ワンダー!  7月号

平成13年6月30日(金) 第30号  漢字は読み書き分離で

◇昨日次のような漢字の学習を行いました。

・自分の名前を漢字で書く。
・友達の名前を漢字で読む。

2年生ならば,学級全員の子の名前を漢字で読めるくらいは,させたいのです。
 
◇まず,自分の名前を小さなカードに漢字で書かせました。(自分の名前を漢字で書けるように,わからない子はおうちの方に教えてもらってくるように言っておきました。)書けない子には,私が教えて,全員がカードを書けました。書いたカードは,ネームカード(平仮名で作ってあります)で黒板に貼ります。そして,これを見て,友達の名前を漢字でも読めるようにしました。
 約5分後,ネームカードを外し,漢字のカードをシャッフルし,「これは,だ〜れだ?」とクイズ大会。子供たち,大喜びで友達の名前をコールしていました。

◇日本の漢字教育のカリキュラムは,読み書き一体型です。戦前は読み書き分離で,「読本」には,低学年用にも漢字が多用されていました。しかし,戦後導入されたカリキュラムで,読み書き一体の扱いとなりました。これは,日本人の文盲率の低さや,教養程度の高さに驚いたGHQが,日本人の学力水準を下げようと「読本」系統の学習(修身もその一つでした)を禁止して,読み書き一体方式を教科書から関連するすべてのものに適用させるようにさせたという経緯があるようです。

◇そして,この施策は当初のねらい通りに浸透し,漢字の読みから派生し,日本人の学力水準を引き下げるのに大いに役立ちました。
 例えば,読書年齢というのがあります。これは,年代による読書の傾向を示す指標ですが,その中に「英雄崇拝時代」というのがあります。伝記などに,胸をワクワクさせて,伝記を読みふける時代なのですが,戦前の「英雄崇拝時代」は,平均して10〜12才頃だとされていたのが,戦後世代では15才前後。そして,その年代はどんどん後退して,今では「英雄崇拝時代」は,まったく消滅してしまいました。この通信をお読みの保護者の皆様は,この時代が消滅するかどうかの瀬戸際の世代の生まれではないでしょうか。
 もう一例を言いますと,新聞の政治面や社会面を読むようになる年代も,どんどん後退して,現代の20代,30代では新聞ではスポーツ面しか読まない方も増えているそうです。諸外国と比べて,この日本の教養レベルの落下は異常な事態です。外国の高校生と日本の高校生が交流すると,政治の話題等でまったく噛み合わず,失笑を買うこともしばしばだそうです。当時のGHQは,本当に先を見越して効果的な手を打ったものです。(感心してどうする。)

◇お隣の中国の漢字教育について知る機会がありました。中国は,読み書き分離だそうです。1年生の1学期で,どれくらいの漢字を読ませると思いますか?
 もちろん中国は漢字の国(簡略字体ではありますが)ですので,単純に日本と比較するわけにはいきませんが,新たに読み方を教える漢字が,教科書と読本で1500文字程度出てくるそうです。1年生1学期だけで日本の子の6年間で習う漢字よりも多くの漢字に触れているわけですね。
 日本では,読み書きを一体化する都合上,20字以内です。中国の場合は,地方による格差もかなりあるようですが,上海や北京などでは,とにかく良く読ませているそうです。

◇そんな歴史的な経緯や国際的な観点から,私は漢字は読み書きを分離して行うべきだと考えています。年度始めの頃から,板書するときも分かりやすい漢字は,板書するようにしています。子供たちからは「先生,習ってないよ!」という指摘が出ましたが,その度に「うん,書き方は習ってないね。でも読めるでしょ?読んでごらん。」とやっています。この頃では,かなりの未習漢字も読めるようになりました。

◇もともと漢字は,象形文字が中心ですので,覚え始めると簡単なものです。幼児を対象とした実験では,一番覚えやすいのが漢字,次が平仮名,次がローマ字,最後が片仮名なのだそうです。
 新聞や大人向けの本にも,3年生くらいから親しめるように,積極的に漢字を読ませていきたいと考えています。

