6年生通信ー11月



1.理科「水溶液の性質」授業づくり(1)(2)(3)(4)
2.理科「水溶液の性質」授業記録(1)(2)(3)(4)(5)
3.覚えることを重視しよう(1)(2)
4.転校する子へのお別れ会の企画〜怒りました


11月4日(土) 第60号 理科「水溶液の性質」授業づくり(1)

■13日(月)から,理科は「水溶液の性質」という単元に入ることになりました。この授業は,全校授業研究の一つとして公開されます。
 そこで,この授業づくりのあれこれと実際の授業を,本紙で連続してお届けしようと思います。(学級通信と授業研究の資料作りをいっぺんにやってしまおうという虫の良いアイディアなのです。)今日からしばらく理科が続きますが,ご容赦ください。

■まず今日は,私たち教師が授業をつくるときに,どのような手順でつくっているのかをご紹介します。
 私たちが日々行っている授業は,「指導要領」に則っています。「指導要領」はこれまでほぼ10年毎に見直しされてきた,国の教育の基本方針,内容を示したものです。(大きな書店で,安く手に入ります。平成10年に発行された,平成14年から実施予定のものは,240円です。)これが発行されたら,目を通すのは私たちの仕事ですし,特に専門教科の項目に関してはほぼ暗唱するくらいの気持ちで何度も目を通します。
 ですが,正直に言いますと,日々の授業の準備で「指導要領」を広げるかというと,まずそんなことはありません。通常は,教科書や市教委発行の手引き,それに雑誌や単行本などを見て,週の時間割に当てはめていきます。

■しかし,研究授業となれば話は別です。何よりも先にまず指導要領を当たります。また,それをより詳しくした「指導要領解説」も熟読します。
 今回の「水溶液」に関しては,指導要領解説に次のように示されています。

いろいろな水溶液を使い,その性質や金属を変化させる様子を調べ,水溶液の性質や働きについての考えをもつようにする。
 ア 水溶液には,酸性,アルカリ性及び中性のものがあること。
 イ 水溶液には,気体が溶けているものがあること。
 ウ 水溶液には,金属を変化させるものがあること。
 ここでは,いろいろな水溶液の性質や変化を指示薬を用いて調べ,水溶液はその性質によって3種類に仲間分けができることをとらえるようにする。また,水溶液を加熱したり金属と触れさせたりなどして泡の発生や金属の変化を調べ,水溶液には気体が溶けているものがあることや,金属を変化させるものがあることをとらえるようにする。
 これらの活動を通して,水溶液の性質とその働きについての見方や考え方をもつようにするとともに,水溶液の性質や働きを多面的に追究する能力や,日常生活に見られる水溶液を興味・関心をもって見直す態度を育てることがねらいである。
 ア 水溶液には,色やにおいなどの異なるものがある。同じような無色透明な水溶液でも,溶けている物を取り出すと違った物が出てくることがある。このように,いろいろな水溶液をリトマス紙などを用いて調べると,色の変化によって酸性,アルカリ性,中性の三つの性質にまとめられることをとらえるようにする。
 イ 水溶液には,液を振り動かしたり温めたりすると,気体を発生するものがある。発生した気体を容器に集めてその性質を空気と比べると,空気とは異なる性質を示すものがある。集めた気体を水に入れると再び水に溶けてしまう。また,水溶液を加熱すると,固体が溶けている場合と 違って溶けている物も水も空気中へ蒸発して何も残らないものがある。これらの観察や実験から,水溶液には気体が溶けているものがあることをとらえるようにする。
 ウ 水溶液には,金属を入れると金属が溶けて気体を発生したり,金属の表面の様子を変化させたりするものがある。金属が溶けた水溶液から溶けている物を取り出して調べると,もとの金属とは違う新しい物ができていることがある。これらの実験から,水溶液には金属と触れ合うと金属を変化させるものがあることもとらえるようにする。

 ここで扱う水溶液としては,身の回りにあるものやこれまでの学習で扱った水溶液,及び教材の内容,展開を考慮し,例えば,薄い塩酸,水酸化ナトリウム水溶液などが考えられる。これらの水溶液の使用に当たっては,その危険性や扱い方について十分指導するようにする。
 扱う金属についても,例えば,鉄やアルミニウムなど,生活の中でよく見かけるもので性質や変化がとらえやすいものを使用することが考えられる。

■以上は,学習するべき内容を示しています。授業をするときは,これを次のような観点で組み立てていくのです。
・どんな素材を使い
・どんな順序で
・どんな活動を通して
 これを検討するとき,一番参考にするのが教科書です。教科書は,検定を通った教材で,「素材」「順序」「活動」を具体的に示すものです。

■しかし,特に理科の場合,教科書の「素材」「順序」「活動」をそのまま踏襲するよりも,子供たちの身の回りの素材や,それまでの体験などを生かすことがより効果的な場合も多いのです。
また,今本校で取り組んでいる「問題解決的な学習」の研究,それと何よりこの授業に取り組む子供たちの実態に合った活動かを考えながら,教科書を検討していくことになります。


11月8日(木) 第61号 理科「水溶液」の授業づくり(2)

■指導要領を当たってから,それを具体化した教科書を検討します。教科書は,次のような構成になっていました。
 1)水溶液に溶けているもの(水溶液を熱して,固体が溶けているものと気体が溶けて   いるものを調べたりする)
 2)水溶液と金属(石灰石や鉄,アルミニウムを塩酸で溶かし,溶けた溶液を調べる)
 3)酸性とアルカリ性(リトマス紙を使って水溶液の仲間分けをする)
 これを見た,第一印象は「切れている」ということでした。つまり,子供たちの活動が,自然に次の活動を導き出すのでなく,教師のかかわりで導かれるような構成であると感じたのです。

