99年度の総合的な学習実践 「やってみよう,ボランティア」
はじめに
本校(札幌市立北野平小学校・12学級・児童数350名)では,99年度2学期から総合の実践に取り組み始めた。クラブ活動の発展として毎週木曜日の放課後に60分間,4〜6年生を対象に行うものである。活動の名称は「おもしろ発見タイム」とした。
この活動のため,98年度には総合の概略についての研修会を開催し,全校の児童と保護者を対象に実態アンケートを実施した。また,99年度1学期は担任が「自分だったらどんな活動をやってみたいか」を準備し,提案するなどの準備を重ねてきた。推進役には「総合特別委員会」(7名)があたった。
私は,99年度転勤したばかりだったので,この取り組みに追いつく格好で準備と実践に取りかかった。
「おもしろ発見タイム」とは?〜説明会
まず,4〜6年生の児童を体育館に集め,「おもしろ発見タイム」のねらいや概略を説明した。その後,教師12名が「私は,みなさんとこんな活動をしたいと思います。」と,活動のメニューを示した。
その内容は,
・ジュースをつくろう
・リサイクル紙工作をしよう
・合体スポーツをつくろう
・ペットボトルでリサイクル
・厚別川を調べよう
・熱気球,ソーラーバルーンを上げよう
・厚別川でヤマベを釣ろう
・ニュース番組を作ろう
・やってみよう,ボランティア
・北野の昔を調べよう
・映画をつくろう
といったものである。これらのメニューは,あらかじめイラストなどを入れてプリントにしておき,概略の説明後,会場で配布した。それぞれの教師が,概略を3分以内で説明した。その後,質問を受け付け,その場で自分の希望する活動に印を付けさせ,回収した。その際は,友達同士の相談はしないようにさせた。人で選ぶのではなく,あくまでも自分の興味や関心で選ぶことを強調してのことである。
回収したものを,即日集計したところ,「北野の昔を調べよう」に関しては,希望者がいなかったので成立できなかったが,他はそれぞれ希望者がいたので,成立した。人数は,30名を超えるところもあれば3名というところもあったが,そのまま調整せずにスタートすることになった。(当初からそのように申し合わせてあった。)
私は,「やってみよう,ボランティア」という活動を構想していた。(以下は,7月の職員会議に提出した構想案)
やってみよう,ボランティア! 1 オリエンテーション 2 車椅子で校舎内を歩いてみよう (車椅子で生活する人の様子をビデオで視聴後,実際に車椅子で歩いてみる。近隣の学校,または社会福祉センターから車椅子 を借りる〜4まで) 3 車椅子で学校の周りを歩いてみよう (長い距離を移動してみる。坂道体験) 4 車椅子で店を利用してみよう (道路の横断,買い物を通して車椅子生活者の視線の高さを実感する。店に協力依頼) 5 北野は車椅子の人が歩きやすい学校,町だろうか (体験活動をまとめ,自分たちでできる工夫,行政に求めることなどについて話し合う。) 6 車椅子の人も歩きやすい学校,町にしよう (話し合ったことを作文や意見書にまとめ,掲示する) 7 アイマスクで学校の中を歩いてみよう 8 盲導犬と歩こう(1) (ユーザーの方の話を聞こう) 9 盲導犬と歩こう(2) (盲導犬と体験歩行をしよう) 10 盲導犬と歩こう(3) (盲導犬育成のシステムは,どうなっているのだろう。繁殖犬ウォーカー,パピーウォーカーの話を聞こう) 11 目が不自由な方のため,私たちができることは何だろう(話し合い) 12 ,13 話し合ったことを実行してみよう (点字ペンで激励の手紙を書く。「盲導犬同伴可」ステッカーを校区の店に配布する。 簡単な手助けの方法をポスターで知らせる。 など) 14 体の不自由な人にも優しい未来の北野平をつくろう (夢を作文や絵に表現し,掲示する) |
私の呼びかけは,次のようなものであった。
「みなさんは,学校の行き帰りやどこかにお出かけしたときに車椅子に乗っている人や,手話で話をしている人を見たことはありませんか?(子供たち多数うなずく)実は,去年の冬,先生は大失敗をしてしまいました。車椅子に乗っている人が,雪の積もった歩道を進んでいました。手が雪で濡れて『冷たいだろうな。大変だろうな』と思ったので,『押しましょうか?』と声をかけて押してあげたんです。ところが,しばらく歩いていると,その方から『もういいです。』って言われちゃいました。どうやら,がたがたしているところとか,スピードとかをよく考えないで押していたので,その方にとっては自分で運転する方がよかったらしいのです。先生は,車椅子の押し方ひとつにしても,ちゃんと相手の立場に立って考えることって難しいなあと思いました。そこで,もっともっといろんな人の役に立つことの勉強をしたいと思います。人の役に立ついろんな方法を勉強したい人は,いっしょにやってみませんか?」