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おまけ
・「タテとヨコ」について,数名の方から感想や質問をいただきました。カタイ文章にお付き合いいただきうれしいです。中に「甘父干母」とは?というお尋ねがありました。確か,多湖輝氏の著作にあった,現代の保護者の傾向のことだと記憶しています。現代では,父親は子供に甘く,母親は小言が多く干渉ばかりするという意味で,戦前の「貫父寛母」(別の字だったかな?記憶に自信がありません)との比較で論じられていたと思います。
・月曜日の全校朝会に,初代校長の伊藤良先生が見えて,子供たちに開校当時の話をしてくださることになっています。もし,ご都合がつきましたら子供たちと一緒にお話を聞きませんか?
・来週火曜日のCタイム(午後1:40〜2:40)は,生活科の町探検の発表会を開きます。2組と合同です。場所は,多目的室です。こちらも,ご都合がつきましたら,どうぞご自由にご参観ください。観客がいると,子供たちも張り切りますので。


平成13年7月13日(金) 第31号  いろいろあって,大成功!新さっぽろ町探検(1)

◇新さっぽろでの町探検,いろいろありました。グループからはぐれてしまった子。サイフを落としてしまった子。勝手に行動して,他のメンバーに怒られた子。「○○君が言うことを聞いてくれない」と,泣き出した子…。
 順調にいかないことが多くて,大成功だったと思っています。

◇もう20年も前(その頃は私だって若かったのです)に発行していた学級通信の名前を「でこぼこ」といいました。その中に,次のように書きました。

舗装道路をスイスイと進むより,でこぼこした道をでこぼこと歩かせたい。
問題を起こさないで順調に過ごす子より,でこぼこと乗り越える子の方がいい。
教師も,でこぼこしていた方がいい(と,認めてくださいね)。

 行き届いた配慮の元での,トラブルのない,順調な活動の中で得られるものより,いろいろあった方が,教育としては大成功なのだと思うのです。トラブルの中でこそ,子供はいろいろと力を発揮します。若い頃からの想いです。

◇改札機にウィズユーカードを通すのが初めての子がたくさんでした。たっぷり時間がかかりました。たっぷり時間をかけてよいのです。他の子がするのを真剣に見ていた子も,自分の番がくると,そばについていた私の方をちらりと不安そうに見ます。そういうとき,私はどうするか。(おうちの方なら,どうなさいますか?ちょっと考えてみてください。)
 私は,多くの場合次のように突き放しました。
「さっさと入れろ!」
 ひどい,と思われますか? 私は,なかなかよい「支援」だと思っています。そこで親切に「それでいいんだよ。」とか,「ほらほら,こうでしょ。」などと教えていては,子供は大人への依存心をぬぐいさることはできません。
 ドキドキで改札機を通した子供たちは,みなパッと顔を明るくして通り抜けていきます。その明るさの0.何%くらいには,「先生の助けなしに,自分だけで入れられた」という自負心があるように思っています。

◇ここで,S君が半べそをかきます。サイフを落としてしまったのです。全体の動きがありますので,「心配するな。先生がお金をかしてあげるから。帰りにまた探してみよう。」ということにしました。

◇新さっぽろについた子供たち。地下鉄を降りてホームにたたずんでいます。車内を点検して最後に降りた3名の教師も,ホームにたたずみます。「こっちだよ。」などとリードはしません。子供たちは「新さっぽろで降りる」ということは調べてありましたが,どっちの改札口に向かえばいいのかまでは,調べていないのです。私たちも,そこまでくわしく調べさせず,あとは現場主義でいいやと思っていました。たたずむ子供たちは,それとなく私たちの顔を見ています。
 ここでの私たちの「支援」は,「あさっての方を見ている」です。ここでも,子供の依存心を断ちきります。あきらめたあるグループが北改札口(科学館へ向かうには,遠回りのルートです)に向かって動き始めました。他のグループもその後をゾロゾロと…。
 ここで,どうなるかと私一人だけは,「じゃあ,先生はこっちから行こうっと。」と南改札口に向かいましたが,だ〜れもついて来ませんでした。よしよし。