■そこで,別の文献を当たっていきました。
 まず,今の教科書の前の教科書を当たりました。すると,次のような構成でした。
 1)水溶液と金属(現行教科書の2に同じ)
 2)水溶液に溶けているもの(現行教科書の1に同じ)
3)水溶液の仲間分け(リトマス紙,水溶液の混ぜ合わせ)
これが,現行では(1)と(2)が逆転しているのです。新しい教科書で採用されたということは,何か確かなデータがあってのことなのでしょうか。
 そこで,次に手元にあった理科の実践例が載った雑誌や教育書を当たりました。一番古いものは昭和55年のものでした。新しいものは平成11年8月のもの。全部で40本以上の論文や著作が見つかりました。精読していては,何日あってもたりませんので,構成にだけ絞ってざっと目を通しました。すると,おもしろいことが分かったのです。

■それは,構成の「水溶液に溶けているもの→金属」と「金属→溶けているもの」が,かなりバラバラに時代や地域を問わずに出現しているということです。この単元はこの20年間,この2つの構成を主な方法として併用されているということが分かりました。
 また,この2つの方法以外に,おもしろいものもありましたが,かなり内容的に高度であったり,総合的に扱うものでした。
 さらに,インターネットでも調べましたが,あまり有効な情報は見つかりませんでした。
 さて,ここで次にしたことは,理科のスペシャリストに聞くということです。知り合いに,理科のスペシャリストがいましたので,さっそく電話してみました。2つの方法があるようだけれど,そのそれぞれのメリットとデメリットを教えてほしい,と。すると,彼は電話口で即座に次のような話をしてくれました。(大きな理科研究団体の研究部長をやっている男で,理科の生き字引なのです。)

■「溶けているもの」から入ると,子供の思考は「モノ」という枠組みで展開する。そのモノを石灰水や食塩水のようなこれまでに習った固体から,ここではじめて学習する塩酸や炭酸のような気体もあるということに気づかせることで,そこから気体が溶けているとどういう働きになるかと導くのである。ただし,働きや分類に進むのが苦しいというデメリットが生じる。
 「金属を溶かす」から入ると,子供の思考は「働き」という枠組みで展開する。それぞれの水溶液の働きの違いから,何がその働きを生むのかということで,モノに向かわせる。ただし,この単元構成では「気体が溶けている」という気づきを導くのが難しいというデメリットがある。
 そこで,教科書も,全国で展開されている実践も,この2つの方法をとっかえひっかえしながら展開されてきたのだ。

■なるほど,と思いました。そこで,漠然と思っていた私のプランを話してみました。
「最初に,何種類かの水溶液を提示し,それらがどんな働きを持っており,どんなものが溶けているかを先に調べさせてしまっては,だめなのだろうか。実験方法なども,危険性のないように最初に指導して,自由試行の時間を与えるということは,この単元では難しいだろうか。ネックは,水酸化ナトリウムだと思うのだけれど。」
 すると彼は,「ああ,それはおもしろい!水酸化ナトリウムは,危険だからそれは除外して,別のところで扱えばよいのではないでしょうか。」と言います。これを聞いて,私は急に元気が出ました。

■この単元の実験では,水酸化ナトリウムの扱いがかなり難しいのです。危険性が高く,子供たちに自由に実験させられないと思っていたので,彼のアドバイスはとても力強く感じました。   (続く) 

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エトセトラ
・個人懇談が終了しました。ほぼ時間通りに進めることができました。ご協力に感謝いた します。「次の方の時間ですね。」と,気を遣っていただいた方も多く,とても助かり ました。また,子供が変化してきたといううれしい報告をたくさんいただきました。何 だか私のための個人懇談だったような気がしております。本当にありがとうございまし た。
・イギリスから,ベッキー=ウィルソンとおっしゃる若い女性が見えました。昨日,今日 と2回6の1にもいらしていただき,いろいろな話をしていきました。子供たちは,私に 似て(!?),とてもシャイで,なかなかのびのびと話しかけたりできなかったのです が,少し時間がたつと,慣れてきて楽しそうにふれあっていました。
・今日,久しぶりの保健の授業。教科書を忘れた(なくした?)子が,20名。う〜む。


11月9日(金) 第62号 理科「水溶液」の授業づくり(3)

■教科書や文献をあたって,基礎的な単元構成の知識をたくわえ,併せて大まかな方針が見えてきました。また,扱う水溶液についての研究も当然のことしています。例えば,水酸化ナトリウムを子供の自由試行から外すに当たっては,百科事典などでその危険性について調べました。例えば,子供たちになじみのあるものが水溶液と呼べるかどうかなども調べました。

