「うずのしゅげ通信」
2021年5月号
【近つ飛鳥博物館、河南町、太子町百景】
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2021.5.1
それでは計算いたしませう
毎日散歩をしている道の脇にはいくつかの田んぼに蓮華草がきれいに咲いています。
もう鋤かれた田んぼもあります。
その田んぼを眺めていると、宮沢賢治の一つの詩が思い浮かんできます。
「それでは計算いたしませう」という詩です。
計算というのは、彼が羅須地人協会時代に近所の農民を相手に、その人の田んぼの肥料設計をする、
その肥料の計算のことです。その聞き取りの様子がこの詩に仔細に描かれています。
単なる詩ではなく、その肥料設計の過程を詩にしているのです。
賢治の農業に向かう考え方が如実にわかる詩です。
彼の肥料設計は病気を押して死ぬまで続けられ、結局二千枚近くの肥料設計書を書いたということです。
それでは計算いたしませう
場所は湯口の上根子ですな
そこのところの
総反別はどれだけですか
五反八畝と
それは台帳面ですか
それとも百刈勘定ですか
いつでも乾田ですか湿田ですか、
すると川から何段上になりますか
つまりあすこの栗の木のある観音堂と
同じ並びになりますか
あゝさうですか、あの下ですか
そしてやっぱり川からは
一段上になるでせう
畦やそこらに
しろつめくさが生えますか
上の方にはないでせう
そんならスカンコは生えますか
マルコや・・はどうですか
土はどういふふうですか
くろぼくのある砂がゝり
はあさうでせう
けれども砂といったって
指でかうしてサラサラするほどでもないでせう
堀り返すとき崖下の田と
どっちの方が楽ですか
上をあるくとはねあげるやうな気がしますか
水を二寸も掛けておいて、あとをとめても
半日ぐらゐはもちますか
げんげを播いてよくできますか
槍たて草が生えますか
村の中では上田ですか
はやく茂ってあとですがれる気味でせう
そこでこんどは苗代ですな
苗代はうちのそば 高台ですな
一日一ぱい日のあたるとこですか
北にはひばの垣ですな
西にも林がありますか
それはまばらなものですか
生籾でどれだけ播きますか
燐酸を使ったことがありますか
苗は大体とってから
その日のうちに植えますか
これで苗代もすみ まづ ご一服して下さい
そのうち勘定しますから
さてと今年はどういふ稲を植えますか
この種子は何年前の原種ですか
肥料はそこで反当いくらかけますか
安全に八分目の収穫を望みますかそれともまたは
三十年に一度のやうな悪天候の来たときは
藁だけとるといふ覚悟で大やましをかけて見ますか
2021.5.1
フェイスブック
〈2021年4月19日にフェイスブックに投稿したものです。〉
「今日の拙句です。
指パッチンがマイブームの子豆の花
桜蘂降るを地団駄踏みてをり
折れ竹に野藤の花の重さかな
(猪の電気柵)
電気柵の並びの薊けふ刈られ
すかんぽや檻罠の扉(と)は赤錆びて
ユニセフの封書は妻に痩せ蕨
毎日散歩の途上目にした草花の(現在、あるいは過去の)風景を詠んだ句です。
コロナの感染が大阪の南部にも広がって来つつあり、不安を感じています。
しかし、そんな中、平常心を失わないことも大事かと思い直して詠んだものです。
一句目の指パッチンとマイブームということば、どうかと迷ったのですが思い切って遣ってみました。」
2021.5.1
俳句
〈2021年3月のフェイスブックに投稿した拙句です。〉
花筏砂州また砂州と縁取りて
蛇穴を出でて塒(とぐろ)を巻き返す
俎にさみどりにじむ土筆和
過去帳にわが拙き手つくしんぼ
春の蛇荷を解き暦巻き返す
花なれば老農も褒む痩せチュウリップ
(二上山)
あしひきの悲劇の山も笑ひけり
(本を大量に処分して)
一生(ひとよ)を捨ててなほあるごとし本おぼろ
朧夜の髭の煤けし翁面
抗がん剤を押して筍置きゆけり
灯明田は古き呼び名や紫雲英咲く
光るものを飲み白鷺の白まさる
指パッチンがマイブームの子豆の花
桜蘂降るを地団駄踏みてをり
折れ竹に野藤の花の重さかな
(猪の電気柵)
電気柵の並びの薊けふ刈られ
すかんぽや檻罠の扉(と)は赤錆びて
ユニセフの封書は妻に痩せ蕨
玻璃越しの弥陀の昏さや躑躅映ゆ
たちまちに笑ひ空疎に花牡丹
(養護学校教師として、二句)
この子残してと幾度聞きしか花の冷
クレーン現象知りて悲しき春の雲
過去帳にわが手はひとりつくしんぼ
見える化とや風のさざなみ花水木
春惜しむ家を毀つと云ふ対話
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