この活動には,30名の子供たちが集まった。
学習計画を立てる
説明会の翌週,30名の子供たちと学習計画を立てた。まず,一人一人に自己紹介をしてもらう。その際,この活動を選んだのはどうしてか,この活動でどんなことをしてみたいのかを話してもらうようにした。子供たちのニーズと活動のイメージをつかみ,活動をより適切なものにしたいからである。
「僕は,テレビで盲導犬のドラマを見て,賢さと優しさに感動しました。実際の盲導犬についてくわしく勉強したいと思ったのでこの活動を選びました。」
「私のおばあちゃんは,今痴呆で老人ホームにいます。たまにお見舞いに行くんだけど,そういうお年寄りがたくさんいるので,私にできることはどんなことなのかを知りたくて来ました。」
「習い事に行っているとき,私と同じくらいの年の人で,手話で話をしている人をよく見ます。私も,手話で話せたらなと思っています。」
など,子供たちのニーズもイメージもかなり広がりがあった。
そこで,子供たちから出された活動を板書していった。次のようなものが出された。
・点字を読み書きする
・手話で話す
・手話の歌を覚える
・車椅子体験
・お年寄りに車椅子を押して町を散歩させてあげる
・盲導犬について調べる
・障害をもった子供の施設を訪問して一緒に遊ぶ
・本を朗読して,テープに録音して耳の不自由な人にプレゼントする
こうした活動のアイディアが出そろったところで,私の方から「あと12回の学習で,自分のやりたいことを1つ,2つ,3つくらい決めて,それぞれグループで進めますか? それとも,みんなでちょっとずつ一斉に取り組んでいきますか?」と聞いてみた。すると,子供たちのほとんど全員が「幅広く,みんなで」という希望だった。
そこで,大まかな計画として次のような計画を立てた。
1.手話で自己紹介や挨拶,歌を覚えよう(2時間)
2.点字で自分の名前や簡単な手紙を書いてみよう(3時間)
3.盲導犬について調べよう(3時間)
4.車椅子体験をしよう(2時間)
5.校区の老人ホームを訪問しよう(1時間)
6.学んだことの発表会をしよう(1時間)
そして,「来週,さっそく手話の学習をするので,もし手話の本などがあれば持ってきてください。」と話しておいた。すると,もうその日の放課後,さっそく図書室にある本を探して持ってきた子が5人も6人もいて,びっくりさせられた。また,次の日からいろいろな子が,「こんな本があった。」と私の元へ届けてくれたり,「先生,これ分かる?」と休み時間に手話を見せに来たり来るようになっていた。代表的な手話を紙に描いて持ってきた子もいた。結局,次の週まで,ほとんどの子が何らかの自主的な下調べをしてきたのだった。本当に意欲的な子供たちだと感動させられた。
手話を学ぶ(2時間)
もうすでに自主的に手話の学習を進めていた子供たちだったので,それを紹介しあい,さらに広げるという活動にした。手話の歌が人気があり,「サザエさん」「大きな栗の木の下で」「翼をください」など,何度も何度も練習していた。
「私の名前は,〜です。北野平小学校の5年生です。お友達になりましょう。どうぞよろしくお願いします。」程度は,全員できるようになっていた。意欲と活動のイメージができていれば,子供はすばらしい力を発揮するものだと改めて感じさせられた。
子供たちの一言感想
「僕は,手話を覚える前は,あいうえおを全部覚えて,例えば『おさなかかかえたドラ猫』は,『お』『さ』『か』『な』って一つずつやるんだと思っていました。でも,手を魚みたいにゆらゆらするだけで,いいということが分かって,手話って本当に面白いなと思いました。」
「もう自己紹介はばっちりです。本当に通じるか,耳の聞こえない人の前でやってみたい。でも,相手の人に通じても,相手の人の手話はまだわからないので,失礼かなと思いました。」
点字を学ぶ(3時間)
点字についても,身の回りにある点字を調べてごらんと投げかけておくと,ビールの空き缶やお札のはしの点字を調べてきた子がたくさんいた。点字は,6つの点ですべての音を表す。しかも,母音と子音の組み合わせで覚えやすくできている。その辺りの基本的な知識と50音表を,私の方で印刷して配布した。子供たちの集めてきた絵本などでは,そうした原理的なものは扱っていなかったからである。また,子供たちが点字を書けるように,ワープロソフトで6点ずつ○を並べたシートを配布した。
