「うずのしゅげ通信」

 2018年1月号
【近つ飛鳥博物館、河南町、太子町百景】
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謹賀新年

フェイスブック

俳句

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東日本大震災について (宮沢賢治にインタビュー)
「劇」「性教育」「障害児教育」「詩歌」「手話」
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2018.1.1
謹賀新年

新年あけましておめでとうございまず。
「うずのしゅげ通信」も十八年を迎えました。
最近は、フェイスブックに軸足を据えているため、こちらの方が 疎かになっているのではないかと感じるところもあります。
しかし、演劇と言うものに対する愛情はいささかも変わってはいません。 とはいえ脚本の新作からは遠のいております。
今年は、短い劇の脚本を一本でも書ければと願っています。
私も、今年3月で古希を迎えます。
一昨年腎臓摘出の手術、そして昨年の前立腺の生検と続いたことから、 まだ体力が戻っていないように思います。その上、転移の検査と前立腺の検査が三ヶ月間隔くらいでまだ続いていて、なかなか病院から解放されません。 そんな状況で、とりあえず今できることは、日々の散歩でなんとか体力をつけることしかありません。
「うずのしゅげ通信」は、なんとか継続してゆきたいと思いますので、本年も変わらずご愛顧いただきますようお願い申し上げます。

「君たちは・・・」を漫画で読むか古希の春

最近、吉野源三郎さんの「君たちはどう生きるか」が見直されているようです。 漫画化もされてベストセラーになっていると聞きます。宮崎駿さんによって同名のアニメまで計画 されているようです。
古希を迎えて、いまさら生き方を考えるわけではありませんが、長い活字本を読むのが苦痛になっている ものとしては、漫画版の「君たちはどう生きるか」を読んでみようかと考えています。
ということで、今年も、体力をつけるための散歩と俳句三昧の生活になると思いますが、どうぞ「うずのしゅげ通信」も よろしくお願いいたします。


2018.1.1
フェイスブック

〈12月3日にフェイスブックに投稿したものです。〉

今日の拙句です。

自動ドア後ろで閉まる開戦忌

 (神戸港に巨大クリスマスツリー)
ミサイルを運ぶ車輌で聖樹来る

煮凝りやおさなが小骨舌の先

ペア帽子老老の試歩冬紅葉

こういう状況なので、今年はぜひとも開戦忌を詠みたいと思いました。
二句目も時事的な句になりました。
ということで、今日は開戦忌の句。

レノン忌より小さき記事なり開戦忌 藤本章子

レノン忌は知っていても開戦の日を知らない若者が増えているのではないでしょうか。しかし、不意にある日が開戦日となっても不思議ではない状況に、今われわれは置かれているような気がしています。

〈12月10日にフェイスブックに投稿したものです。〉

今日は「古墳群」の句会でした。
以下、拙句です。

檜葉垣の脂(やに)匂ひきて日短

鴛鴦や父の形見の赤マフラー

あかんべえアインシュタイン着膨れて

言ひ淀む「じゅうりゅうしせん」息白し

河内野に初雪にして一夜雪

ハンチング揃ひの試歩や返り花

マスクして阿修羅に魅入る車椅子

下の二句が席題。
成績はまあまあでしたが、着膨れの句を二人に採ってもらえたのには感激しました。例の写真のアインシュタインを詠んだのですが、話題にはのぼるにしても採ってもらえるとは、嬉しい驚きでした。あらためて句会に脱帽です。読み方はいろいろあるでしょうが、私としては、アインシュタインが「あかんべえ」と言って置き去りにした宿題を、たくさんの人たちが解き続けてきたのではないか、というひそかな思いがあってのこの句だったのです。
息白しの句も何人かに採られて、あとで重粒子線治療のことも話題にのぼりました。病気のことになると話がもりあがります。
ということで、最後に新年会の打ち合わせをして、今年の句会のしめとなりました。