■こうした基礎的な研究の上に立って,本校で目指している授業像に向かって,どうこの授業を組み立てるかを考えました。今,本校では子供自身が自分で問題を見付け,調べたり働きかけたりして追求していく活動を目指しています。これを「問題解決の授業」と呼んでいます。教師の解説を,受け身で覚えるような「教え込みの授業」や,教師の指示におとなしく従う「指示待ち授業」はしたくないのです。そうなると,教科書の「切れている」と思われることがとても気になります。「切れている」部分で,教師がかなり強引に介入しないと,次の活動につながらないと思うのです。また,扱う水溶液も,そのたびに教師から指示しないといけないという構成が気になります。
 例えば,「溶けているモノ」には,固体と気体があることに気づかせるために,食塩水と塩酸をスライドガラスの上で熱します。このとき,水酸化ナトリウムは除外されます。また,金属を溶かすときには,塩酸が指定されます。さらに,リトマス紙を使うことは,それまでの学習とのかかわりがあまり強くないで,教師の方からの投げかけにより指示される展開になりそうです。

■そこで,この単元を大まかに次のように構想してみました。
(1)7種類の水溶液AからGまでを試験管に同じ量ずつ入れて提示する。この7つが,それぞれ「水」「食塩水」「炭酸水」「塩酸」「酢」「石灰水」「スポーツドリンク」であることを知らせるが,Aがどれなのかなどは分からない。これを,当てるためには,どんな活動(実験・観察)をすればよいのかを考える。
(2)子供たちからは,まず,すぐに次のような方法が出されるのではないかと予想する。
 @近くで見る
 Aなめる
 Bにおいをかぐ
これらのうち,「なめる」に関しては「この7種類ともなめても大丈夫か?」と問い返すことで,方法から除外されるだろう。
(3)さらに,既習経験を生かして,
 C蒸発させる
 D二酸化炭素を入れる
などが,方法として挙げられるのではないだろうか。
(4)そこで,(ここがポイント)「教科書や辞典・事典などを見てもよい」と助言することで,子供たちからは
 Eアルミ片を溶かす
 F鉄片を溶かす
 Gリトマス紙につける
などが,挙げられてくるであろう。
(5)以上からAを抜かした7つ(以上になるかもしれない)の方法を整理し,その実験結果がどうなれば,それがどの水溶液なのだと判断できるかという仮説づくりをする。
 例えば,「色は透明」で「においはほとんどしない」「蒸発させても何も残らない」「二酸化炭素を入れても白濁はしない」が,「アルミや鉄を入れると溶けた」「リトマス紙が赤くなった」となれば,これは塩酸だ!というように。
(6)実際に,それぞれの水溶液に対して考えられた方法で実験し,データを取る。
(7)水酸化ナトリウムに関しては,教師実験で扱う。
(8)その経験を整理し,まとめを行う。
(9)二酸化炭素を水に溶かし,炭酸ジュースを作ってみる。(昨年度のおもしろ発見タイムの「ジュースを作ろう」の子達に活躍してもらう。)
(10)次の課題を,自分で選択し,総合的な学習として調べ,発表する。
 ・酸性雨について
 ・身の回りの水調べ
 ・鍾乳洞のでき方
 ・ムラサキキャベツの試験液づくり
 ・他の水溶液を調べる(硫酸,アンモニウム等)
 ・廃水の処理について
 ・海水の汚染について

■ざっと,上のような構想ができました。来週から,授業に入ります。子供たちがどこまで見通しを持って,主体的に取り組んでくれるか楽しみです。私もどこまで子供達の主体的な活動を支援できるかに,挑戦です。
また,報告しますね。


11月13日(月) 第63号 理科「水溶液」の授業づくり(4)

■前号で,私は下のように書きました。

 今,本校では子供自身が自分で問題を見付け,調べたり働きかけたりして追求していく活動を目指しています。これを「問題解決の授業」と呼んでいます。教師の解説を,受け身で覚えるような「教え込みの授業」や,教師の指示におとなしく従う「指示待ち授業」はしたくないのです。

 これは,5年生との時にこの学級の担任になってからずっと考えてきたことです。これまで参観日にご覧いただいた授業や修学旅行をはじめとする総合的な学習の取り組みで,もっとも大切にしてきたことのつもりなのです。
 もっとも,基礎的な学力や学習のしつけがある程度できていなければ,上のような学習は成立しません。5年生の時に見ていただいた国語の音読の授業などは,基礎的な力を鍛えるというねらいでした。この「鍛える」授業も大事なものだと思っています。新しい指導要領改訂は,大まかに言って「問題解決をどんどんさせましょう」ということと「基礎的な力はびっしり鍛えましょう」の2本立てのねらいとなっています。その一例として,円周率は子供に問題解決をさせれば「大体3」くらいまではこぎ着ける,だから「3.14」としなくてもよい。その代わり,その「大体3」については徹底的に何度も繰り返して全員に身につけさせましょう,と語られています。時代は,変わっているのですねえ。

■さて,今日は問題解決の方を少しくわしく…。
 子供の問題解決が成立しているということは,子供が知的好奇心を燃やして,自ら動きだすものです。そうでれば,教師の発言量が時間と共に減少するのではないかと考えます。それは,裏面に示すような,反比例グラフのようなイメージになると思うのです。
 問題解決のきっかけは,教師の投げかけです。今回の授業の場合は,私の方から7種類の水溶液(正確には6種類の水溶液と水)を示し,「どれがどれだか分かるかい?」と,子供たちの心をくすぐるところから学習がスタートします。この段階では,当然のことながら教師がリード役であり,また子供達が自由に取り組むための,いろいろな条件を示していくことが大切な要素になります。これを「活動のフレームを示す」と呼んでいます。子供の知的好奇心をかき立てるために,水溶液には既に習った「食塩水」や身近な「スポーツドリンク」などと,未知の「塩酸」などを混ぜておきます。ここで,何のどんな内容について,どのように調べるのかという課題がはっきりとすれば,子供は自ら動き始めると考えるのです。
 子供が動き出してしまえば,教師の発言量は,また発言の質は変化するはずです。ここでも教師が活発に話さなくてはならないとしたら,それは,その前が失敗だったのです。時間を追う毎に,教師の発言量が少なくなり,質が「指示的なものから支援的なものに」「明示的なものから暗示的なものに」「評価言が多く」というようになるのでは,と考えているのです。以下は,そのイメージ図です。真ん中の曲線が,教師の発言量で,重なり合う円が,問題解決の過程を表しています。