◇コンコースに出ました。遠回りした子供たちが走ってきます。そして,看板に「サンピアザ」を見つけると,「あっ,こっちだ!」と階段を上っていきます。科学館や水族館へはもっと先の階段を上らなくてはいけません。事前調査では半数以上の子が家族で科学館や水族館に行っているはずなのですが,やはり大人の後をついていっているので,分かっていないのですね。まあ,またまた遠回りにはなるでしょうが,何とかつくだろうと思いましたので,ここでも声はかけません。さて,子供たちはどうするのかと,私も走ってその階段を上り,追いかけました。
 その階段を上って地上に出ると,正面に見えるのは「JR新さっぽろ駅」です。
「水族館,ない…」呆然と立ちつくす子供たち。
 と,そのとき…。

◇「水族館は,あっち側だよ〜。」と,教えてくださった女の方。その指さす方向に,ダーッと走り出す子供たち。ここは,すかさず指導です。
「あら,教えていただいたら何て言うの!」
 子供たち,走りながら「ありがとうございましたぁ!」
 周りを通る人たちが笑っていました。朝のひととき,ちょっと楽しい風景を提供できたかな?

◇自分たちのたてた予定に従って,子供たちはそれぞれ水族館,科学館に吸い込まれていきました。(続く)
 


平成13年7月13日(金) 第32号  いろいろあって,大成功!新さっぽろ町探検(2)

◇水族館や科学館の受け付けも,教師がまとめて券を受け取って配布するのでなく,子供たちがグループ毎にカウンターに行って受け取る方式にしていただきました。事前の下見の際に,活動のねらいを告げて「できれば」とお願いしたところ,水族館も科学館も,快く了承してくださいました。(業務の効率化から言えば,手間がかかることなのですが,感謝です。)

◇事前に,何と言ってお願いするのかを確認してありましたが,自分たちだけでカウンターの前に立つと,どう言えばよいか「???」となってしまうグループがほとんどで,私がそうしたグループをちょっと離れたところに呼んで,もう一度練習。こうしたところは指導のしどころです。
 子供たちは,「おはようございます。北野平小学校です。6人分お願いします。」などと言って,券を受け取っていました。

◇それぞれの館の中での様子は,残念ながら遊撃隊の私は見ることはできませんでしたが,出てくる子供たちの顔を見ていると,楽しんでいたようです。時間配分も,まずまず予定通りでした。
 と,そのとき…。私の携帯がなりました。R君からです。

◇「あのねえ…,○○さんと○○さんがいなくなっちゃったの。」
 「そうか,よし今行くよ。で,どこにいるの?」
 「科学館の外。」
 「うん,外ね…。外ォ?」
 確か科学館の前の広場には公衆電話などないはず。急いで外に出ると,携帯電話を耳に当てているR君が見えました。近づきながら話します。
 「あれっ,R,携帯持ってきていたのか?」
 「ううん。」
 ここで,携帯を切って,R君はそばにいた若い男性に「ハイ」と携帯を渡しました…。
 あっ,通りがかりの方に借りたのか!「すっ,スミマセン〜ン!」と頭を下げる私。当のR君は,ニコニコしています。聞けば,○○さんたちがいなくなったので,困ったR君達が通りかかった方に「携帯持っている?」と聞いて,貸していただいたのだそうです。
その方は,ニコニコ笑って行ってしまいましたが,いやはや何ともたくましいものです。
 その後○○さんたちを探すために,約30分走り回り,やっと科学館の中で見つけました。汗びっしょりになって,「みんなが探しているよ!」と告げますと,それまで楽しげにゆったりと見学していた○○さんたちも,コトの重大さを認識したようで,ものも言わずにみんなの元に駆け出していきました。
 こうやって,全体が見えるようになっていくのでしょう。

