メールマナーをめぐって

このサイトを開設してから,本当にいろいろな方からメールを頂くようになりました。中にはちょっとマナーが不足しているように思えるメールもあります。私は,そうしたメールにもすべて返事を書いています。

2001年の冬に,相次いで2人の若い方からメールを頂きました。少しマナーを欠いたものでした。私は,苦言めいた返信をしました。すると,そのお二人からきちんとした返事がきたのです。それは,ちょっと感動的なものでした。「今どきの若い人も捨てたものじゃない」とつくづく思いました。メールが急速に普及し,その割にはマナーについての知識があまり普及していないという状況があるようですが,そんな中でも素直で,前向きな若者がいることをうれしく思います。

そんな若者がいることをお知らせしたく,また再度メールマナーについて考える1つの材料になればと思い,そのお2人のメールとやりとりを,匿名でご紹介します。

(若者のメールを水色で,私の返信をで表しています。)


その1

初めまして。
僕は、H県K市のK専門学校のグラフィック科の学生です。
いま、学校の課題のいっかんとして最近の小学生の流行りというものをしらべています。ジャンルはなんでもいいです。最近の遊び、ゲーム、TV番組、学校の流行ごと、など、もし良ければ調べてみてもらえないでしょうか?できれば、近日中にお返事ください。よろしくおねがいします。
 Oさん,初めまして。「共に育つ」管理人,ヨコさんこと横藤です。
 
 私のところには,様々な人からいろいろなメールが届きます。
 教育関係,そして盲導犬や太極拳のことについても問い合わせがたくさんきます。
 私は,できるだけそれらにお応えしようと思いますが,そういう前提の上で,まず少し苦言を述べさせていただきます。
 
 (1)自分の素性を明確に
 こうした依頼をするのなら,まず自分の名前をきちんと名乗るのがマナーです。
 メーラーの送信者名から,Oさんというのがおそらくお名前だろうと察しますが 「小*」「織*」「尾*」…とたくさんのOさんがあり得ます。
 住所等まで書く必要はありませんが,もう少し丁寧な自己紹介をすべきです。
 
 私のサイトに,メールマナーを扱った論文があります。よろしければご一読下さい。
http://www3.plala.or.jp/yokosan/katuhouken-ronbun8.htm

 (2)調べるということは,かなりのことです
> もし良ければ調べてみてもらえないでしょうか?できれば、近日中にお返事く
> ださい。よろしくおねがいします。
 
 「調べる」には時間と手間がかかります。
 調査項目は? 調査対象は? 設問の言葉は? 集計結果は? 
 これらがきちんとしていないと,調査をやり直したり,酷いときには没にしたりすることになります。
 何のために,調査をするのか。
 その調査は,どの程度の範囲で行うのか。(サンプル数,調査は全国規模か)
 結果は,どのように活かすのか。(レポートを送付?)
 こうしたことを知らせずに,睡眠時間の確保がけっこう大きな課題となっている教師に調査を依頼するのは,失礼な感じがいたします。
 「近日中」というあいまいな言葉も気になります。
 
 (3)テーマが広すぎます
 「小学生の流行りというもの」では,広すぎます。本が1冊書けます。
 「ジャンルはなんでもいいです。」は,思いつきの域を出ない感がいたします。
 研究は,範囲を限定するからこそ価値があります。
 
 (4)まず自力で
 どこまでご自分で資料を集められましたか?
 Oさんの近隣の学校には,何校くらい足を運ばれたのでしょうか?
 また,サイトはいくつくらい検索されましたか?
 
 まずご自分で動いて,しかるのちに人に依頼する。これがマナーですね。
 
以上,気分を害されたかもしれませんが,若いOさんが,これから人とのつながりを大切に生きていく上で考えて欲しいと思い,あえて厳しく書かせていただきました。
もし,このメールにお返事をいただけるなら,私も決してヒマではありませんので, 「調査」は無理ですが,感想もしくは感触程度の回答をしてさしあげてもよろしいですよ。
どうもごしてきありがとうございました。
名前は、小*といいます。
設定の手違いで名前が出ないほうで送ってしまいましたすいませんでした。
言葉の足りなかった部分もたたあり本当にすみませんでした。
最初のメールでお知らせしたとおり、K市の学校で、グラフィックの勉強をしています。
今回の小学生の流行りという調査で、今現在の小学生が求めているもの、例えば、おもちゃ、ゲーム、人気歌手。など今もっとも市場をさわがせているものをしらべています。
僕が、近くの小学校や、知り合いが通っている小学校で、合計150人内だいたい男子100人、女子50人くらいに聞いてみた所、男子でもっとも流行っているものは、ベイブレード、女子で流行っているものは、歌やダンス得にハモネプの影響からかアカペラが流行っているということ。
あと男女共有でモーニング娘。が流行っているということをしやべました。
サイトもだいたい小学生をあつかったサイト20件ぐらいしらべてみました。
でもやはりこれ、という所がしっかりしなくて、メールをさせていただきました。
僕の文章の不十分から、気分の悪い思いをさせてしまってすみませんでした。
以後気を付けるようにしたいとおもいます。
横藤です。Oさん,お返事をありがとうございます。