■ざっと,以上のような考え方で授業を組み立てています。おうちの方に,私たちがどんなことを考えて授業を組み立てているのかを知っていただこうと,ちょっと専門的なことも含めてご紹介してきました。
 さて,本日からこの授業に入ります。校内の教師が入れ替わり参観に来ることと思います。子供たちには,いつも通りのびのびと取り組んで欲しいと思います。横藤の発言量はこのようなもくろみ通りに変化するでしょうか。そして,それに呼応して子供達の活動は主体的になっていくでしょうか。楽しみです。
次号からは,この授業の様子をお届けします。
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エトセトラ
・保健で,病気のことを学習した後,発展でいろいろな病気について調べ始めました。私のノートパソコンからインターネットに接続できるようになりましたので,3つのグループの子がインターネットから情報を得ることができました。また,CD-ROMの百科事典から,欲しい画像等のデータを印刷して活用もしています。昨年,懇談で「これからはコンピュータで調べ学習ができるようになります」と言いましたが,それももうすっかり自然なことになってきましたよ。


11月13日(月) 第64号 理科「水溶液」の授業記録(1)

■いよいよ,授業に入りました。ところが,朝になってから気づいたのですが,試験管立てに立てられる試験管の数が,6本だったことに気づき,予定の7本から6本に変更しました。「水」を抜きました。
 まず,子供たちを教卓の周りに集め,6本の瓶(お酒の空き瓶)から,ちょっとずつ試験管に水溶液を入れていきました。子供達は,一つ入れるごとに,「あっ,色がついている。」「泡が出た。」などと反応していました。中に,「匂いかがせて。」などという声も出ました。
 6本の水溶液が入ったところで,写真のように6種類の水溶液に何があるかを示しました。「食塩水」「塩酸」「石灰水」「スポーツドリンク」「酢」「炭酸水」の6つです。

■そして,問いました。「このそれぞれが,どれなのかを調べるには,どんな方法が考えられますか?」
 この「方法を問う」というのは,理科の授業のポイントです。「知識を問う」「構造を問う」「違いを問う」「考えを問う」など,たくさんの問い方がありますが,理科でねらう科学的な見方や考え方の育成には「方法を問う」が大原則と言われています。
 子供たちからは,次のような方法が出されました。

・匂いをかぐ  ・色を見る  ・蒸発させて残ったものを顕微鏡で見る  ・鉄を入れる  ・アルミニウム箔を入れる  ・鉄片を入れる  ・リトマス紙につける  ・二酸化炭素を入れる  ・振る

 そこで,それらの方法をワークシートに記入させました。

■次に,ワークシートの表を見ながら,「ところで,もしAが食塩水だとするよ。そうしたら,今みんなが考えた方法でやってみたら,どうなるんですか? 」問います。すると,いくつか,次ページ(表1)のような予測が出てきました。しかし,とても空欄が多いので,そこから教室や図書室も含めて,調べ学習の時間をとりました。子供たちは約30分の間,集中して教科書や百科事典,パソコンで調べていました。

やってみること 食塩水 石灰水 炭酸水 塩酸 スポーツドリンク
においをかぐ 酸っぱい 甘い
色を見る 白っぽい
蒸発→顕微鏡 結晶が見えるはず
鉄片
アルミはく
リトマス紙
二酸化炭素 白く濁る
振る 泡が出る

■このように,まず自分たちがしようとする活動への見通しを持つこと,「こうしたら,この水溶液ならこうなるはずだ」をはっきりさせていくことが,この後の主体的な学習につながるのではないかと考えています。
この調べ学習によって,子供たちの予測はどうなったでしょうか。(次号に続きます)


11月13日(月) 第65号  理科「水溶液」の授業記録(2)

■調べ学習によって,子供たちの予測は,次のようになりました。赤字の部分が,調べたことによって増えた予測です。

やってみること 食塩水 石灰水 炭酸水 塩酸 スポーツドリンク
においをかぐ きつい匂い 酸っぱい 甘い
色を見る 無色 無色 無色 無色 黄色っぽい 白っぽい
蒸発→顕微鏡 結晶が見えるはず 白い固体が出る 残らない 残らない
鉄片 熱すると溶ける
アルミはく 常温で溶ける
リトマス紙 中性 アルカリ性 酸性 酸性 酸性
二酸化炭素 白く濁る
振る 泡が出る

 子供たちから,「リトマス紙って最強だべ。」などという声も出ました。リトマス紙の有効性が,こうした活動によって見えてくると,「切れている」という心配はなさそうです。

