「うずのしゅげ通信」

 2020年12月号
【近つ飛鳥博物館、河南町、太子町百景】
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2020.12.1
無名ということ

11月23日にフェイスブックに投稿したものです。

「今日の拙句です。

  (清水眞砂子さんのことば)
ポインセチア無名勝ちとるまでの紅

洗濯機の沈思黙考冬ぬくし

八面の観音ゆかし花八手

影のごとセロに寄り添ひ冬ざるる

冬ぬくき遠き記憶もありにけり

肘まくら日時計のごと日向ぼこ

今日の「天声人語」に萩原慎一郎さんの歌集『滑走路』から何首かが引用されていました。 小さい器とは言え俳句や短歌も、やはり人生からしぼりだされたものでなければ、ほんとうに人を感動させることはできないのだろうと、 あらためて考えさせられました。
一句目、ときどきは他人が読んで意味不明な句も、人それぞれの読み方があるのだからと、 不明なままあえて投稿することもあるのですが、 この句、言葉の出処だけは説明が必要かもしれません。
先日のこころの時代「己の影を抱きしめて」に清水眞砂子さんが出ておられました。 自身が翻訳された『ゲド戦記』について主に話をされていましたが、その中で一番心に残ったのが「無名を勝ち取る」という言葉でした。 「世界に希望が残されているとしたら、それは名も無き人々の中にある」という『ゲド戦記』の言葉を敷衍したもののようです。
無名ということを重視する清水さんの考え方、とても感動しました。興味のある方はまたご覧ください。
ちなみに、ポインセチアというのは人の名前、こんなところに名前を遺して、当のポインセットさんは、 天国でどう思っておられるのでしょうか。」


2020.12.1
フェイスブック

〈2020年11月17日にフェイスブックに投稿したものです。〉

「今日の拙句です。

  (拉致前日、めぐみさんからプレゼントされた櫛)
一本の櫛抽斗に神無月

  (以前に、近つ飛鳥博物館で)
握手したよ十一月のロボットと

  (得生寺)
金泥も黒にまぎるる小春仏

息を止めてと声やさしかり神無月

冬座敷死は死なるるを定めとし

天気とは天子の機嫌小春かな

十月から十一月にかけて、まず手術があり、予後の診察、検査、予防接種なども重なって、病院通いが続きました。
手術の前には、コロナの抗原検査も受けさせられたのですが、結果は陰性ということで、無事手術に至りました。
大阪では、またコロナ流行の波が襲ってきているようです。注意が必要ということでしょうが、 私の場合、普段の生活が自粛のようなものですから、生活自体がそんなに変わるということはありません。 人混みに出る機会を少なくするために、買い物をまとめるくらいのものです。
一句目、11月15日で横田めぐみさんが拉致されて43年。
六句目、以前に訪れた十津川の歴史民俗資料館で天皇の綸旨に「天気如此(御名御璽)」というのを見た覚えがあります。 句では機嫌としましたが、この綸旨の場合は意向と解したほうがいいかもしれません。」


2020.12.1
俳句


〈2020年11月のフェイスブックに投稿した拙句です。〉

仏飯に性あらはるる十三夜

七十余年身もねじれたる後の月

  (眼鏡を新しくして)
二つの月に二つの影や十三夜

術中にはまりて庭にいのこづち

  (医者との会話)
秋の風に追ひつめられて吹き溜まり

  (十四年前、ブラジルへ)
天の川を一泊五日の憂ひもて

    (金芝河)
飯(めし)は天ですと詩人の詠みし今年米

ねこじゃらし穂は魂を抜くやうに

蓑虫も仮の宿りのダンボール

今生はいつ色褪する秋の風

残る虫消えて無名の闇となる

灯火親しペンのレ点に古色あり

  (叡福寺)
街道は塔にますぐや秋の雲

  (幼き頃)
仏塔のごとき藁塚子に高し

立冬や垂直に打つ疫注射

  (叡福寺)
立冬や塔高からず太子廟

  (文化祭の劇)
カンペ読むざしきぼっこや秋うらら

  (宮沢賢治「どんぐりと山猫」)
どんぐりも Lives Matterと思ひけり

  (老農夫)
妻のことをんなでとほし今年米

うわごとや記憶はじめの林檎汁

体重計壊れ浮き身の柚子湯かな

吹き抜けに灯のなきツリーそぞろ寒

  (蓮如さんの「御文章」)
徳音(とくいん)のことば見つけて灯火親し

秋冷に曇ることなき古鏡かな

  (拉致前日、めぐみさんからプレゼントされた櫛)
一本の櫛抽斗に神無月

  (以前に、近つ飛鳥博物館で)
握手したよ十一月のロボットと

  (得生寺)
金泥も黒にまぎるる小春仏

息を止めてと声やさしかり神無月

冬座敷死は死なるるを定めとし

天気とは天子の機嫌小春かな

  (清水眞砂子さんのことば)
ポインセチア無名勝ちとるまでの紅

洗濯機の沈思黙考冬ぬくし

八面の観音ゆかし花八手

影のごとセロに寄り添ひ冬ざるる

冬ぬくき遠き記憶もありにけり

肘まくら日時計のごと日向ぼこ

  (新型コロナウイルス感染症)
棒グラフで統ぶる皇帝ダリアかな

銀杏黄葉半身(はんみ)ばかりが散り失せて

林檎汁年へて鈍(なま)るおろし金

年年見かくもひととせ悲し帰り花

自閉の君がけふは先頭冬うらら



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