〈12月13日にフェイスブックに投稿したものです。〉

今日の拙句です。

空蝉を葉裏につけて青木の実

倫敦の焼芋の味漱石忌

レノン忌や養護の子らは平和の徒

車椅子の老婦あふむく大聖樹

極月や畳の部屋の夜の匂ひ

庭の青木が今年も実をつけています。ふと気づくと、葉裏に蝉の殻、もう半年近くをそんなところにしがみついていたのです。
二句目、子規は、亡くなる前年に、ロンドンの漱石に手紙を出しています。その中に、脈絡なく「倫敦ノ焼芋ノ味ハドンナカ聞キタイ」という一節が挿まれています。漱石は、それをどんなふうに読んだかわかりませんが、子規は返事を聞くこともなく亡くなりました。結局、問いかけは宙に浮いたまま。それをもう一度問いかけようという句です。しかし、そもそもロンドンに焼芋なんてあるのでしょうか。
三句目、養護学校(今の支援学校)で戦争の劇を上演したとき、最後に「イマジン」を皆で歌ったことがあります。
ということで、今日は青木の実の句。

夕凍(ゆふじみ)のにはかに迫る青木の実  飯田龍太

夕方になるとにわかに凍みてくる今の季節。

〈12月22日にフェイスブックに投稿したものです。〉

今日の拙句です。

昼の月いくたび見ての柚子湯かな

大根すりかけらを妻のほほばりて

ドライアイの目薬を買ふ降誕祭

ポインセチア抱へパジャマのやうな服

近つ飛鳥の古墳公園をほとんど毎日散歩していますが、時間は日によって違います。散歩の途中、ふと空を見上げると昼の月。そんなことが重なり、今年は昼の月を何度見たことか。
ということで、今日は柚子湯の句。

冬至湯の柚の香憑きたる思ひごと  飯田龍太

冬至湯に浸っていて、柚の香に誘い出された「憑きたる思ひごと」とはどのようなものなのでしょうか。「憑」の一字を遣うことによって、読むものをヒヤリとさせるような、怖ささえ感じさせる句になっています。


2018.1.1
俳句

〈12月のフェイスブックに投稿した拙句です。〉


自動ドア後ろで閉まる開戦忌

 (神戸港に巨大クリスマスツリー)
ミサイルを運ぶ車輌で聖樹来る

煮凝りやおさなが小骨舌の先

ペア帽子老老の試歩冬紅葉

実南天供華に加へてすでに落つ

子に一つ未刊の論文龍の玉

冬苺兄弟が老い吾も老ゆ

メタセコイヤの朱くふぶくや開戦忌

二十四時間介護の君に去年今年

檜葉垣の脂(やに)匂ひきて日短

鴛鴦や父の形見の赤マフラー

あかんべえアインシュタイン着膨れて

言ひ淀む「じゅうりゅうしせん」息白し

河内野に初雪にして一夜雪

ハンチング揃ひの試歩や返り花

マスクして阿修羅に魅入る車椅子

空蝉を葉裏につけて青木の実

倫敦の焼芋の味漱石忌

レノン忌や養護の子らは平和の徒

車椅子の老婦あふむく大聖樹

極月や畳の部屋の夜の匂ひ

昔見し狐火孫に云ふべきや

着脹れてざしきわらしでありしころ

痩せぎすの仏もゐます冬木立

壁ガラス老いの不様の漱石忌

極月や山椒の枯木押し倒す

昼の月いくたび見ての柚子湯かな

大根すりかけらを妻のほほばりて

ドライアイの目薬を買ふ降誕祭

ポインセチア抱へパジャマのやうな服

数へ日のあはや階段踏み外す

数へ日のレジ牛蒡切る小包丁

掃納煙にシャドーボクシング

天つ日々刹那に失せし霰かな

大年の翁の髭の煤けをり

除夜の坐に線香すでに改まる

除夜詣千手の寺の蛸の足

なかなかに榾火くすぶる除夜詣

形よき孫の頭や伊勢神楽


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