◇帰りの時間になりました。予定では帰りの時間の集合も,グループ毎に違っていたはずなのですが,他のグループを見て,不安になったのでしょうか全グループが集合してしまいました。そこで,全グループで移動しましたが,大人用のウィズユーカードの子たちは,券売機で子供用の乗り継ぎ券を買わなくてはなりませんので,私が引率してそちらへ。ということで,結果的に2本の地下鉄に分かれて乗ることになりました。

◇さて,南郷18丁目でサイフを落としたS君ですが,駅の事務室に私と一緒に行ってみましたら,何と届いていたのです。世の中,まだまだ捨てたものではないですね。受け取りの処理に手間取りましたが,無事に受け取ってめでたく帰校です。
 
◇帰るとすぐに給食でした。子供たち,口々に見てきたこと,困ったことをにぎやかに話しながら,ホッとした表情で食べていましたよ。

◇あっ,実は今回の探検には強力なサポート部隊がついていました。4名の保護者の皆さんです。さりげなく,地下鉄駅や科学館横の公園から子供たちの様子を見守ってくださいました。ありがとうございました。 


平成13年7月16日(月) 第33号  音楽鑑賞について

◇私は,自分のホームページに雑多な情報を掲載していますが,その中に昨年度の6年生と取り組んだ「ベートーベン物語」というのがあります。
 これは,ベートーベンの伝記と代表曲をドッキングさせたもので,私のオリジナルの教材開発です。これまで,数名の方からeメールで感想をいただいていましたが,先週の金曜日,また次のようなメールをいただきました。(ご本人の許可を得て,転載します。)

はじめまして。奈々絵・グリーンといいます。
私は今、アメリカのフロリダ州にある大学で、音楽の勉強をしています。
将来は、大学院を出て(出来ればのはなしです!)アメリカの大学で教師をしたいと思っています。(中略)

その、生徒の興味を充分にそそる内容には、子供の心理を知り尽くしている先生ならではの素晴らしい技術だと思いました。
私は、数年前から、日本の神奈川県から、留学生として、大学に通い、音楽教養を専攻に勉強しています。(今は、結婚してここに移住しました。)
故に常々、日本の教育法などには、とても興味がありました。
いつも、自分が学校に通っていたころの、授業風景などを思い浮かべながら、自分が教えることになるときは、どうすればいいのだろうか?とよく考えます。
この、ベートーベンの授業は、本当に素晴らしいと思います。

音楽は、本来楽しむものです。先生に無理矢理やらされるものではありません。
私は今、ピアノの個人レッスンをしていますが、一番私が教えたいことは音楽が、どんなに素晴らしくて、楽しいものかということです。年齢は関係ありません。
小さな子供から、お年寄りまで、音楽を聴いて感動する気持ちは一緒です。
ベートーベンの授業の生徒さんの感想を拝見して、ベートーベンの苦悩、勇気、感動、悲しみ・・・全てこの授業を通して生徒さんに通じているのでとても感動しました。
私は今27歳ですが、子供のころはとても感受性が高く、ベートーベン、ショパンの音楽を聴いて涙したり、伝記を読んで感動したりしました。その時の感動は、今でもはっきりと覚えているくらいの衝撃でした。こういった経験は、人に押されて出来るものではありません。 人に作られた環境で、初めて経験できるのだと思います。ですから、私はそんな環境の中で育ててくれた両親に多大な感謝をしています。今の子供は、家でも、学校でも、どこでも、そういう環境に恵まれていないと思います。
それは、日本だけではなく、アメリカでも同じです。
これから将来、教える立場に立つとき、そういった環境を生徒に作ってあげたいと思っています。
先生に教わった生徒さんは、本当に幸せだと思います。
ホームページにも書いていらっしゃいましたが、別に音楽的に影響を受けなかったとしても、作曲かの哲学や人生についてでも、少しでも学べれば、それが生徒の将来につながると思います。


◇このメールに,私は以下のような返事を書きました。

奈々絵さん,うれしいメールをありがとうございました。
「ベートーベン物語」には,何人かの方から感想をいただきましたが,専門の方から,そして海外からの感想は初めてです。(中略)