子供たちは,50音表とシートを使って,自分の名前や学校の名前などを調べていった。ビールの空き缶に打ってある点字は,「ビール」と書いてあることが分かった。「そうか,目の見えない人は,開けるまでジュースかビールか分からないものね。」「じゃあ,メーカーの違いは分からないのかなあ。」などといった会話が聞かれた。
このシートには鉛筆で色を付けていったのだが,凹凸を付けたいということで,法則化で扱っている「学習点字ペン」(1セット270円)を発注した。しかし,届くまで時間がかかるということで,それまでの間,木工ボンドを垂らして固めるという技で急場をしのいだ。
ちょうど次の活動が盲導犬だったので,お呼びする盲導犬のユーザーの方に,この点字でお願いの手紙を書いた。(ちゃんと,読んでもらえましたよ。)
盲導犬に学ぶ(3時間)
盲導犬についても,子供たちの持ち合わせの知識と図書室の本などで調べ学習をするところから学習を始めた。実は,私は現在パピーウォーカーをしており,子供たちに教えたいことは山のようにある。(盲導犬候補生と共にのページもご覧ください。)しかし,それでは子供たちの思いや願いに即した問題解決的な学習にはならない。そこで,「聞きたいことがあったら,聞いてね。」程度にしておき,できるだけ子供たちに調べさせた。(とは,言うものの子供たちは私がパピーウォーカーをしていることを知っており,その話をとても聞きたがった。そういうときは,私もありのままに話して聞かせた。)
子供たちは,その中で盲導犬がさまざまなボランティアの手を通して育てられることを学んだ。また,目が見えないと大変だろうねという子供たちの声をきっかけに,目かくしをして校内を歩いてみる体験も取り入れた。
次に,繁殖犬ウォーカーとパピーウォーカーを学校に招くことにした。このパピーウォーカーは私の家内である。私が話してもいいのだが,私は司会役に徹した方がよいと考え,また犬も長時間待つことはできないので,家内に登場してもらうことにした。
繁殖犬は,我が家のパピーの産みの母親犬スー号である。普段から,メールでいろいろなことをやりとりさせていただいており,また予防接種などの折も欠かさずにパピー達の様子を見に来くださっている方である。
繁殖犬の飼育は,どんな仕事なのか。パピーウォーカーは,どんなことに気を付けて飼育しているか。写真も交えながら話してもらったが,子供たちは身を乗り出して聞いていた。
子供たちの一言感想
「河井さん,横藤さん,この間は来てくださりありがとうございました。どちらの仕事もとても大変なことが分かりました。しかも,それをただでやっているなんて,すごいと思います。でも,スーもフレンドもとてもかわいかったので,私もやってみたいと思いました。」
「スーは,さすがお母さんでおとなしかったです。フレンドは,やんちゃ。でもどっちもかわいかったです。フレンドが,本当に盲導犬になれるといいなあと思いました。がんばってください。」
さらに翌週,実際に稼働している盲導犬とそのユーザーさんにいらしていただいた。北海道盲導犬協会の佐々木会長さんとアーサー号である。佐々木さんには,私の前任校でも授業に来ていただき,それ以来家族ぐるみでお付き合い願っている方である。
(前任校の実践「理科からの発展としての総合的な学習」をご参照ください。)
まず,アーサー号との1日の生活や,注意して欲しいことを話していただいた。例えば,「外を歩いているときに目の不自由な人を見かけたら,犬に声をかけずにおじさんに声をかけて欲しいんだよね。犬は,訓練されていてもやっぱり声をかけられると気が散るからね。」などといった話に子供たちは大きくうなずいていた。
その後,教室を出て廊下を歩き,また教室に戻ってくる様子を実演していただいた。アーサー号の的確な誘導ぶりに子供たちは感嘆の声をもらしていた。階段では,段差のところできちんと立ち止まり,「オーケー」と声をかけると1段だけ進んでユーザーに段差の在処と程度を知らせる。廊下に置いてあった子供たちのカバンなどもきちんとよけて通る,そうした一つ一つに「すごいね!」と目を丸くしていた。
私が「フレンドとはだいぶ違うね。」と言うと,子供たちは大きくうなずいていた。
さらに,点字を読んだり打ったりする様子も見せていただいた。会長さんはわざわざ子供たちのために,点字の刻印器を3セット持ってきてくださり,子供たちに点字を打たせてくれた。子供たちは,点字ペンで打つときと違って,刻印器で打つときは裏返しに打つことを知り,びっくりしていた。私も,はじめて知ったことで,それまで点字ペンで自分の名前くらいは打てるようになっていた子供たちだが,裏返しに打つことは難しく,「え〜っ,分からない!」を連発していた。
