算数・数学授業プラン「√(ルート)への招待」

はじめに
この授業プランは,私の太極拳の同朋である横山保重さんとお酒を飲んでいるときに聞いたお話から生まれました。横山さんは,元高校の数学の先生でした。現在は退職なさって太極拳に熱中しているステキな方です。教師としては私の先輩,太極拳の世界では同朋として,親しくお付き合いいただいています。とっても楽しい内容ですので,小学生でも楽しくルートの不思議さに気づいていけるのでは,と思っています。

【準備するもの】
・コピー用紙(B版またはA版)それぞれ人数分に余裕を持たせて  ・折り込み広告数枚  ・ノート(ルーズリーフなど)数枚  ・A3コピー紙数枚  ・折り紙数枚  ・はさみ(各自)  ・電卓  ・教師が長方形で折り鶴を折ることができるようにしておくこと 

【実施時数】
約45分×2〜3回くらい(学年によって,また作業を入れるかどうかで変わってきます)

【展開】

(1)A版でもB版のコピー紙でも折れる鶴
A4のコピー用紙で折り鶴を折って見せます。(「折り鶴」をご参照ください)
「長方形の紙でも,所々きちんと重なって折り鶴が折れるのですね。このコピー用紙(A4)だから折ることができるのでしょうか?こちら(B4)なら折れると思いますか?
子供たちは,口々に予想を言うことでしょう。おそらく,縦と横の比率を直感的に把握して,「できる!」という予想が多いことと思います。
やって見せます。「やっぱり折れましたね。」

(2)折ると重なる不思議
「どうして,折れると思ったのですか?」
こう聞くと,「だって縦と横の長さの割合が…」などと,返ってくるでしょう。

そこで,ひとつ実験です。紙はA版でもB版でもいいのですが,裏と表が見えやすいように表と裏が色違いのものを使うといいと思います。

右のようにまず縦と横の辺を重ねるように折ります。
次に,斜めの辺(折り目)を下の横の辺に重ねるように折ります。そうして,ひっくり返すと…。
折り目と紙の角がぴったりと重なり,直角二等辺三角形がはみ出ます。

これを,別の版のコピー紙でもやります。やはりぴったりと重なります。これで,2つの紙が似たものであることが感じられます。

ついでに,折り込み広告やノートなども折ってみましょう。全部,ぴったりと重なる形(縦と横の比率)であることが分かります。

(3)お話〜A版とB版

コピー用紙の大きさの話をしましょう。コピー用紙の大きさには,AサイズとBサイズがあります。コピー機を見ると,A4とかB5とかいって用紙の大きさを選べるようになっているのを見た人もいるでしょう。これは,昭和4年に日本工業規格の前身である日本標準規格として公式にまとめられ,A列,B列共に昭和15年の改定で現在の大きさとなって日本工業規格に引き継がれ現在に至っています。

A4というのは,A0というサイズの紙を長辺方向に4回折畳んだ大きさ。5回折るとA5に,6回だとA6となります。元のA0サイズは841x1189mmです。このA0の面積は,ほぼ1平方メートルになります。これは偶然ではなく1平方メートルの大きさが先にあったのです。

B5というのは,B0というサイズの紙を長辺方向に5回折畳んだ大きさです。元の大きさは1030x1456mmです。この面積は1.5平方メートルになります。ではなぜ「A」と「B」があるのでしょうか?

Aサイズは生まれはドイツです。Bサイズの紙は,日本古来の美濃判という紙の大きさに由来しています。したがって,世界で通用するのはAサイズ。日本だけで通用するのはBサイズということになります。近頃は,日本も国際化の波に洗われています。それで,学校でもAサイズの紙が多くなってきているのですね。

(4)半分にして切ってみる
ところで,Aサイズの1平方メートルなら,縦も横も1mの正方形が一番わかりやすいですよね。なぜ,わざわざ中途半端な縦と横の比率で作ったのでしょう。また,日本古来のBサイズでも同じように折り目が重なるのは不思議ですね。まるで相談したようです。次にその秘密を考えてみましょう。
さっき,たとえばA0を1回畳むとA1,2回でA2,…と説明しましたね。では,ここに学校のコピー機に入っていた一番大きい用紙,A3がありますので,畳んで切ってみましょう。
1回畳んで切ります。これが?そう,A4ですね。もう一度畳んで切ります。そうA5です。さらに畳んで切ると?そう,A6です。A3からA6まで,黒板に貼ってみましょう。どうですか?

もう気がつきましたね。A3の紙をどんどん半分に切っていくと,いつも縦と横の比率が同じになるのです。

ひとつの頂点にそろえて,切った紙を並べてみましょう。
ほら! 半分に切っても,切っても同じ形になっていることが分かります。そして,そろえた反対側の頂点が,ずっとまっすぐに並びますね。きれいでしょう。

正方形では,どうなるでしょう?(やって見せる)
半分にすると,長方形,また半分で正方形と繰り返しますね。これまた,おもしろいですね。

このコピー用紙のA版,B版の秘密は,実は半分にしたときにも同じ比率になるところにあったのですね。それにしても,違う国に生まれた2つの規格が,同じ秘密をもっていたなんて,ちょっとステキだと思いませんか?

(4)比率を求める〜この先は,中学生以上が適切かもしれません。
コピー用紙の縦と横の比率を電卓で計算してみましょう。
たとえばA0は,841x1189mmですから,1189÷841で,1.413…
B0〜1456÷1030で,1.414…
B4なら,364÷257で,1.416…
A4なら,294÷210で,1.4。

どうですか?似ていませんか?この「1.4とちょっと」という数が「切っても切っても,同じ形」の秘密を握っているようです。

(5)正方形にも1.4が…

さっき,正方形を切ってしまうと形が変わってしまうということを勉強しましたね。ところが,実は正方形の中にもこの1.4が隠れています。どこか分かりますか?
対角線なのです。折り紙で,一辺を計ってみますよ。そして,それを1.4倍してみます。さあ,これが対角線と同じになるかな? なりますね。ぴったりです。

だから,(2)のように重なったのですね。

それと,おまけをひとつ。
面積が2平方メートルになる正方形の一辺ってどれくらいになるか,検討をつけてみましょう。一辺が1なら,面積も1。
一辺が2なら,面積は4。1.5なら?面積は2.25。近いですね。もしかしたら,1.4じゃないかって?
さっき出た,詳しい数字1.414でやってみますか。
1.414×1.414で,1.999316。そうなんです。こんなところにも,1.4の秘密があるんですね。

(6)ルート

さて,不思議な1.4ですが,実はこの数字には名前が付いています。かけると2になるという意味で,「ルート2」と言います。別名平方根ともいいます。初めまして,どうぞよろしく。
このルート2,実は円周率と同じで,どこまでもどこまでも続く数なのです。ピタゴラス,プラトンなどといった人たちも,かなりおもしろがっていろいろなことを調べています。
この数字,1.4 1 4 2 1 3 5 6を「一夜一夜に人見ごろ・・・」などと覚える方法もあります。

皆さんも,身の回りから不思議な数の仕組みを見つけてみませんか?

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