帰化許可申請書類の作成

        

帰化許可申請において重要なことは、国籍法上の要件に基づき申請者各自の状況を分析し、発見された問題点をどれだけ時間がかかろうとも解消しておくことです。書類作成はあくまでもその結果を正確に反映させることであり、長期的な視点からの問題点解消への適切なアドバイスこそが最も有益であることを理解してください。
帰化許可申請の一般論は他のサイトに委ね、ここでは申請者が誤認 ・ 困惑されるポイントや意外な盲点について解説いたします。

        
身分関係の整序
帰化申請の本質を端的に表す事項ですが、意外にもこの点を見落として必要書類の収集にのみ奔走して徒労に終わり、申請を断念される方も少なからずいらっしゃいますので、敢えて記載いたします。
私見ですが、帰化申請とは(帰化許可を前提として)日本人になった後の戸籍を作る準備作業の性格を有しているものとお考えください。その立場から見ると、帰化申請の第一段階で問われる下記の事項を整序することの重要性が理解していただけるものと思います。

具体的には、次の2つのケースが考えられます。
  • 原因が過去に生じたもの

  • (申請者の本国における身分関係を証する書面の表見上の記載と実態が異なる場合)
    例えば親子関係 ・ 兄弟姉妹の有無 ・ 氏名 ・ 生年月日 ・ 婚姻の有無等の身分事項が実際の事実関係と矛盾する時は、申請に先立って事実関係を確定 ・ 訂正させたり、疎明する別の資料を求められる場合があります。
    特に親子関係に表見上と実態の矛盾が生じている時は、申請に先立って親子関係の確認訴訟が必要な場合もあります。

  • 現在の状況に基づくもの

  • (身分関係が流動的な状況の場合)
    夫または妻が行方不明であるか若しくは事実上離婚している時や、法律上の婚姻関係を解消する前に他の者と内縁関係に入っている時も、申請に先立って事実関係の確定を求められる場合があります。
            
素行要件
国籍法では「善良(5条1項3号)」であることを求めていますが、抽象的な表現のため(つまり「善良」の概念から除外される具体的な素行とは何なのかが明確でなく)誤解が生じやすい点です。
大切なことは、自分一人で判断しないことです。過去の非行歴や犯歴があるから、とあきらめることはありません。逆に、自分は素行が「善良」であるとの思い込みは要注意です。

例えば、過去に不遇な幼少期を過ごさざるをえず非行を重ねるに至ったが、その後に充分に時間が経過し更生して現在は社会に貢献している者からの帰化申請ならば、更生後の人生の経過も合わせて総合的に判断され、過去の一時期の履歴のみで判断されるものではないと言うことです。

逆に、日本人配偶者をもつ申請者が自分の素行が「善良」であると思い込んでいた(犯歴 ・ 非行歴もなく交通違反もない)としても、現在の日本人配偶者との婚姻に至る経過が倫理上好ましくない(不倫関係の末に前婚を解消させ自分と婚姻させたような)場合なら、素行が「善良」であるとは判断されないでしょう。
素行が「善良」であるか否かの判断はあくまで行政庁(法務省)が行なうことであり、個別具体的にあらゆる事情を考慮して総合的に判断されるものとお考えください。
ただ、私達が反復継続して業務を行なう過程で得られた経験則から、申請者へ適切なアドバイスは可能であると考えています。不安のある方は専門家に相談されることをおすすめします。



生計要件
国籍法ではこの要件を充たす人的範囲(5条1項4号)を幅広く規定し、必ずしも申請者本人の資力を要求していません。(もちろん、生計を一にする配偶者その他の親族の資力を疎明する必要はあります)よって、家事従事者や下宿生活中の大学生なども同一生計の親族の資力を疎明することで申請が可能です。
申請書類には「生計の概要(その1 ・ その2)」に資産状況(原則、申請前月時点)を記載して添付します。
この要件では個人事業主の場合が問題になります。例えば前年度に過少申告しているような場合は年収から推察される平均月収と実態が大幅に乖離し(客観的に経営状況が前年に比べ大幅に好転する等の特段の事情もなければ)実態を正確に記載して生じる自己矛盾を回避するために、事実に反する記載をされる方がいらっしゃいます。
このような場合でも必ず事実を正確に記載してください。行政庁が申請の際に知り得た事情を他の官公署に伝えることはなく修正申告等の指摘はあくまで別法規に基づく処分ですので、問題を切り分けて考える必要があること、及び正確な記載こそが申請者に最も有益であることをご理解下さい。


帰化許可申請の報酬額をお調べの方はこちらをご覧ください。

帰化許可申請の見積もりを依頼される方はこちらをご覧ください。
        

お知らせ


特別永住者(在日韓国籍 ・朝鮮籍)の方へ
申請者の在留資格が特別永住者の場合、帰化許可申請書類作成の負担軽減措置(添付書類の省略 ・ 記載内容の省略)が実施されています。
また、在日韓国籍 ・朝鮮籍の方(本籍地が韓国法の効力の及ぶ地域にある方)が帰化申請される際に添付する本国の戸籍(身分関係を証する書面)の発行規定及び請求方法が、韓国国内法の改正にともない従前と比べ大幅に変更されています。
該当される方は書類収集にあたり充分に注意されることをおすすめします。

last modified: 30th/Dec./2010;