さらにその後,普通は稼働している盲導犬にはさせないのだが,特別に2人の子だけ(希望者が多かったので,6年生だけとした)にアイマスク歩行を試させていただいた。
この日の活動は,60分の中ではこれが精一杯であったが,やはり「百聞は一見にしかず」「百見は一験にしかず」で,大きな成果のあった時間であった。
この後,子供たちは点字ペンを使って佐々木さんにお礼の手紙を書いた。(点字で書いたが,漢字交じり文に直す。)
「佐々木さん,この間は来ていただきありがとうございました。アーサーが,廊下のカバンをよけたり,階段の前で止まったりするのを見て,とてもびっくりしました。」
「アーサーと一緒に歩いて,少し怖かったけれどとってもうれしかったです。」
「点字を打つのがとてもはやくてびっくりしました。」
「今度,盲導犬を見かけたら,盲導犬のユーザーさんに声をかけてあげようと思います。」
車椅子体験(1時間)
次の活動は,車椅子体験である。30名の子供たちに活動を確保するため,区役所の社会福祉協議会にお願いして,車椅子を9台お借りした。1つの区には5台までしかないということで,前日に2つの区役所を,レンタルのワゴンで回った。学校の1台と合わせて10台での活動となった。
指導には,同じ区内の老人ホーム「神愛園」から二人の方をお招きした。当初は,校区内の老人ホームからお招きしようと考えていたのだが,「やってみよう,ボランティア」のメンバーの子供のおばあちゃんが「神愛園」に入所しており,その子から「車椅子のことならここの人がよく知っているよ。」と情報が寄せられたので,連絡をとってみたのである。
当日は,まずお二人(所長さんと看護婦さん)から車椅子を押すときの注意点を簡潔に説明していただいた。所長さんは,わざわざプリントをご用意してきてくれた。その基本のポイントは,
・ゆっくりめのスピードで
・目線は,車椅子に乗っている人と重ねない(思わぬ障害物にぶつかる)
・乗っている人と話しながら
というところである。
さらに,段差の乗り越え方や坂道の上り下りなども簡単に実演していただき,いよいよ体験活動に入った。
子供たちは,車椅子に乗ったままでは水飲み場の蛇口には届かないことや,小さな坂でも,自力で上がるにはかなり大変なこと,閉じようとする戸(北海道の玄関は,保温のため自動的に閉まるようになっている)から車椅子で入るのはかなり難しいこと,小さな段差もかなり乗っている人にショックが伝わることなどを実感したようだった。
子供たちの一言感想から
「坂の時は,後ろ向きになってやらないと,危ないことがわかりました。気を付けないと,足をのせるところが廊下のところにぶつかったりしました。でも押してもらうときは,うれしかったです。」
老人ホーム訪問(2時間)
最後の活動は,老人ホームの訪問である。校区には2カ所の老人ホームがある。そこで,子供たちを半分に分け,1日で訪問することにした。日程にゆとりがあれば,2回に分けてそれぞれ訪問したかったのだが,そうはいかなかった。
これまでの学習を生かし,ボランティアの心を十分に発揮できるのは,やはり実践の場である。老人ホームには車椅子の方も多いし,耳の不自由な方もいる。また,施設によっては制約もある。そこで,1時間を打ち合わせ,もう1時間を実際の訪問とした。事前に私が何度か足を運び,施設の概要と入所されているお年寄りの様子を調べた。その上で子供たちに可能な活動の枠を示した。「座ったままできる遊びはOKですが,目がよく見えない方もいるので,細かいものは避けた方がよいでしょう。」などのように。車椅子を押してあげたい,と強く希望している子もいたが,原則として看護婦さんがそばにいて,許可が出たときのみとすることも話して聞かせた。子供たちの中には,お手玉やおはじき,将棋などを持っていく計画を立てた子もいた。画用紙とクレヨンを持っていって,似顔絵を描いてあげようかなと考えた子もいた。
訪問当日は,残念ながら私は出張で,校長と教務主任が代わりに担当してくれた。その様子を聞くと,はじめのうちはちょっとお年寄りに近づけなかった子も,すぐにうち解けて,心の触れ合いができたとのことだった。予定の時間が過ぎても,誰も帰りたがらず,帰り際には涙を流してくれたお年寄りもいたという。
次の日,たくさんの子供たちが休み時間や廊下ですれ違ったとき,次々に報告してくれた。