>僕の文章の不十分から、気分の悪い思いをさせてしまってすみませんでした。

いいえ。さほど不愉快な思いをした訳ではありません。やや年を取った私はOさんのような若い人に,あれこれ言うのが役目なのだと思っているものですから。
Oさんこそ,不愉快だったことと思います。ごめんなさいね。
そして,誠実にお返事をいただけたこと,うれしく思います。

では,私の分かる範囲で子供の流行を書いてみます。
・まず,「モーニング娘。」は,やはり札幌でも男女共通で人気があります。
・女子には「アユ」「Winds」。
・男子は,けっこうバラバラです。
・「モー娘。」のカード集めも盛んです。
・男子はベイブレード。
・テレビは「ワンピース」「コナン」「犬夜叉」「ヒカ碁」「テニプリ」かな?
・ゲームは,プレステ2が人気です。

以上は,私の家の子たち及び勤務校の子供たちの,およそサンプル数70前後の「感触」です。

では,レポート作りがんばってください。応援しています。
どうもありがとうございます。
いろいろと御迷惑をおかけしてしまいどうもすいませんでした。
これからは、メールの文章にもっと気を付けて送る様にします。
本当にいろいろありがとうございました

その2

はじめまして。私は短大で教職課程を履修し、教師を目指していますTと申します。教師になることは小学校の時からの夢であり、今年の採用試験は不合格だったものの実習を体験し、何年かかっても絶対に教師になりたい!と思っています。
そんな私にとって現役の先生方のホームページは大変勉強になり、参考にさせていただいています。
実は、今、大学の授業で教育についてテーマを決めて研究し論文にするということに取り組んでいます。私の研究テーマは「総合的な学習の時間の活用と課題」です。来年から新しい教科として加わる「総合的な学習の時間」には大変興味があり、生徒達にも大きな変化があるのではないか?と期待でもあります。それで、研究にあたり現役の先生方の「総合的な学習の時間」についての考えをできるだけ多くの方に聞きたいと思いアンケートを実施しています。そこでお願いなのですがお忙しいとは思いますが添付したアンケートに答えていただけないでしょか?私の研究にはとても重要なのです。もしよろしければ回答し、添付して24日あたりまでに返信していただければ幸いです。突然で勝手なお願いで申し訳ございませんがどうぞご協力おねがいいたします。
「共に育つ」管理人,横藤です。Tさんこんにちは。

さて,以下のメールをいただきました。教師になりたいという熱意をうれしく思います。また,こういう依頼には,いくらかでもお応えしたいとも思います。

そういう前提の上で,まず少し苦言を述べさせていただきます。

(1)自分の素性を明確に
>はじめまして。私は短大で教職課程を履修し、教師を目指していますTと申します。

どこの短大ですか? 住所や電話番号を明かすのはやりすぎですが,卒論の依頼であれば,大学名は明らかにすべきではないでしょうか?

私のサイトに,メールマナーを扱った論文があります。よろしければご一読下さい。
http://www3.plala.or.jp/yokosan/katuhouken-ronbun8.htm

(2)基礎的な知識をしっかり
>取り組んでいます。私の研究テーマは「総合的な学習の時間の活用と課題」です。来
>年から新しい教科として加わる「総合的な学習の時間」には大変興味があり…

総合的な学習は,「教科」ではありません。アンケート内容にも「教科」とありましたが,指導要領をよく読んでください。総則に記載された「時間」なのです。

また,
>生徒達にも大きな変化があるのではないか?と期待でもあります。
とありますが,小学校の場合は「生徒」ではなく「児童」です。ついでに,主述が不整合です。

(3)教師は多忙です
>のです。もしよろしければ回答し、添付して24日あたりまでに返信していただけれ
>ば幸いです。

このメールを受け取ったのが21日。時間が少なすぎます。

(4)アンケートを送るなら
アンケートを送る前に,「アンケートに協力して貰えるか」を確認し,また相手が一太郎ファイルを開けるかどうかを確認してから送るのが礼儀ではないでしょうか?(私は開けましたが)

