9/6 Wed. ツェルクノの愉快な仲間たち
パルチザン病院のパーキングを出たのは11時近く。10分ほど引き返せばツェルクノ (Cerkno) の町に到着します。
ツェルクノ・スキー・センターをはじめ、一帯ではトレッキングや乗馬、カヤック、ラフティング、パラグライダー・・・と、様々なレクリエーションが楽しめます。この町はその基地でもあり、ホテルも建てられています。
 ※ ツェルクノ観光情報はこちら↓ (英語ページあり)
    http://www.cerkno.si/turizem/

博物館があるそうなので、ついでに寄ってみるかという軽いノリで、川沿いにあったパーキングに車を停めました。
ツェルクノの町角
ツェルクノ中心部
町の教会
まずはさらっと町の散策から。教会やホテル、市民プール・・・と中心部を一巡りしてみます。あれ?そういえば博物館が見当たらないなぁ。

そこで英語が通じない町民をつかまえ、ガイドブック上のスロヴェニア語表記 "Cerkljanski Musej"―ツェルクノ博物館―を見せながら、尋ねてみました。その人が指さす方向に数十メートル進んだところで同じことを繰り返します。そして3人目。若い女性が博物館の建物自体を指し示してくれました。
到着してみれば、車を停めた場所から数ブロック、ファームハウスへ続く通り沿いだったんですけどね (笑)
ツェルクノ博物館・外観

ツェルクノ博物館は、昨日訪問したイドリア市営博物館のツェルクノ部によって運営されています。
   ※イドリヤ市営博物館のサイトはこちら↓ (スロ語/英語/独語)
        http://www.muzej-idrija-cerkno.si/

受付の女性は暇をもてあましていたのか、嬉しそう。
入場料 400 SIT (約\250) を払うと、「一階は町の歴史の展示、二階には "Masks" があります」 と説明してくれました。
「マスクs?」
実はガイドブック (ロンプラ) には囲み記事まであったのに、全く読んでいなかった! 予備知識ゼロ丸出しのオウム返しに、彼女はにっこり頷きます。
「一階を見終えたら案内しますから、声を掛けてくださいね」
古い写真や文書類
台所用品
ソリや農耕具
一階展示室に他の見学者の姿はありませんでした。でも、鉱工業で発展したイドリアとはまた違う、昔の農民たちの暮らしぶりが窺える展示品を見るのも、なかなか面白いですよ。

その先、通路を遮るように金属の板が吊り下がっていました。
ドア(表)
ドア(裏)
裏に回ると、どこにもありそうな木製のドア。戦時中、防弾用に手を加えたものでしょう。
さらには、大きな不発弾まで下がっていてヒヤッとさせられます。
こんな↓第二次大戦直後の町の写真もありました。
戦禍で荒廃してしまったツェルクノ
その後は戦後の生活。テレビ、ラジオ、洗濯機・・・といった初期の電化製品も展示されています。
テレビのある居間を再現したコーナー
ひととおり見終えて受付に戻ると、先ほどの女性が階段の電気をつけながら先導してくれました。二階も見学者は私だけということか・・・。


ついたての前に等身大の人形が一体、置かれていました。
     「これが"Laufarija"と呼ばれるお祭りのマスクです」
長い髪を振り乱し毛皮をまとった猛々しい姿から、まっ先に頭に浮かんだのは、『男鹿のなまはげ』。
もっともその面は鬼よりずっとひょうきんだったんですが、思わず口に出していました。
    「日本にも似たような祭りがあります!子供たちがソレを見て怖がるの」
    「ああ、これも怖がって泣く子がいるわ」
まあ、こちらのキャラクターのばあい、脅すことが本意ではなさそうですが。

彼女に促されて中に入ると、まずは写真を織り交ぜた解説のパネルがあり、その前で彼女は説明を続けてくれました。
       ――そういえば入口はほったらかしじゃない?―― 
   「正確な起源は私たちにもわからないのだけど、かなり古くからこの地に伝わるものなんですよ」
   「収穫のお祝いかなにかですか?」
   「いえ、これは春の訪れを祝うカーニバル。日付は年によってまちまちだけど、イースターの前に行われます」       
そうだ! カーニバルって春の初めのお祭りでしたね。

パネルに続いて並んでいたのは、入口のものよりさらに笑える、色々な職業や一般庶民にありがちな悩みを具現化した人形たちでした。当日はこれが皆、町を練り歩いているんですから、さぞ楽しいだろうな~。
アル中亭主と恐そうなおかみさん。右は・・・かかし?
          すべて町の若者たちが作って扮する
最初からそのつもりだったのか、それともトンチンカンな私にちゃんと知って欲しかったのか、結局彼女は展示の最後までマンツーマンで付き合ってくれました。

なんでも長年行われていなかったけれど、1956年に復活したそうで、菩提樹を削ったマスクも、ワラや木の葉などを使った衣装も、毎年新たに作られるのだとか。
右が主役のPUST。左が彼の弟、Ta Smrekov。
そして最奥に立つのが、主役のPUST。彼はなぜか全身コケで覆われていて、冬の、あるいは過去一年間の悪しきことの象徴なんですって。
あらゆる災厄を背負い、その罪状を読み上げられたコケ男は、有罪宣告を受けます。彼がハンマーで処刑されたところで、祭りはめでたく終わるという話でした。かくして新たな気持ちで春を迎えることができるというわけです。
カーニバルは数々あれど、こんなドラマ仕立てのものがあるんですね。その意義は大晦日や節分などに似ている気もします。キリスト教以前からの様式を留めた貴重なものと言えるかもしれません。
余談ですが、PUSTには弟がいまして、こちらは松の枝でできているそうですよ。

何も知らなかっただけに、楽しい発見をした気分でした。解説してくれた受付嬢にも感謝♪
※Laufarijaのページ (スロヴェニア語のみですが、写真が豊富です)→ http://laufarija.cerkno.net/

博物館近くのカフェで休憩。
オレンジジュース 140 SIT (\90弱)をオーダーして間もなく12時の鐘が鳴りました。


12時半、パーキングに戻って、
次なる地、鍾乳洞で有名なポストイナへと向かいます。
博物館側から見たカフェ方向
休憩中
(通りの反対側は郵便局)
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