「日本の教育法」として一般的ではないと思いますが,音楽鑑賞の方法として,私は次の方法を多用しています。
・題名や作曲者名を伏せて聴かせ,自由に身体表現や絵,詩などに感じたことを表現する。(主に低,中学年)
・例えばペールギュントの「朝」を聴かせるのなら,夜明けの美しい光景を写真やビデオで見せて,「朝のこの光景を音楽で表すなら,どんな感じ?」と投げかけ,まず子供たちに表現活動をさせ,お互いに聴きあった後でペールギュントを聴かせる。子供たちは,素直に作曲家の感受性や表現力に脱帽し,音楽に憧れを感じるようになる。(主に高学年)
・「ベートーベン物語」のように,ストーリーに載せて語りと音楽で構成する。これ は,チャイコフスキー「白鳥の湖」などでもやったことがあります。(中略)
私が,先に述べたような方法を使うのも,題名や作曲者名を伏せて聴くことや,自分のイメージ表現と比べて聴くこと,ストーリーで聴くことが「心で聴くこと」につながると考えるからです。(中略)
教科書の解説を読ませ,「3つの主題が繰り返されるのを聴き取ろう」などとやっては,音楽に触れる体験を阻害することはあっても,音楽に心を動かされる体験を与えることなどできないと思うのです。
また,作曲者を「偉い人」,鑑賞曲を「立派な芸術」として与えたくないとも思います。
音楽と子供の関係を「上下関係」の図式で作るのでなく,音楽にはまず親しみをもって,子供とフラットな関係で感じてほしいのです。
感動は与えられません。でも感動できる条件整備は,できます。それが,私たちの仕事だと思います。(中略)
私もまだまだです。少しでも子供にとって価値ある教師になれるように,少しずつでも進んでいきたいと思います。(後略)

◇この間の参観日の折りに,教室後ろの掲示をご覧いただきました。あれは,ベートーベンの「トルコ行進曲」の鑑賞の記録で,簡単に「題名を伏せて聴かせ,自由に絵や言葉で表現しました」とだけご紹介しましたが,実はここに述べたような考えのもと,実施したものでした。タイムリーなメールでしたので,ご紹介しながら,あの掲示の補足説明に充てさせていただきました。日曜日には,折り返しまたメールが来て,ひとしきり音楽談義に花が咲きました。うれしいやりとりでした。


平成13年7月19日(木) 第34号  夏休みは…

 夏休みが目前です。夏休みに関することをあれこれ書いてみます。

◇夏休みは,規則正しくない生活も
私自身,小学生の頃から「夏休みは規則正しく」と教えられてきました。規則正しく,は大切なことだと思います。夏バテしてしまったり,夜更かし・朝寝坊が習慣化してしまったりすると,健康に悪いばかりでなく,家族関係や2学期の学校生活にも良くない影響を与えますからね。
 しかし,一方で「規則正しくない生活もさせたい」と思うのです。
・親戚の家に行って,話に花が咲いてつい夜更かしをしてしまった。
・おもしろい本や映画に夢中になって,夜更かししてしまった。
・キャンプに出かけ,超早起きをして朝日が昇るのを見守った。など。
こういう経験もさせたいと思います。さあ,今年の夏休みはいつごろ「規則正しくない」時間を予定しますか?

◇地域に飛び出せ
 普段は,自宅と学校との往復に多くの時間を割かれがちな日々ですね。休みこそ,地域に飛び出して活動するチャンスです。私たちは地域に住んでいるのですが,その自覚が薄くなりがちです。子供たちの内面の,そして行動の世界を広げるためにも,また思春期を健全に乗り切る上でも,地域とのかかわりを強めておくことが大切です。
 今,分かっている北野平小校区内の地域行事を挙げてみます。

