「うずのしゅげ通信」

 2020年5月号
【近つ飛鳥博物館、河南町、太子町百景】
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2020.5.1
新型コロナウィルス

4月にフェイスブックに投稿した句の中で、新型コロナウィルスを詠んだものです。

4月5日
  (エイプリルフールですみますように)
対数で目盛る死者数エイプリルフール

この句、コロナウィルス、先日、朝日新聞に村山斉さんが、各国の死者数を対数で目盛ったグラフで比較、 論じておられました。日本はいま危ういところですが、そのようなグラフでしか描けないような事態になりませんように。

4月10日
  (スーパームーンの夕べ、緊急事態宣言)
今宵ばかりは春満月も物遠に

七日のスーパームーンは、とてもきれいでした。八日、昼間は黄砂のためか遠くの山並みが霞んでいて、 それがあってか夕暮れてからの月は少し赤っぽく見えました。七日に緊急事態宣言が出たこともあって、 不安で落ち着かない4月、5月になりそうです。俳句を詠むことにも、身が入らないような思いがどこかにあります。

4月13日

  (新型コロナウィルス)
社会的距離なぞと云ふ葱坊主

4月19日
  (医療崩壊前夜)
トリアージの識別の赤藪椿

医療崩壊が迫っているといわれています。トリアージもいよいよ現実のものになりつつあります。 新型コロナウィルス感染症がわかってからの期間、人工呼吸器やECMO、医療用マスク、入院病床の準備など、 どうしてできなかったのでしょうか。武漢の状況を見れば、こういうことになるだろうことは想像できたはずなのに。

4月24日
  (非常事態宣言下)
亀鳴くや平気に生きるはなほかたし

この句、子規のつぎのことばを念頭に。
「余は今まで禅宗のいはゆる悟りといふ事を誤解して居た。悟りといふ事は如何なる場合にも平気で死ぬる事かと思って居たのは間違いで、 悟りといふ事は如何なる場合にも平気で生きて居る事であった。」(『病床六尺』)
時節がら、あらためて「平気で生きて居る事」のむずかしさを痛感しています。

新型コロナ感染症の収束が見えません。日記がわりに俳句で状況を詠んでおこうと考えています。


2020.5.1
フェイスブック

〈2020年4月24日にフェイスブックに投稿したものです。〉

「今日の拙句です。

  (非常事態宣言下)
亀鳴くや平気に生きるはなほかたし

  (早くも牡丹が)
犬のるす風の牡丹になつかるる

藤散るや中継ほつほつ声途切れ

千の雨傘ほどく都市あり木々芽吹く

忌日あまた季語に散りばめ花水木

  (現役の頃、養護学校で)
アール・ブリュットと云ふ三色ペンの桜鯛

最初の句、子規のつぎのことばを念頭に。
「余は今まで禅宗のいはゆる悟りといふ事を誤解して居た。 悟りといふ事は如何なる場合にも平気で死ぬる事かと思って居たのは間違いで、 悟りといふ事は如何なる場合にも平気で生きて居る事であった。」(『病床六尺』)
時節がら、あらためて「平気で生きて居る事」のむずかしさを痛感しています。
二句目、牡丹は夏の季語ですが、すでに咲いているのを見かけます。
六句目、現役の頃、養護学校(支援学校)の職場で美術の先生に見せてもらった生徒の絵。


2020.5.1
俳句


〈2020年4月のフェイスブックに投稿した拙句です。〉

花屑を掃く箒目も老いにけり

ぶらんこに木のひねりぐせ子ろの声

今年ばかりの鍬に花韮匂ひけり

チューリップに見とれ遺影がふと近し

  (エイプリルフールですみますように)
対数で目盛る死者数エイプリルフール

地を割りて肘のごときが蕨の芽
  (スーパームーンの夕べ、緊急事態宣言)
今宵ばかりは春満月も物遠に

花屑にてんとう虫もまぜて掃く

花吹雪地までさらなる深みまで

  (聖林寺十一面観音)
十一面の三面欠きて残花かな

  (カート・ヴォネガット)
decencyと答へし作家花蘇芳

すっぱい顔の顔まね嬉し夏蜜柑

  (新型コロナウィルス)
社会的距離なぞと云ふ葱坊主

凧とほく風の人質子が呼ばふ

囀りや聞きなしと云ふ如是我聞

風花の青き空より飛花落花

恍惚の一つの形花吹雪

  (医療崩壊前夜)
トリアージの識別の赤藪椿

涙袋を締めて菫は泣きません

  (肥料設計の詩「それでは計算いたしませう」)
げんげ田の出来を賢治は尋ねけり

清志郎の歌ふ君が代山躑躅

ニッキの紙舐めし少年木瓜の花

命終を俯瞰する位置揚雲雀

  (非常事態宣言下)
亀鳴くや平気に生きるはなほかたし

  (早くも牡丹が)
犬のるす風の牡丹になつかるる

藤散るや中継ほつほつ声途切れ

千の雨傘ほどく都市あり木々芽吹く

忌日あまた季語に散りばめ花水木

  (現役の頃、養護学校で)
アール・ブリュットと云ふ三色ペンの桜鯛

蝶と木もれ日相殺しつつ消えにけり

いっこく堂の声ずらす芸春の雷

すかんぴんになって燕が目にとまる

  (従兄弟死ス)
だれかれに肖(あやか)る春の仏かな

グレタ・トゥンベリずり落ちさうな濃山吹

桜蘂降るや憑きもの落つるかに

  (観相窓を開いた大仏殿)
観相窓に収まらぬ顔黄沙せり

  (十四年前、サンパウロの墓苑にて)
異国の囀り遺骨待つあひだぢう



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