到着までの長〜い1日 (後編)

       日付は変わってもまだまだ続く‥‥

タイヤが地面に当たる衝撃で目が覚めた。
23:08、ということはマルタ時刻で4日の 0:08。うん、遅れは若干取り戻しているみたい。その後、滑走路からさほど移動しないうちに停まったかと思うとアッという間にドアが開いて、6Dの席だった私は4分後にはタラップを降りていた(あまりの早業に寝ぼけながらも思わず時計をチェ〜ック!)。とことこ歩いてターミナル・ビルへ入る。まるで地方空港みたい。

それでも中に入ってみると、小さいながら近代的。立派な国際空港だった。(マルタ国際空港はその所在地名から"Luqa Airport"。公式ページは→http://www.maltairport.com/) まずはイミグレーションへ向かう。数ヶ所あるブースのうちの2つが開いていた。同じ便の乗客だけが三々五々通過するといった状態で、1人並んでいる後ろについた。すぐ順番がきてパスポートと入国カードを差し出す。いきなりの「***から来たんですか?」 という問いに "な、なに〜?" すぐにヒースロだと気付いてホッと胸をなで下ろす。にっこり「トーキョーからヒースロー経由で来ました」 と答えた。係官は"ふーん" といった顔で(別に不審がっているふうではない。マルタ人は日本人に似て無表情だとも聞くし‥‥ましてイミグレの係官は陽気なほうが珍しいでしょ?)スタンプを押し、パスポートを返してくれた。それにしても変な質問。ロンドン経由で来る日本人って居ないのかなー? マルタってロンドン便が一番多いはずなのに。

次はバゲージ・クレーム。ターン・テーブルが2つ回っていて、奥のほうはもう荷物が続々と出ている。手前がヒースローからの便で、まだ何も出てこない。ヒマつぶしに向こうの表示を見に行くとアムステルダム発のマルタ航空便だった。そしてスーツケースを取った20人近い日本人が添乗員さんを囲んでいた。"‥‥そっか!それでイミグレのオジサンがあんなことを聞いたんだ! 私が押さえで取っておいてもらったJAL+マルタ航空ルートじゃない!!" これだと成田出発が50分遅く、マルタ到着が25分早い。飛行時間もトータルで40分短い、効率的なルートだったのだ。だけど7万円近く高かったからなぁ〜。JALならマイレージが貯まるというメリットはあったけど、この差は痛いでしょう? しかも私の場合、帰路のロンドン乗継ぎに9時間15分(ガトウィックA.P.→ヒースローA.P.移動や出入国に要する時間を引くと5〜6時間)という中途半端な空きがあって‥‥。
そんなことはさておき、Bank of Valletta の両替窓口があるのが目に入った。荷物を待つ間に両替しておこーっと。とりあえず週末分として2万円。1マルタ・リラ(地元の人は何故かポンドと言う)=\284.6796で、\20,000はML70.25 にしかならなかった。手数料としてML0.25差し引かれ、手元にきたのはML70きっかり。それでもガイドブックのレートよりはかなり円高。そうこうしているうちに私の荷物は何事もなく出てきた。"こんなマイナーな乗り継ぎにたった一つ、ちゃんと付いてきてくれたのねー" と思うと見慣れたスーツケースがけなげに見えたりして‥‥。その後の税関は他のヨーロッパ諸国同様、素通りだった。

自動ドアの外にはどこにでもあるお出迎えの風景が待っていた。ロープ沿いに待ち人の名を書いた紙を掲げる人が並んでいる。いつもならサッサと通過するところだけど、今回は夜中に一人で到着というので大事をとってホテルにピックアップ(タクシー)を頼んであった。ゆっくり私の名前を探しながら歩く。"これかしら?スペルが1字違うけど" そして紙を持つ人の顔に目を移した。短髪にピアスの、だけどイマイチあか抜けない若いヤツだ。"え〜?! このひとぉ〜?でもホテルが回してくれたんだから‥‥" 不安を抱いたまま私が名乗ると、彼は挨拶するでもなく愛想笑いをするでもなく、軽くうなずいただけで歩き出した。どう対応して良いのか戸惑っているふうにも見える。"意外にシャイなのかも" 数十歩、歩いたところで初めてちょっと振り返り「一人ですか?」 と聞いてきた。今ごろ気付いたのか、ずーっと聞きたかったのかは謎‥‥。「そうよ」 一人旅に慣れてる顔をしなきゃいけないような気がしていた。彼は私からスーツケースを無言で取り上げ(それまで目に入らなかったみたい)、また数歩先を行く。屋外駐車場をズンズン奥へと進む。辺りに人影がなくなりかけ、またちょっと不安になってきたころ、やっと彼のワゴン・タクシーに辿り着いた。