■これで,次回からの実験が,より確かなものになりそうです。子供たちの感想を一部お読みください。
○最初にA〜Fは何でしょう,と聞かれた時,そんなに楽しそうではなかったけど,調べている時は,意外におもしろかった。わからなかったところは教科書や本を見て大体は調べられました。この次は,もうちょっと調べてから実験に取りかかりたいです。 (M.H)
○最初に先生がA〜Fのついているビンを出して,試験管に注いだとき,分かったのは何個かありました。色が透明なのは分からなかったけど,その後調べるとけっこう分かったのがありました。教科書には,蒸発させると残る物などがのっていました。次は予想をたくさん書いて調べてから実験してみたいです。  (A.E)
○先生が試験管に入れたときも,調べてからも分からないものがあったから,今度くわしく調べたいで〜す。  (K.M)
○予想を調べていったら,わりとおもしろかった。特に塩酸のことがいろいろ調べられたからおもしろかった。  (H.R)
○最初に見たとき,何が入っているかドキドキしたけど,スポーツドリンクが入っていると聞いて気が抜けた。あまり結果予測に書き入れられなくて残念。早くいろんな実験をしたい。  (T.N)
○水よう液の実験をさいしょにやったときは,どんな実験かなと思ってた。やってみて楽しかった。  (T.Y)
○最初みんなで「調べる方法」を考えてやったとき,すご〜く実験が楽しみになってきました。なんか,科学者みたいな感じで…。私は,水溶液の正体を,教科書だけで調べました。けれど,まだ正体がはっきりしない物がたくさんありました。この次は実験で全部の正体がわかるようにしたいです。「水溶液 早く見せてよ 正体を」(O.H)
○試験管に塩酸を入れてとけないのかと思った。 (H.Y)
○ぼくは,6しゅるいの水よう液を調べて,水よう液のことがいっぱいわかった。とくに石灰水がわかった。これであしたの実験はだいじょうぶ。 (I.H)
○最初見たときは,どれも同じように見えていたけれど,調べてみたらそれぞれちがうことがあって,これからの実験が楽しみです。 (S.Y)
○ぼくは,6しゅるいの水よう液を調べた。どれも不しぎだった。いろいろ変わったりしていた。明日の実験はすごく楽しみ。 (O.S)
○最初に先生がみんなに試験管を見せたとき,早くやりたくなった。調べたことはリトマス紙の行しか調べられなかった。この次はもっと多く調べたいと思った。 (K.K)


11月14日(火) 第66号  理科「水溶液」の授業記録(3)

■いよいよ,子供たちが自由に試行する時間です。今日は,1時間目でしたので,もう一度安全指導や,濡れたリトマス紙の始末の仕方,万一手に水溶液がついたときの対処の仕方等を指導し,各小グループで実験の順序も決めて始めました。

■ご覧のように(写真略),子供たちの活動はバラバラです。バラバラなのがよいと思っています。少人数ですから,話がまとまるのも早いですし,お客さん(見てるだけ)になる子もいなくなります。全員が,実験に参加することができます。
 また,この授業の組み立ての主眼である,「子供たちが自分で学習を進めていく」という点は,かなり達成されていると感じています。「子供の問題解決」とは,教師が次々に指示を出し,それに子供が従うという図式でなく,子供の中に「してみたいこと」を生み出し,それを活動として保証していくことだと思います。そこでは教師は「教える」よりも「支援する」ことが中心になります。
 今日の活動の後半は,私は子供の求めに応じて水溶液を足したり,アルミ箔を切ってやったりするのと,次々にやってくる子供たちの驚きの報告に感動し,「すごいね!」「へ絵,そうなのかい!」と,言葉がけをしていました。私にとっても楽しい時間でした。

■子供たちの感想をお読みください。
○試験管に水よう液を入れた。さらにアルミはくを入れた。Fの試験管にも入れたら,アルミはくがとけた! たぶん塩酸だと思う? (M.K)
○今日の実験は,ぜんぶちがうにおいがしたり,しなかったりした。 (S.N)
○最初ににおいをかいだ。C,D,E,Fがにおいがしなかった。次にアルミはくを入れた。Fがぶくぶくしてきて,けむりが出て,にごった。 (T.T)
○A〜Fの中にアルミを入れると,Fの中からぶくぶくとあわが出て,Fの中が黒くなっていきました。とても楽しかったです。 (I.K)
○実験を始めて,Aだけやったけど,やっぱりスポドだと思った。もう答えはわかったけれど,これからいっぱい答えを見つけたいです。 (S.H)
○今日は実験の初日で胸がドキドキしていた。でも,実験をしたらすごく楽しくて時間が過ぎるのが早く感じた。今度からはいろんなことを調べていきたい。リトマス紙とか。(Y.N)
○ドキドキしながら試験管に入れてた。においだけではわからないので,次は鉄とかを入れてみたい。 (O.A)
○色やにおいは,すぐに区別ついたけど,アルミホイルの実験で下が急にあわをふいたのでびっくりした。でもそれだけじゃなくとけたのもとってもびっくりした。(M.A)
○少ししか実験はできなかったけれど,においをかぐところがどんなにおいなのか楽しみだったし,Fの中にアルミを入れると少ししたらあわとけむりが出て中が黒くにごって楽しかった。 (O.S)


11月15日(水) 第67号  理科「水溶液」の授業記録(4)

■昨日の実験の続きを,各チームで行いました。
 ところで,この少人数のチームは,生活グループを2つに分けたものです。それぞれのチームに,必ず男女が入ることという条件を出しました。その結果,小チームは次のような構成になっています。(略)

