葉が指し示す具体的なモノや部分を確認していきます。上の例では,「縦の長さ」を,教科書の図と表のその部分を指で押さえさせるという作業によって,確認しました。(今では,ほとんどの子が表の中の「縦の長さ」の部分をさっと指させるようになりました。こうしたことも,見落とせない大事なポイントです。)
次に,「対応する」などのちょっと難しい言葉の意味を押さえます。「縦が2cmのところで,対応している横の長さを指で押さえなさい。」と指示し,確認します。この段階になると,学級の半数くらいしか反応できませんでしたが,繰り返していくと,ほとんどの子ができるようになりました。)
さらに「積」のような,算数用語の確認も行います。「セキって,ゴホンゴホンじゃないよ。」などと寒いだじゃれをとばしながら。
(2)縦の長さxcmと横の長さycmの関係を式に表しましょう。 |
ここ,子供たちがとても苦手にするところです。
一つ一つ,縦が2cmのときは,横は12cmなどと当てはめ,表から気づきを導きます。3cmのときは,8cmなどと予測がつきますので,「どうして,予想できたの?」と問いますと,「かけたら24だから」などと,気づきが表現されました。この「かけたら24」を,式に表すのです。
ところが,xとyというように,文字で式を表すということになると,そこから思考を展開するのはかなり難しいことになります。
そこで「yは,いつもxより3大きい。これを式で表してみよう。」などと,2つの数量の関係を式で表現するトレーニングを取り入れました。いくつかやりますと,多くの子供たちから「分かった,分かった」と声が出てきました。これも,繰り返し「yはxよりいつも100多い」「xとyはいつも同じ」など発展させていきます。分かるまでやるということは教育の大原則です。
■このように,算数では教科書の記述を,自分のものとするために,けっこう細かいステップを踏んで指導しています。
また,国語では音読を多く取り入れ,難しい言葉が出てきたら,それで短作文を書くなどもしています。
さらに,日常生活でも何か指示を出したときは,「では,もう一度繰り返してご覧なさい」と復唱を命じることもあります。
例えば,「1時間目は劇の練習ですから,体育館に台本をもって移動します。3の場面から始めますので,その準備をしていましょう。」と指示を出したら,すぐに「○○君,これからすることを復唱しましょう。」とフリます。けっこう,言えません。聞いているときは分かったつもり,でも復唱できないようでは本当に分かったとは言えません。
■こうしたことに一貫しているのは,「言葉を自分のものにする」という力を,育てようとしていることです。何となく,言葉の上を通り過ぎてしまう態度でなく,言葉に自分の内面世界との照らし合わせと具体的な行動を合わせていく活動を多くしていきたいと思うのです。言葉は,人間をつくります。言葉は,精神そのものです。確かな言葉を,きちんと使える人間に育てていきたいと思います。
10月24日(水) 第55号
作文のエチュード
■学習発表会の作文を書きました。子供たちが書いているのをちらちらと見ると,次のようなものがありました。
1年生は,「あかずきんちゃんといっしょ」でした。とてもかわいかったです。
2年生は,「にんたまらんたろう」でした。がんばっていました。 3年生は,…。(略) とてもおもしろかったです。 |
これまで,作文指導を繰り返し,多くの子は題名から構成までを工夫するようになってきましたが,まだ「できごとをずらずらと並べて,『楽しかったです』というような大ざっぱな感想を付け加えて終わり」という作文もあるのです。
■そこで,次のような指導を行いました。題して「作文のエチュード」。
(A)私の先生は( )です。
( )に,当てはまる言葉を入れてみます。すると,多くの子が,にこにこして
私の先生は,ハゲです。(多数) |
と,書いてくれましたねえ。うーむ。ま,作文のねらいとしてはいいのですが…。
他には,
私の先生は,めがねをかけています。(M) 私の先生は,力もちです。(H) 私の先生は,45才です。(K) |
などが書かれました。
ここで,「これは,比較的簡単です。事実か自分の感想を書けばよいからですね。でも,これは低学年レベルの作文です。」と押さえました。
(B)私の先生は( )です。なぜなら( )だからです。
今度は,文から文章へとバージョンアップします。しかも,2文目は,「理由」を書かなくてはなりません。ちょっと難しくなります。
私の先生は,メガネをかけています。なぜなら目が悪いからです。(M)
私の先生は,おもしろい人です。なぜならギャグを言うからです。(U) 私の先生は,めがねをかけています。なぜなら本をたくさん読んだからです。 (M) |
「よく書けましたね。(A)に比べて,理由を書かなくてはいけないので,難しくなったでしょう。でも,これは中学年レベルの書き方です。いよいよ,高学年レベルの書き方に進みましょう。」
(C)私にとって,先生は( )です。
なぜなら,( )からです。
たとえば,( )。( )。…
だから,先生は私にとって( )。
さあ,こうなるとグッと難しくなります。特に「なぜなら」と「たとえば」以降の区別がなかなか把握しづらいのです。「なぜなら」以降は「理由」,「たとえば」以降は「事実」ですが,これが普段の会話で混然としている子ほど,苦労しています。
ここでは,次のような作文が書かれました。
私にとって先生はふしぎな人です。なぜなら今までこんな先生にあったことがないからです。たとえばオヤジギャグを言う。5つ☆を発明する。だから私にとって先生は,先生じゃないような人です。(T)
私にとって先生は勉強のマジシャンです。なぜなら授業を先生のオリジナルにして勉強を楽しくさせてくれるからです。たとえば,授業を始める前に日付が10秒間数えるうちに書けたら五つ星をくれます。それと,前日にやった勉強を「思い出しコーナー」と名づけ,新しい勉強をはじめる前にふくしゅうをします。それと,国語の音読の時,はじめにゆっくり読み,その後何回も何回も読み,次にわからない言葉があったら語句調べをしして,もう一度音読をすると,最初に読んだときよりもぐっと話の内容がわかってきます。だから,私にとって先生は勉強のマジシャンです。(O) |
私にとって先生はふしぎな人です。なぜなら今までこんな先生にあったことがないからです。たとえばオヤジギャグを言う。5つ☆を発明する。だから私にとって先生は,先生じゃないような人です。(T)
私にとって先生は勉強のマジシャンです。なぜなら授業を先生のオリジナルにして勉強を楽しくさせてくれるからです。たとえば,授業を始める前に日付が10秒間数えるうちに書けたら五つ星をくれます。それと,前日にやった勉強を「思い出しコーナー」と名づけ,新しい勉強をはじめる前にふくしゅうをします。それと,国語の音読の時,はじめにゆっくり読み,その後何回も何回も読み,次にわからない言葉があったら語句調べをしして,もう一度音読をすると,最初に読んだときよりもぐっと話の内容がわかってきます。だから,私にとって先生は勉強のマジシャンです。(O)
このようにして,主題となることを「理由」や「事実」を盛り込んで述べていくということを具体的に指導しました。すると,「ああ,学習発表会の作文を書き直したい!」という声が上がってきました。(これが,ねらいだったんですけどね。)
■作文がきちんと書けるということは,思考をきちんと組み立てることができるということです。「よい生活はよい作文を生み,よい作文は,よい生活を生む」といいます。よい生活とは,見方や感じ方が豊かな生活です。よりよい生活のためのよりよい作文に力を入れていきたいと思います。