空港からは15分、そんなことは事前に調査済み。でも黙りこくっているのも辛いから「ここから何分ぐらい掛かります?」 と聞いてみた。「うーん、交通状況によるけど15分位でしょう」 "こんな真夜中に depends on もないんじゃないかな〜" と訝りつつ、「I see.」 イタリアあたりじゃタクシーの運転手さんも陽気で、こちらが多少しゃべれると判ると(時には判らなくても)質問責めにあったりするのに、この先、会話は進まなかった。
案の定、車はまばらで幹線道路をしばらく走ると海が見えてきた。ヨット・ハーバーを通過すれば目指すスリーマ地区のはず。ずーっと海沿いだろうという期待に反して車は裏道に入ってしまった。海沿いは回り道になってしまうかららしいが、お店が閉まっているのでなんだか不気味。再び明るい海沿いのプロムナードへ出ると、通りの一番奥が私のホテルだ。
料金は予約時に聞いていたとおり8ポンド(ML)。"あっ! 両替したとき小銭を混ぜてもらうのを忘れたぁー!" チップに2MLは勿体ない。 スーツケースをフロントに運んでもらいながら、「1ポンド(ML)あります?」 と聞いてみた。「いいえ、ありません」 「じゃあ、ちょっと待ってて」
レセプションのカウンターで「まずタクシー代を払いたいから‥‥」 と5ML札をくずし、9MLを運転手に渡した。
ホテルのIDカードそしてチェックイン。「今晩から4泊、予約してます」 名前を告げ、宿泊カードに住所、氏名、生年月日、パスポートb記入する。一風変わっていたのは、別の小さなカードにも署名して下さいと言われたこと。カードはその場でラミネート加工して手渡された。レストランやプールetc.を利用する際のIDになるのだそうだ。飲食が全て宿泊費に含まれているから。
カード・キーの使い方や朝食時間といった一通りの説明を受けた後、「お部屋はその先のエレベーターで6階です」と奥を指し示された。"自分で行けってことね? マルタの4ツ星はイタリアの3ツ星クラスと聞いてはいたけど‥‥3ツ星だって運んでくれる場合が多いよぉ‥‥夜中は人手が足りないのかしら" 荷物運びは慣れているしチップを払わなくていいから、ラッキーと言えるかな?