 このチームで,実験を進めているわけですが,なかなか男女の仲も良く,順調に進めている様子をうれしく思って見ています。

■さて,今日は授業の最初から私が一言も発しなくても子供たちが動き出しました。すること,そしてそのための段取り等が見えているからです。
 もっとも,途中一度だけ子供たちをストップさせて指導を入れた場面がありました。それは,水溶液をスポイトで一滴取って,スライドガラスの上で熱する実験をしていたあるグループが実験に失敗したからです。熱しているうちに,スライドガラスが割れてしまったのです。すぐに手を置かせて,指導しました。こうした失敗場面が,指導のもっともよいチャンスなのです。
 まず「今,スライドガラスが割れてしまったグループがありました。どうして割れたかというと,水溶液を一滴載せるところ,けっこう大きな水たまりを載せてしまったからです。では,どうしてたくさんの水を載せると割れるか,わかりますか?」
と問いかけてみました。子供たち,「????」。
 そこで,黒板に絵(略)を描いて,説明しました。

「このように,一滴なら水の温度がすぐに上がって蒸発するのです。でも,たくさん載せると下は500℃くらいに熱せられ,上の水はどんなに熱くなっても100℃だから,ガラスが耐えられなくなるんだね。」

■こんな話をするとき,子供たちはとても集中します。そして,その後はとても注意深く実験を続けるようになりました。子供が育つときというのは,子供の心の窓が開いて,友達や親,教師の言葉を集中して受け入れるときなのだなあと,つくづく思いました。

■さて,今日の子供たちの感想です。「考えたことを書こう」と指示して書きましたので,子供達の思考の流れが見やすいと思うのですが。

○鉄を入れた。Fが白くにごってきた。また昨日みたいにばくはつしそうになったらどうしようと思った。そしたら何も起こらず,Eみたいにちっちゃいあわが出てきた。ちょっとびっくりした。ぜったい,F=塩酸!,E=炭酸水!,B=酢!,A=スポ−ツドリンク! (I.A)
○今日はAからDまでをけんび鏡で見ました。AとBは黒くこげてしまいました。なんでだろうと思いながら,C,Dをやりました。次のやつは白くなりました。きっと,A,Bは飲み物だから,やいたら黒くなったんじゃないかと思いました。 (M.T)
○アルミニウムを入れて,Fがちょっとぶくぶくなった。そして,てつを入れたらE,Fがぶくぶくなった。ぼくは思った。Aがスポーツドリンク,Bはす,Cはふめい,Dもふめい,Eもふめい,Fもふめいと思った。ふめいなものが多かった。でも,Fはとくべつなものが入っているのにちがいない。なぜかと言うと,てつもアルミニウムを入れたらぶくぶくしたからだ。 (Y.H)
○てつをいれるとFとEはあわがいっぱい出ておどろいた。リトマス紙を入れると,Cだけが青にかわっておもしろかったです。たぶん,AがスポーツドリンクでBがお酢,Eが炭酸水でFが塩酸だ。 (M.R)

■ノートに感想を書くのも,大切な学習です。仮説を立てる,あるいは豊かな感受性を発揮しているなど,科学的な思考や態度が読みとれます。


11月20日(月) 第68号 理科「水溶液」の授業記録(5)

■土曜日,今日と2時間実験の続きをやりました。どのグループも「今日は,〜からだ!」と,自分たちのすることが見えていて,さっさと実験に取りかかります。だから,早いです。どんどん進みます。

■実験の記録も,だいぶ内容が変化してきました。「考えたこと」を書いたものを取り上げては,「いいね!」と紹介しているためでしょう。
○今日は蒸発させてけんび鏡で見ました。「今日は何が見られるかな」もしかして,結晶が見られるかも。結晶が見えるということは,結晶になる物が入っている。何か黒い物があった。こんなのが結晶なのか。(K.R)
○今日は,A〜F全部蒸発させました。蒸発させてみて,A=白く残った。B=残らなかった。C=何も見えなかった。D=黒いつぶつぶが見えた。E=とけて残らなかった。F=少しつぶつぶが見えた。きっと,A=スポーツドリンク。B=酢。E=炭酸水。F=塩酸だと思う。次は,二酸化炭素をやりたいです。(U.M)
○今日はCとDのことについて調べました。したらCは,二酸化炭素を入れると白くなったので,きっとCは石灰水で,Dはまだ全部調べ終わっていないから,まだDはわからない。(O.K)
○今日は,「リトマス紙」と「二酸化炭素」と「ふる」をしました。ところが,全体的に変わらない,というのがたくさんありました。
 リトマス紙バージョンは,C,D,E以外全部色が付きました。はじめは色の付いた紙に水をつけるようなものだから,色は付くと思っていたけど,そうではなかった。
 次に二酸化炭素バージョンは「C」だけが白くにごりました。
 そして,最後にふるバージョンは,なんと全部変わらないでした。自分でも予想していた。実験は楽しい。(K.A)
○今日は,鉄を入れる,二酸化炭素を入れるということをやった。鉄を入れたらEがほんの少しあわが出た。Fからは,ホチキスのしんから,い〜っぱいあわ(小さなあわ)が。みるみる出てきた。うひょ〜,めちゃくちゃおもしろい。
 これで全部の実験が終わった。Aがスポド,Bが酢,Cが石灰水,Dが食塩水,Eが炭酸水,Fが塩酸だ。Cが石灰水だとわかったのは,二酸化炭素を入れたらにごった。だから,石灰水!すべての実験をやってみて,最初はただの水溶液だったのに,8コの実験をやればどれが何だということがわかることがわかった。(S.A) 

■子供たちの事象の見方が,だんだんと確かなものになっていくことに感動を覚えます。次回は,まとめに入ります。


11月27日(月) 第69号 覚えることを重視しよう(1)

■理科の授業が,ちょっと中断しています。今日は,違う話題を。「覚えること」についてです。
 先週,2枚のプリントを子供たちに配布しました。
 1つは,「道産子なら覚えるべ」と称した,北海道の難読地名の一覧表。もう1つは,「重要歴史年代暗記暗記カルタ」です。どちらも,覚えるためのプリントです。(webでは別ページに表があります。)

 子供たち,家に帰ってからおうちの方に問題を出した子もいたらしいですね。「お母さんも読めなかった!」とうれしそうに報告してくれた子が多数いました。私への逆襲(別の難読地名)もありました。ご協力に感謝します!