・ラジオ体操 6つの公園で毎朝開催されるそうです。私も,幾度か回ってみます。
・ふれあい祭り
 7月22日(日),ふれあい橋。午後1時半〜 私も参加します。
・北野の四季夏祭り
 8月4日(土),昨日子供たちが訪問した老人ホームの駐車場にて,露店と盆踊りが開催されます。午後1時半から4時まで。浴衣がある人は着てきてね。私も参加します。
・盆踊り
 8月14(火),15(水)日5時から。ラルズ駐車場で。どっちかの日,私も参加します。
・プール開放 別紙の要領です。北野小まで安全に行かせたいものですね。

 校区外でも様々なイベントが開催されますね。生活科で経験した公共機関の利用も繰り返し体験することでまた自信に結びつきます。どうか,地域に飛び出して多様な経験を積ませてやって下さい。

◇心に残る記録を
 子供たちに,オススメの記録の仕方,ということで右のようなスケッチブックを1冊用意するといいよ,と話しました。ここに,夏休みの思い出をどんどん入れていきます。どこかに出かける時も,丈夫ですから持っていけます。
・どこかに入場した時の半券
・お出かけした先で食べた駅弁の包み
・がんばって作った料理の完成写真
・庭で観察したミニトマトなどの絵
・押し花や押し葉
・新聞の切り抜き
など,スクラップブック,スケッチ帳,アルバムなどのすべての機能をオールインワンにして,どんどん入れていくのです。夏休みが終わるのと同時に,この記録も終了。楽ちんです。そして,ずっと残ります。
 ただし,条件として次の点は欠かせません。
・日付と場所,タイトルを記入すること
・描いたり貼ったりしたものの説明と,感想を書き入れること

◇国語と算数の家庭学習は,見開き2ページで
 家庭学習は,できるだけ毎日少しずつでもやりたいもの。しかし,「規則正しくない日」もあるでしょうから,7〜8割程度の日できればOKではないでしょうか。夏休みは25日間ですから,20日分ですね。
 マス目ノートを1冊用意してあげます。(文字を小さく書けるお子さんなら,大学ノートスタイルでもよろしいです。)そこに,毎日見開き2ページ分の取り組みをします。
・漢字〜ただ「原原…」と書くよりも「野原,原っぱ,すが原くん,…」のように熟語を 書いたり,「きのう,野原で原せん手を見かけたので,サインしてもらった。」などの ように短文づくりをする方が,数倍効率の良い学習となります。
・計算〜教科書の問題配列に合わせて,「スラスラ解けるようになったら次のステップ」 の原則で少しずつやっていきます。クリアしたら,教科書にシールを貼ってあげるなど ご自由に。
・具体的な操作〜懇談でもお話しした,算数学習のポイントです。定規で家中のいろいろ な場所を計る。たくさんのものの数の検討を付けて,実際に数える。など,量感覚を養 う活動を。
・ノートの終わりには,3文程度のメッセージを。おうちの方向け,あるいは私向けでも かまいません。低学年の学習は,家族や担任との人間関係の中で育まれます。単に国語 や算数の学習の跡があるより,それをやってみてどう思ったのか,その学習の後にどん な楽しいことをしたのか,など,心の部分もノートにぜひ残していきたいものです。

 それと,学級の中で聞いてみましたら,半数以上の子が朝の涼しいうちに学習するということですので,原則として「お互い10時までは電話をかけたりチャイムを鳴らしたりしないようにしよう」と呼びかけました。ラジオ体操,朝食,お手伝い,家庭学習というめりはりのある動きが,朝のうちにリズミカルにできればいいですね。ただし,夜に家族みんなで学習するというようなご家庭もあることと思います。決して強制ではありません。自由研究をするもしないも自由なように,すべては各家庭におまかせします。


平成13年7月21日(土) 第34号 老人ホーム訪問の記(第1回目・1)