(5)設問の中身
設問が大きすぎます。例えば「具体的にどんなことをやっていますか?」などは,指定された5行では答えられません。本が1冊書けます。

(6)CCは避けましょう
見知らぬ相手に送るのなら,CCで送るのでなく,BCCまたは個別に送るべきですね。


以上,気分を害されたかもしれませんが,若いTさんがこれから教師になって,人とのつながりを大切に生きていく上で,考えて欲しいと思い,あえて書かせていただきました。

もし,24日前にこのメールにTさんの心のこもったお返事をいただけるなら,私も決してヒマではありませんが,添付ファイルに回答をしてさしあげてもよろしいですよ。
先日メールを送りましたTです。横藤さんにいくつか指摘を受け、自分の常識のなさと勉強不足に気づかされました。本当にメールを送った皆さんに失礼なことをしてしまったのだと感じます。これで教師を目指している自分が恥ずかしく思います。申し訳ございませんでした。
「総合的な学習の時間」が教科に加わると間違えてしまいましたが、教育課程に位置づけられるの間違いでした。これは他の方にも指摘を受けました。自分で研究したいと言っていて、根本的なことを理解していなくて情けないと思います。「児童」と「生徒」の違いは理解していますが、このアンケートは中学校、高校の先生にもご協力お願いしていますので、つい、間違ってしまったようです。すみません。又、沢山の方にメールを送るためにCC:で送ってしましましたが、やはり、自分の勝手なお願いでありながら、このようなことは、大変、失礼なことだったと思います。すみませんでした。
私は、横藤さんと同じ北海道に住んでいます。K大学の国文科の学生です。教職課程を履修し中学国語2種の免許状の取得のため、国文科の勉強とともに頑張っています。国語の先生をめざしていながら、文章の基礎的なことができていないのはやはり問題があると自覚しました。
ただ、私は、決して教師になることを簡単には考えていません。それは、教育実習を体験して、「教える」ということが本当に難しいと自覚しましたし、一人一人の生徒を理解するのはとても大変だと解ったからです。そして、初めて教員採用試験を受けて自分の実力のなさが明らかになり、もっと勉強を積むことが必要と思ったからです。これらから教師になることは大変だということを知りましたが、それでも教師になりたいという思いは変わらず、むしろますます強くなりました。それは、教師になりたいという夢を10年前から変わらず持ち続けてきて、今年、現場を体験して大変なことも経験しましたが、それ以上に嬉しさと楽しさを得たことが大きかったからです。それで、国語や教員の勉強をきっちりやり、自信が持てるようになってから、また教員採用試験を受けようと思っています。
教員になるための勉強の前に、人としての常識、社会のマナーを勉強しなければいけないと今回のことで教えていただきました。一つ一つの指摘をきちんと受け止めて、もう一度、自分を考え直したいと思います。本当に申し訳ございませんでした。そして、指摘をしていただき、大変ありがとうございました。 
 K大学 国文科 T
横藤です。Tさん,私の意を汲んでくださり,ありがとうございました。
素直な,そして前向きなお返事に感動しました。
私がTさんと同じくらい若かったら,きっと頭に来て返事など出さずにいたと思います。

さて,お約束通りアンケートに答えさせていただきました。
資料も1部添付しました。重くなると思いますがご容赦下さい。
資料は,「札幌総合まつり」という,札幌市内の総合的な学習の先進校を一同に介し,ワークショップ形式で発表したものです。そのおりのレジュメをご笑覧ください。もし不明な点などあればまたお気軽にメールを下さい。

前向きで素直なTさんを,応援したいと思います。
お忙しい中、アンケートにご協力いただきまして本当にありがとうございました。大変、丁寧に回答していただき、また、資料まで添付していただき、本当に嬉しく思います。アンケートと資料は、大変貴重な資料として研究に活用させていただきます。
いただいた資料は、実践されていることが大変明解で、「総合的な学習の時間」が知識だけではなく、現状の「総合的な学習の時間」というのが感じられて嬉しく、とても勉強になります。(上手く言葉で言えなくてすみません。)驚いたのは、小学校でパソコンを取り入れるというのはよく聞きますが、エクセルを使っているということです。正直、小学校では、デジカメやお絵かきくらいかな?と思っていましたから。私は、先月からエクセルを始めたものですから(授業でやってます)驚きでした。すごいですね。
今回、横藤さんに教えていただいたことは私の中でとても大きかったです。今回学んだこと、感じたこと、自分を見つめ直したことを決して忘れず、この先頑張っていきたいと思います。本当に、アンケートのご協力をはじめ、色々とありがとうございました。

   トップページへ       がらくたボックスへ