「うずのしゅげ通信」

 2022年3月号
【近つ飛鳥博物館にて】
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2022.3.1.
ウクライナ侵攻

〈2022年2月24日にフェイスブックに投稿したものです。〉

「今日の拙句です。

  (反響して)
あらぬ方(かた)に恋猫の声街中は

冬の年輪殻まるごとがかたつむり

いつより残生全天冬茜

棄て句には句にならぬ父母干鰈

  (数年前、中山寺の腹帯)
授かりし腹帯(はらおび)立てて桜餅

啄まるるや赤実の黐に春の雪

  (ウクライナ)
戦争がはじまるよーと恋猫の声塀むかふ

世界のどこかで戦争がはじまりかけていると思うと底深い不安を感じてしまいます。
ケニアの国連大使キマニさんが演説でこんなふうに言われたそうです。(2.24朝日新聞)
(ウクライナの)「「この状況は我々の歴史と重なる」と切り出し、 アフリカの国境は「植民地時代のロンドンやパリ、リスボンなど遠い大都市で引かれた」と指摘。……終盤、 キマニ氏はこう強調した。「我々は新しい形の支配や抑圧に手を染めることなく、 いまは亡き帝国の残り火から立ち直らなければならない。」」
ウクライナへの介入は、まさにいつかきた道の感があります。
かつて列強に伍すべく同様の振る舞いに及んだ日本の過去も思い出されます。
四句、五句は以前に詠んだ句を取り出してきたものです。こういった表現は、 俳句だからこそのものだと思います。他の詩形では詠めない日常の断片であり、大切にしてゆきたい句です。
六句、今朝黐の木に鳥が群れて赤実をついばんでいました。これまで黐の木を見るたびに、 なぜこのたわわにみのった赤実を食べにこないのかとふしぎに思っていたのです。よほどまずいのか、 毒があるのかとも。しかし、それでは鳥の力を借りて、種をまくことができません。 やはり食べる時期というものがあるのでしょうね。やっとおいしくなったのかもしれません。」


2022.3.1.
フェイスブック
〈2022年2月27日にフェイスブックに投稿したものです。〉

「今日の拙句です。

春の素足のことなら大き仏足石

父晩年の隠れ煙草や湯冷めして

  (ウクライナ侵攻の日は高校の卒業式)
卒業証書丸め砲声聞きしか君よ

鯛焼の湯冷めしてをり阪急電車

  (確定申告を終えました)
傘巻くは尾を巻くに似て納税期

  (賢治の妹のトシ)
トシニフヰンステイダイビヤウヰンハヤリカゼ

六句、2019.2にフェイスブックに投稿した句を再録したものです。なぜこんな句を詠んだのかわかりませんが、 そのときのコメントは次のようなものでした。
「宮沢賢治の妹トシさんは、日本女子大に在籍していた1918年12月、インフルエンザのために入院しました。 この年のインフルエンザはスペイン風邪と呼ばれて世界的に大流行し、日本でも多くの人が亡くなっています。 (賢治が)親元にそのことを知らせるための電報という想定の句です。」
奇しくもその百年後、2019年12月に新型コロナウイルス感染症がWHOに報告され、 日本では翌年の1月15日に最初の患者が見つかり第一波がはじまったのでした。」



2022.3.1.
俳句


〈2022年2月にフェイスブックへ投稿した拙句です。〉

春萌す二分の一のバイオリン

  (『苦海浄土』に無塩(ぶえん)のことば)
酢橘添へ無塩(ぶえん)の鰯節分会

節分や恙ある身の無塩の鰯

  (テトラパックの豆)
どう転がしても角の立つ豆鬼やらひ

テトラの豆に角立ち疫鬼遣らひけり

箸先噛みて越の竹箸ぼたん雪

川面縫ふひかりの蛇行寒の明け

終末時計残(ざん)百秒の立春大吉

笹生(ささふ)に寝(い)ねて松渡る風冬深し

ねんねこにひよめきちかし匂ひけり

昼の月この地に住まふ僥倖に

一遍も正座せぬまま一月尽

別室に寝(い)ねて春月寝(い)ねしまま

いつまで冬眠まむし注意の古看板

  (驚きました。なんなのでしょう?)
ちぎりし葱のあとの葱より水の棒

  (七日、プーチン、マクロン会談)
核大国とのみの矜恃か冴返る

何待つとあらねど老いの春待つは

いまだなじめぬ老いと云ふもの春を待つ

母の忌や蔦をほどきて実南天

  (小学校の凧揚げ)
寒鴉軒並み低き凧ばかり

心理ゲームにしてしまう癖寒鴉

おさがりはバレンタインの妻のチョコ

  (養護学校の教師でありしとき)
母チョコは最後の砦バレンタインデー

町場は耳の方向音痴猫の恋

うなさるるを夢ごと揺する霜夜かな

  (老いの遅速、三句)
老いに遅速と云ふはある柚子湯かな

是非もなき老いの遅速や春仏

とんとんと揃へて束(そく)るひね蕨

十歳(ととせ)のデブリ糸引く芋の煮転がし

生存率の表あらたむる雨水かな

  (反響して)
あらぬ方(かた)に恋猫の声街中は

冬の年輪殻まるごとがかたつむり

いつより残生全天冬茜

棄て句には句にならぬ父母干鰈

  (数年前、中山寺の腹帯)
授かりし腹帯(はらおび)立てて桜餅

啄まるるや赤実の黐に春の雪

  (ウクライナ)
戦争がはじまるよーと恋猫の声塀むかふ

春の素足のことなら大き仏足石

父晩年の隠れ煙草や湯冷めして

  (ウクライナ侵攻の日は高校の卒業式)
卒業証書丸め砲声聞きしか君よ

鯛焼の湯冷めしてをり阪急電車

  (確定申告を終えました)
傘巻くは尾を巻くに似て納税期

  (賢治の妹のトシ)
トシニフヰンステイダイビヤウヰンハヤリカゼ



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