◇16日(月),我が学級に一通のお手紙が届きました。

2年1くみのみなさんへ

 みなさん,こんにちは。そしてはじめまして。

 わたしは,北野1条2丁目の山田電気の近くにある,ろうじんホーム「北野のしき」につとめています,山森といいます。
 たんにんのよこふじ先生から,みなさんが町たんけんに出かけて,ずいぶんいろいろなことをしらべたことをお聞きしました。新さっぽろにも行ったんですってね。すごいね。
 さて,ろうじんホーム「北野のしき」には,たくさんのお年よりがすんでいます。そして,まい日いろいろなことをしてくらしているのですが,たまにみなさんのような子供たちにきてもらえたらうれしいなあと思っています。こんどの町たんけんのとちゅうにでも,ちょっとよってあそんでいきませんか?
 よこふじ先生とみなさんでそうだんしてみてください。 では,おへんじを楽しみにまっています。

2年2くみのみなさんへ
北野のしき  山森けんいち

 手紙を読んで,子供たちに「行ってみる?」と聞きますと,「うん,行く行く!」「すぐに行く!」とノリの良い反応。ということで,18日(水),行ってきました。その様子をご紹介します。

◇朝,教室はけっこう興奮気味。「今日,老人ホームに行くんでしょ?」「えっ,ウソ!明日じゃないの?」「ね,何人くらいお年よりいるの?」など,私に話しかけてきたり,子供同士でワイワイとやっています。新さっぽろに行ったときとはまたひと味違った興奮です。
 中休みから,出ました。道を歩きながらの会話です。
A君「ね,バスに乗るの?」
Bさん「乗るわけないじゃん。山田電気の近くって書いてあったしょ。」
A君「えっ,山田電気って遠いしょ。」
C君「そこにあるしょ!」
A君「あれ? あれはベスト電器でしょ!」
みんな「違〜う!」
A君「あ,あれが山田電気か。知らなかった!」
 近くても,かかわりがなければ,よくは知らないということですね。もしかしたら新さっぽろの方が子供たちにとって「身近」になってしまっているかもしれません。
 
◇老人ホーム「北野の四季」(正式名称は「老人保健施設・北野の四季」といいます)に着きました。さっそく会議室に通していただき,施設の紹介や注意事項をお聞きします。なかなかよく集中して聞いていましたよ。そして,2階のホールにいる入所者の皆さんのところへ。ざっと15名ほどの方が待ってらっしゃいました。車椅子の方がほとんどです。子供たちの動きが一瞬止まりました。出会いの緊張,そして見慣れない車いすへのとまどい。しかし,職員の方の誘導で,子供たちその方たちと一緒にペアを作って,エレベーターで1階の大ホールに移動です。ペアを作って,車いすを押したり,手を引いたりし始めると,子供たちの表情がゆるんでいくのが分かりました。
 
◇大ホールでは,三々五々子供たちとお年寄りの方達が混じってテーブルに付くようにしてくださいました。しかし,なかなかお年寄りのそばに近づいていけない子,また隣に腰を下ろしたものの,何をすればよいか分からず,固まっている子がほとんどです。
 さて,このとき私はどのようにしたでしょうか?

1.全体に向かって大きな声で「さあ,まず自己紹介をしてごらん」と呼びかけた。
2.あちこち回りながらお年寄りに「話しかけてやってください」と頼んだ。
3.「さっさと活動を始めんか!」と叱った。
4.何もせず,黙っていた。

◇上の選択肢にあるような教師の行動を「支援」と呼びます。どれも,あり得る支援ですが,一番マズイ支援は「2」でしょう。その場は,一番スムーズにいくかもしれませんが,子供が育たない支援です。子供をお客様扱いするものです。
 「1」は,もっとも多く目にする支援です。これも,スムーズな入りで,子供とお年寄りの距離を縮めるのに有効に思えます。また,「3」もあり得る支援ですが,この場合はそぐわないでしょう。4つの中で最低ですね。
 で,今回私がとったのは(というより最初からそうしようと思っていたのは),「4」です。とまどいや迷いは,生活科における子供の問題解決の出発点です。そこに十分に直面させることこそが,その後の活動や気付きを押し進めるバネの働きをするのです。そこを取り上げるような,あるいは横から邪魔するような「1〜3」のような支援は,すべきではないと思うのです。                        (つづく)