「あのね,おばあちゃんと学校の話をしたら『自分の好きなことを見つけられるといいね。』って励ましてくれたよ。」
「お手玉で遊んだら,すごく上手だった。歌も教えてもらったの。」
「車椅子を押してあげられた。でも,友達を押すときよりずっとどきどきした。」
「お菓子をもらった。病院の先生が『もらってあげるのもボランティアです。』って言ってたからもらったの。」
「帰るとき,おばあちゃんが泣いちゃったから,私も泣いちゃった。」
「また,今度私たちで行くんだ。」
どの子も,自分から報告に来てくれたこと,そしてその内容が具体的で生き生きとしていたことを見ても,いかにこの活動が子供たちの心に強く響いたかが分かった。
活動を終えて(子供たちの感想)
・私がおもしろ発見タイムでボランティアをやったわけは,今までに人の役にたったことはあんまりないから,何か人の役に立ちたいと思ったからです。一番おもしろかったのが,もうどう犬と車椅子です。あと,ハンカチで目をふさいで校内を歩いたのも,少しこわくて心にのこりました。私たちは目が見えるけれど,目が見えない人は私たちよりもっとこわいんだと思います。点字はむずかしかったです。点字ペンも使うのがむずかしかったです。手話もむずかしかったけど,今までニュースとか手話を見てもわけがわからなかったけれど,少しはわかるようになりました。これで,少しは人の役に立てると思います。もし来年もやってみようボランティアができたら,やりたいです。ボランティアは,むずかしいことも,楽しいことも体験できるのでおもしろかったです。
・車椅子をやったときは,自分が乗ってみて体が不自由な人の気持ちがわかりました。車椅子に乗ったままでは水飲み場の水を飲むことはできませんでした。いつもは気にしない段が,とても越えるのに大変でした。坂道もこわかったです。でも,楽しかったです。このクラブに入ってよかったなと思いました。みんながやらないようなことをいっぱいやって,とても楽しいです。私は来年もこのクラブに入ろうと思います。やったことを生かせたらいいなと思っています。
・始めにやったことは「手話」でした。みんなしんけんに手話の本を見て,手話を覚えていました。できたときは,「先生,先生,来て。できたよ。見ててよ。ここ,こうやるんだよ。」と言って,先生に見てもらいました。先生は「おー,上手。」と言ってくれました。
・これからは,「大変なんだ!」という気持ちを大切に,道に大変な人がいたら,私がこころよく押してあげたいと思います。
(私の感想)
・私も,とても楽しく感動的に実践できた。子供たちの優しい気持ちと,「人の役に立ちたい」という強い意欲に支えられ,毎週木曜日が楽しみだった。この活動を選択した30名の子供たちとは,クラブなどとはまた違った,心のつながりができたように感じている。
・この活動が,まずまずの成功を収めたのには,次のようなポイントがあったと考えられる。
まず,活動の目的を「人の役に立つ学習をしよう」と投げかけたことである。この大きなめあての提示は,活動の内容やその時々の目標も,自分たちで決めるという総合的な学習の方法論を保証する第一歩である。
・第2に,実際の活動の第1回目は,じっくり今後の活動内容を話し合うことにあてたことである。この話し合いが,どれだけ子供たちのイメージをふくらませ,調べ方を示唆,暗示できるかが,その後の具体的な活動の質を決定する。
・教師の役割は,上で述べた「計画の立案,調整」の他に,主に「施設や人材との交渉等の準備」,「個々の活動を見取り,感動を共有すること」である。教師の持っている知識を伝達することもないわけではないが,それが中心ではなかった。これは,生活科の方法論と同じである。
・調べ学習が多かったが,その方法やまとめ方については,きちんとした指導をした方がよい。「何に当たれば知りたい情報が得られるか」「得た情報は,書いてまとめること」などは,教師側から示さなければ子供は動かない。
・今後,この子たちが日常生活,地域の中でどれだけ人の役に立つ行いを自然にすることができるか,それがこの活動の真の評価だと考えている。
(後日談)
・活動を終えて,2学期の終業式の日を迎えた。子供たちを帰したあと,教室の掃除をしていたら,4年生の子が2人やってきた。
「これから,『北野の四季』に行って,おばあちゃん達に会ってくるの。」とてもうれしかった。生活科と同じように,総合でも学習の出口は子供たちの生活場面である。生活場面に生きて働く体験や智慧を,これからも目指して実践していきたい。
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