■さて,このような取り組みのねらいなどについてお話しします。
 「記憶力は,すべての学力の基礎である」と言われます。記憶力は,ものを覚えるという活動によって開発されます。ですから,結果として忘れてしまっても,覚えるということ自体に意味があるのですね。よく記憶は,タンスの引き出しに例えられます。その学説によると,人間は1度聞いたものはちゃんと記憶できるのだそうです。(潜在意識には残っているということです。それをタンスには入るとしています。)しかし,入ったはいいが,中で整理され,いつでも引き出せるようにしておかないと,使えません。引き出しがつまってしまうのですね。何度も引き出しているうちに,だんだんスッと出るようになる,と言われます。
 物事を覚えるのは,楽しいものです。この子達なら,言われなくてもポケモンの名前を覚えた世代ではないでしょうか。しかし,学習内容となるとなかなか覚えるのが難しくなります。なぜでしょう。

■それは,つぎのような理由が考えられます。
 ・覚えたことがどう使われるかが見えない(ポケモンなら,覚えてみんなで歌えるとい  うような見通しがもてる。)
 ・覚えたことを,頭のタンスの中で整理するのが難しい。(ポケモンなら,現実世界か  ら独立しているが,算数の用語などは,日常生活の用語と重なる部分もあり,混乱し  やすい。漢字などは,覚え,さらにそれを熟語などに使うということも要求される。)
 ・学習内容は,学問上の知識なので,無味乾燥な感じがする。

■しかし,逆に言えば上のような内容を覚えることで,日常生活を越えた思考が展開するわけで,覚える学習はいつになっても大切なことに変わりはないでしょう。
 さて,子供たちは覚えることをどのようにとらえているのでしょうか。次のような活動の後,アンケートをとってみました。
 まず,先の地名を暗記するように言って,10分後に読みの欄を空欄にした用紙を配布し,どれくらい書けるかテストしてみました。そして,同じテストを明日やるから,覚えてらっしゃいと言っておきました。結果は,次のようでした。(満点=67点)

得点分布 満点 61〜66 51〜60 41〜50 31〜40 21〜30 11〜20 0〜10
1回目 15
2回目

 どの子も伸びました。10点以下だった子で,一気に満点を取った子もいます。同じレベルに留まった子は一人もいませんでした。2回目の答え合わせを終えたとき,多くの子から「もっとやりたい。」と声が出ました。覚えることに意欲が見えてきたのです。
そこで,子供たちにアンケートをとってみたのですが,その結果,おもしろいことに気づきました。(次号に続きます)


11月27日(月) 第70号  覚えることを重視しよう(2)

■さて,実施したアンケートですが,次の設問に答えてもらったものでした。

1.地名や年号などを覚える学習は,楽しいですか?
2.あなたは,漢字を覚えるのが得意ですか?
3.九九は,完全ですか?
4.県名や国の名前などは?
5.理科の薬品名や用語などは?
6.「覚える」ということに一言どうぞ。

■さて,前号で「おもしろいことに気づいた」と言ったのは,地名テストでの伸びと,覚えること全般への印象の関連性についてです。私は,漠然と「覚えるのが好きな子は,結果も向上していくだろう」と考えていました。しかし,テストの結果と上の各項目の自信や,設問1の印象をクロスさせてみると,それがどうもそうではなさそうなのです。
 つまり,個々の漢字だとか九九だとかの結果については自信はないけれど,覚えることは好きという子も多いのです。覚えるのは苦手だけれど,覚えること自体はおもしろそうだと感じている子が多いようなのです。
 これは,私にとって意外なことでした。以下,子供たちの自由な感想を拾ってみます。

○覚えることは,むずかしいけれど楽しいなと思う。(M.H)
○メッチャクッチャいい。ぞくへんもつくって!あと歴史のこともっとおしえて。(O.S)
○道産子なら覚えるべは楽しかったので,ぞくへんをつくってください。(I.H)
○おぼえるのがにがての方だから,やってほしい。とくに漢字をやってほしい。(K.M) 
○先生が覚えさせてくれるのはうれしい。(K.A)
○おぼえることはなんでも好きだから,これからももっとやりたい。(S.Y)
○中学に向けていいと思う。道産子第2弾を出してほしい。(K.K)

■このように,全員が好意的に受け入れてくれているのです。そこで,続編を考えることにしました。まずは,歴史年代を語呂合わせの歌で覚えることに挑戦です。(別紙プリントをご覧ください。)
web上では,こちらにプリント資料があります。