エレベーターは前後、2方向にドアがあった。幸い私の部屋は海側、フロントと同じ向きなので迷わずに済んだ。部屋に入ってカード・キーをドア横のポケットに挿すと、部屋の明かりとエアコンが点く。そして部屋を見渡してビックリ! メチャクチャだだっ広い。5m四方、15畳以上ある。ホント、指を定規代わりに計測したんだから‥‥(なんでこんなことにマメなのかしら、って自分でも呆れます、ハイ)。キングサイズのベッドが2つあるのに、もう2つ同じベッドを追加しても余裕のスペース。
調度類はイマイチ安っぽいけど、デスクの上にはフルーツと赤ワイン。その下の冷蔵庫にはジュース、ミネラルウォーター、缶ビール、赤・白ワイン(ハーフボトル)。
本来ならそう驚くことでもないんだろうけど、なんてったって、ぜーんぶ飲み放題star ! 
お茶のセット一式(湯沸かしポット、コーヒーカップ、ティーバックやインスタントコーヒー)、ズボンプレッサー、バスルームにはドライヤーも有り。
photo-HotelFortina Room photo-HotelFortina Desk
バスルームへ続くドアの左にズボンプレッサー、
お茶のセットがある。
手前に並んでいるのは、ヒースローで買った
ガイドブックと、空港にあった道路地図
続いて、電話の乗ったナイト・テーブルをずりずりと動かして壁のモジュラー・ジャックをチェック。"調べたとおりイギリス式ね、よしよし。荷をとく前に到着報告をしなくっちゃ" コンピューターを接続するのは明日にして、とりあえず国際電話をすることにした。部屋の案内書によれば0発信で直通ダイヤルできる。0-日本81-東京3‥‥。ところが何度ダイヤルしても "ツーツーツーツー‥‥" というばかり。時間をおいてトライしても同じだった。仕方なくオペレーター(レセプション兼用)に電話して、「日本に電話したいんだけど何回やってもダメなんですぅ〜」 と泣きついた。「あー、回線がいけないのかも知れませんね。別のに切り替えてみますから、しばらくして掛け直してみて下さい」 という女性の答え。よくある事なんだろうか??
きっと処理は日本のように迅速ではないだろうと読んで、15分程してからダイヤルした(この間に荷物を洋服ダンスに収納。実は部屋のサイズを測ったのもこの待ち時間)。掛かった、掛かった。「無事、ホテルに着いたよ〜!」と簡単に報告。日本はもう朝9時だって。えっ、ということはこちらは2時? あら、早く寝なくっちゃ!
ところがところが、バタバタしたせいでちーとも眠くなくなってしまった。それにずらしたままのナイト・テーブルがヤケに気にかかる‥‥。そんなこと言ってないで元に戻せばいいのに? でもそこが常軌を逸した私の私たるところっていうのかしら。PCを接続したくなってきたわけですよぉー。よおし、こうなったら長丁場覚悟。コーヒーでもいれましょ まずはポットでお湯を沸かしている間に下準備。PCはテーブルに置いて、っと。電源は近くにあるポットとズボンプレッサーのところが好都合だな(差込口が1つなのでお湯が沸いたら交換しなければならない)。モジュラージャックが電源とは反対側の壁にあるので、その距離5m。携帯用(巻き取り式/2.7m)の電話ケーブルを2つ持ってきたのは大正解だった。一方の電話ケーブルをモジュラージャックに差し込んで‥‥。この次がドキドキの作業。壁からのケーブルにモデム・チェッカーという器具を付け、回線がモデムを壊さないかどうかをチェックするというもの。スイッチを切り替えてみる。青ランプが点灯。"やった!使えるぅ!!" そしてもう一つのケーブルでチェッカーとPCをつなげて、ハードの準備は完了。

インスタント・コーヒーにお湯を注ぎ、PCの電源を入れる。椅子に座って、まずはコーヒーをひと口。ゼロ発信に修正して、発信元をマルタ(356)にする。ちなみに小さな国、マルタに市外局番はない。家でテストしたとおりの手順で(これがかなり面倒だけど、詳細はNotesのページに掲載予定)接続。"きゃー、つながったじゃない!! " そこでPC添付のメールソフトで受信しようとしたら何故かエラーになってしまった。テストでは接続前にソフトを立ち上げておかないと上手くいかなかったので、 ちょっと使いにくい(?)WindowsCEの受信トレイに変更してから接続し直してみる。2度失敗。混んできたのかなー。そして3回目。今度はちゃんと繋がった。 わーお!皆からの行ってらっしゃいメールがどんどん入ってくる。そのためにPCを持ってきたとはいえ、いざ、初めて遠く離れた異国でメールを受け取ってみると、それはそれは予想以上に嬉しいもの 一旦、接続を切って、メールを読んだ。その後インターネットの掲示板に行ってみた(書き込みはできないので読むだけ)。マルタの天気予報や朝日新聞のページもチェック。みんな出発前にブックマークしておいた。アクセス・ポイントの最大速度が28.8Kbpsだから表示は遅いし、戸惑った部分も多少あったけど、とりあえず繋がっただけで万々歳だろうな。

なんと、既に3時半をまわっていた。メールを書くのは明日‥‥。でも感動さめやらず(?)、その後もTVを漫然と見たりして、うだうだ過ごした。イタリアのチャンネルが多いみたいだ。TVは14型ぐらいの小さなもので、ベッドから遠すぎてよく見えないけど、ビデオ付き。ビデオテープはホテルで貸してくれるようだった。


こうして長〜い長〜い初日は、いつ終わったのか本人にも謎のまま過ぎ去っていったのだった。



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