平成13年7月21日(土) 第35号 老人ホーム訪問の記(第1回目・2)

◇生活科の活動をいろいろなところで見る機会があり,その際発見したことに「子供の活動には節目(変節点)がある」ということがあります。例えば,60分間の一連の活動をする場合でも,多くの場合15分くらいで活動の内容や質が変化します。
 今回も,ホールに降りた時点から約15分後には,立っている子は一人もいなくなり,全員がお年寄りとかかわり始めていました。
 それは,美しい光景でした。心と心が出会い,通い合うステキな時間でした。

◇子供たちは,それぞれノートを持っていって,お年寄りのお名前をメモしたり,折り紙を持っていって一緒に折ったりなど,工夫していました。モノは,時として人と人のふれ合いを邪魔することもありますが,今回は成功していたようです。
 温かくやわらかな時間でした。時折,あちこちから小さな笑い声が聞こえたり,目を丸くした子供たちが私の所に「先生,○○さん,戦争に行ったことあるんだって!」などと報告しにくることもありましたが,時は静かに過ぎていきました。
◇学校に帰る時間が近づいた頃,職員の方が「いつもしているラジオ体操を,今日は小学生の皆さんと一緒にやりましょう」と声をかけてくださいました。すると,子供たちは誰に指示されるでもなく,ホールに広がって元気に体操を始めました。お年寄りの方達もほとんどが椅子や車いすに座ったままでしたが,楽しそうに体操していました。
 ジャンプする運動のとき,座ったままではできませんが,子供たちが元気にピョンピョンとジャンプするのを見て,お年寄りの方達は手をたたき,目に涙を浮かべて喜んでくださいました。

◇学校に帰る道で,子供たちから「先生,また来ようね!」「うん,絶対来ようね。だって,Yね,おばあちゃんとまた来るって約束してきたんだもの。」などの声がずっと続きました。

◇Cタイムに,記録のカードを書きました。絵で描いた子も多かったのですが,作文の子もいましたので,少し紹介します。(すべて一部抜粋です。)
■れなとめいちゃんでおじいちゃんをおしました。ほかの人も名前をききました。れなはすごくたのしかったです。おじいちゃんもよろこんでくれました。(藤)
■まほとゆい子ちゃんで車いすをおしました。ふたりで「おしますよー。」と言っておしました。(本)
■おばあちゃんと車いすでおしてあげて「きみ,2年生」ってきかれて,「うん」と言いました。そして「ありがとう」ってゆってくれました。(矢)
■おのちからさんは,ちょっと耳がわるかったのかも。でもかいわができてよかったです。わたしはおのちからさんにおりがみで作ったつるをあげました。(加)
■ちからがある人! っていわれたから手をあげた。それで下の絵にのってるおばあちゃんをはこんであげた。(大)
■めがねをかけているやさしそうなおじいさんにこう言われました。「ここのいすにすわりなさい」と言ってくれました。それでぼくは声をかけてもらってとってもうれしかったです。こんどいくときはもっとなかよくなりたいです。(板)
■おじいちゃん,おばあちゃんに学校の話をしました。校歌(1ばんだけ)をうたいました。すごくよろこんでくれました。つぎにおりがみでつるを作りました。楽しかったし,うれしかったし,また行きたいな。(新)
■ぼくはおばあちゃんといっぱい話しました。それから名前もおしえてくれました。ぼくのえもかいてくれてなんさいかもおしえてくれて,83さいです。(近)
■おばあちゃんは「あなたたちのかおを見るとね」とないてしまいました。(服)

◇子供たちとのステキな時間を作ってくださった北野の四季の職員の皆様にも感謝したいと思います。(お時間があれば,8月4日の午後,夏祭りにぜひおいでください。)

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おまけ
・とうとう1学期が終了しました。事故のない,楽しい休みとなりますこ
とをお祈りしております。何かありましたら,いつでもご連絡ください。
休み中は,半分くらいは学校に出ています。あとは,ほとんど自宅にいま
す。(レポートの山に埋もれています。)では,また2学期に!

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