11月30日(木) 第71号  M君今日で転出,そしてそれにかかわって

■5年生の時に転入してきて,みんなと一緒に仲良く過ごしてきたM君が,砂川に転出することになりました。さびしいことですが,仕方ありません。砂川でも,元気にがんばってほしいとお別れ会をすることになりました。楽しい会になりました。
 M君,砂川でも気持ちの優しい,そしてユーモアを忘れない君でいてください。遠くから応援しています。いつまでも,君のことは忘れない。

■ところで,昨日私は久しぶりに声を荒げて怒りました。それは,M君のお別れ会の計画にかかわってです。私が怒る過程を,整理してみます。
(0)係の活動を見直すという学活の時間に,それまで何も活動していなかった集会係の子が,「マトリックスのビデオをみんなに見せる集会をやりたい。」と言ってきました。「どれくらい時間がかかるのか。内容は,どんなものなのか。」と問い返しますと,分からなかったようなので,調べてくるようにと言いますと,次の日に130分くらいかかるけれど,おもしろいのでやりたいと言うことでした。130分は,およそ3校時分。認められないと却下しましたが,後日一応私もレンタルビデオを借りて,見てみました。内容は,学校教育にふさわしいとは思えなかったので,その旨再度係の子供たちに伝え,この企画は白紙に戻しました。別の集会を企画するようにと言っておきましたが,そこからはまったく活動していませんでした。(ま,ここは今回のことと直接は関係ないのですが,伏線としてあったことなので,書いておきました。)

(1)子供たちに,M君が転校することになったことを知らせたのが,先週の半ばでした。そのとき,お別れの会をしようということになりました。そこで,集会係の子達に「計画を立ててください。」と指示を出しておきました。
(2)しかし,土曜日になっても一向に相談する気配が見えません。そこで「月曜日には,計画を紙に書いて先生に見せるように。」と言いました。
(3)月曜日,何も言ってこないので,計画はできているかを聞くと,顔を見合わせているばかり。そこで帰りに残って計画を紙に書くように言いました。
(4)放課後,残っていた子供たちが立てた計画は,「みんなでドッジボールをする」というものでした。「ねらいが見えない。体育館を確保できない。全員が楽しんで参加できるのか。例えば,Sさん(義足の子)はどうするのか。」と問い返すと,何も答えられません。しばらくたってから,「M君がドッジボールが好きだから。」との理由を付け足してきましたが,却下しました。
(5)火曜日,水曜日と,「どうなっている?」と声をかけましたが,互いに顔を見合わせては黙ってうなづくばかり。
(6)昨日,木曜日。「もう,今日と明日しかないんだぞ。集会の計画は,どうなっているんだ?」と聞きました。さすがにあわてて,紙にごそごそと書き始めました。そこで,それを提案する時間をとってやりました。前に出た係の子は,もぞもぞと提案をしました。次のようなプログラムでした。(略)
 ここまで,私はがまんしていました。しかし,次にはついに怒りを抑えることができませんでした。
 右のプログラムが示されたとき,私は質問しました。
「グループの出し物って,いつ練習するの?」「寄せ書きって色紙とかは準備したの?」 すると,係の子はこう言ったのです。
「じゃあ,やめます。」
 切れました。「何い!じゃあ,やめちまえ!いったい,何のための,誰のためのお別れ会なんだ!おまえ達にとって,人と別れるってことは,そんな簡単なことなのか!プログラムの一つ一つに,まったく心が感じられない。みんなで,Mを送ってやろうという気持はないのか!ならやめろ!やめてしまえ!」

■まあ,我ながら恥ずかしい汚い言葉です。しかし,1年半も一緒にいた仲間のために,自分たちの思いや力を集めようとできない子供たちの気持をとても悲しく思いました。だめならすぐにあきらめようとする弱さを情けなく思いました。
 しかし一方で,怒りながらも,私はこの子達なら「いや,やりたい。やらせてください。」と言ってくるだろうと,かすかな希望は感じていました。すると,予想通り他の子から「やりたい。」と声が出てきました。頷いている子もたくさんいます。
 その声を拾って,私は語りました。
「あのねえ,みんながM君のためにやってあげたいというなら,何とか時間はつくるよ。色紙は,今日買って明日回すのは無理だろうから,Y君に渡したのと同じカードにしないかい?それで,せっかく集会係の立てた計画だから,何とかこれでやってみないか。でも,やる気がないならやめよう。Mには悪いが,心のこもっていない会をするくらいならしない方がすっきりしていていい。」
 子供たちから,「やりたい!やらせてください。」と,だんだん声が出始めました。やっとその気になったのです。

■子供たちには,見通す力,計画する力を育てたいと思い,これまで総合的な学習をはじめとして,自ら計画を立てて進める学習に取り組んできました。今回,集会係が企画することができなかったのは,こうした力が十分に育っていないためであり,そのこと自体に対しては,私は怒りはしませんでした。しかし,仲間意識の希薄さと,安易に「じゃ,やめる」という態度には,心からの怒りを覚えました。
 仲間を,大切にしてほしい。仲間のために,自分は何ができるかと考えられる人間であってほしい。誰かのために,力を合わせることができる集団であってほしいと思います。
 また,一人一人の子供に「立って」ほしい。「こう進めたい」「これがみんなのために必要だ」「誰かのためにこうしよう」と,自分の足で立ってほしい。「こんな難しいことがある」と言われても,「何とか工夫しよう」「そこのところを,お願いして実現しよう」と,強く立ってほしい,と思うのです。
 私の方にも反省材料はたくさんあります。5年生の時から願い続けてきたことですが,もっともっとしっかりと実現のために考え直さなければ,と思っています。あと4ヶ月。


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