「うずのしゅげ通信」

 2021年9月号
【近つ飛鳥博物館、河南町、太子町百景】
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2021.9.1
銃後の母

〈2021年8月30日にフェイスブックに投稿したものです。〉

「今日の拙句です。

  (1937年の母)
見知らぬ母や南瓜(なんきん)神輿真ん中に

貨物列車の幻聴二夜夜長かな

稲光雲をあふれて零れくる

早逝と聞けば身構ふ蚊遣香

  (2006年9月名古屋のブラジル領事館にて)
ほぼ縦書きに葡語(ポご)の署名も居待月

パスポート手に踏みてゆくいわし雲

乗り継ぎて二泊五日の夜長かな

まだまだ暑い日が続いています。移ってきた住まいにも少しなじんできました。
今日は病院に行ってきました。先週の検査の結果が出ていました。数値に少し気がかりなところはあるものの、 とりあえずどうこうということはないようです、引越でかなりむりをしたので、気がかりだったのですが、 どうにか無事乗り越えられたようです。
一句目、色あせた一枚の母の写真を詠んだものです。これまでにも、一、二度この写真を詠んだことがあります。 日本軍が南京を占領した年(1937年12月)、母の勤めていた女学校で「南京取った」ということで、 生徒たちがなんきん神輿(=かぼちゃ神輿)を手作りして、練り歩いたようです。 (大阪ではかぼちゃのことをなんきんと云います。)母が写っているのは、そのときの職員の記念写真だと思われます。 侵略を銃後の庶民がどのように後押ししたのかを証する歴史の一コマです。
五、六、七句は、私の心覚えの句です。」









2021.9.1
フェイスブック

〈2021年8月6日にフェイスブックに投稿したものです。〉

「今日の拙句です。

  (五日夕方、妻と散歩)
西の茜に東の茜明日原爆忌

東の茜落蝉の翅染めてをり

  (八月六日)
一分の黙祷蝉の声に和す

引っ越してきた土地は、少し小高い丘陵地であり、夕焼けがよく見られるのです。 これは住んでみなければわからないことで思わぬ儲けものでした。 だから、金剛山や葛城山もよく見えます。これまで住んでいたところよりよく見えるほどです。 住んでみてはじめてわかったことがもう一つ、このあたり一帯は樹木が多くて、今の季節、 一日中蝉の鳴き声が途切れることがありません。やかましいことはやかましいのですが 、蝉好きの私にとってはとても幸せなことです。
広島は、今日、76回目の「原爆忌」。 ということで、三句詠んでみました。昨日の散歩の夕焼け、西も東も、空の周り一面を茜色に染めて、 普段あまり目にしないような風景でした。」


〈2021年8月17日にフェイスブックに投稿したものです。〉

「今日の拙句です。

茜ほのかに夕弦月や敗戦忌

  (捨てられないものを焚き火で)
夏の火に焚べて手強き軍隊手牒

  (土門挙さん『古寺巡礼』)
蝉しぐれ『古寺巡礼』を呆(ほう)けつつ

  (赤ちゃんの寝際のぐずりを母は「寝どろ」と)
ゆくりなく寝どろ漏れ来る虫の闇

俳句読めば老いのリアルや虫の闇

だんじりの提灯消して星飾り

八月十五日夕、散歩にでると雲が夕焼けていて、空全体がうっすらと茜色に染まっています。 そんな中、南の空に上弦の月がかかっていました。ほのかに茜色を帯びて。
二句目、引越の前日、それまでの片付けでどうしても捨て難く残しておいたものを燃やしました。 父の軍隊手牒もその一つ。
三句目、ほとんどの本を処分してきたのですが、土門挙の写真集『古寺巡礼』は残しました。 これからの楽しみのために。」


2021.9.1
俳句


〈2021年8月のフェイスブックに投稿した拙句です。〉

  (幼なじみも同病に)
もう読めぬ君のアカハタ晩夏光

初蛍予感ある子の落ち着かず

  (黒い雨裁判に決着)
黒い雨が軍事機密でありし夏

黒い雨へばりつきたるごと熟柿

  (少年Aの記憶)
被爆者夫婦西瓜の種を茣蓙に干し

夜盗虫は愉快犯なり花苗無残

  (引越)
遺影の笑みを持ち来たりしや戻り梅雨

家移りに忘れきしもの戻り梅雨

稲光狗尾草も戦ぎけり

一跨ぎできるか老いの溝の蓼

風呂窓の夕映え守宮ほの紅く

パンダの箱の隙間に目覚め蝉時雨

  (引っ越し後も時々は近つ飛鳥風土記の丘を散歩)
死者になほ伸び代あるや夕かなかな

膨張宇宙かなかなの声みちみちて

落蝉やおほかたは翅整へて

  (五日夕方、妻と散歩)
西の茜に東の茜明日原爆忌

東の茜落蝉の翅染めてをり

  (八月六日)
一分の黙祷蝉の声に和す

茜ほのかに夕弦月や敗戦忌

  (捨てられないものを焚き火で)
夏の火に焚べて手強き軍隊手牒

  (土門挙さん『古寺巡礼』)
蝉しぐれ『古寺巡礼』を呆(ほう)けつつ

  (赤ちゃんの寝際のぐずりを母は「寝どろ」と)
ゆくりなく寝どろ漏れ来る虫の闇

俳句読めば老いのリアルや虫の闇

だんじりの提灯消して星飾り

空蝉に恵みの雨の幹くだる

  (西東三鬼「頭悪き日やげんげ田に牛暴れ」)
頭悪き日と云ふうつつ蝉しぐれ

泡立草プルトニウムの黄の花粉

あわだちそうに悼まるる人もゐて

電柱の根方鶏頭傾ぎをり

市聖(いちのひじり)の六音六仏葛の花

  (1937年の母)
見知らぬ母や南瓜(なんきん)神輿真ん中に

貨物列車の幻聴二夜夜長かな

稲光雲をあふれて零れくる

早逝と聞けば身構ふ蚊遣香

  (2006年9月名古屋のブラジル領事館にて)
ほぼ縦書きに葡語(ポご)の署名も居待月

パスポート手に踏みてゆくいわし雲

乗り継ぎて二泊五日の夜長かな



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