「うずのしゅげ通信」
2022年6月号
【近つ飛鳥博物館にて】
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2022.6.1.
ウクライナ侵攻W
〈2022年2月〜5月にかけてフェイスブックに投稿したウクライナ侵攻に関わる句です。〉
最初の句は2月24日にフェイスブックに投稿した中の一句です。
ウクライナ侵攻がはじまってすぐの投稿で、そのときの文章の一部も再録しておきます。
「 (ウクライナ)
戦争がはじまるよーと恋猫の声塀むかふ
世界のどこかで戦争がはじまりかけていると思うと底深い不安を感じてしまいます。
ケニアの国連大使キマニさんが演説でこんなふうに言われたそうです。(2.24朝日新聞)
(ウクライナの)「「この状況は我々の歴史と重なる」と切り出し、
アフリカの国境は「植民地時代のロンドンやパリ、リスボンなど遠い大都市で引かれた」と指摘。……終盤、
キマニ氏はこう強調した。「我々は新しい形の支配や抑圧に手を染めることなく、
いまは亡き帝国の残り火から立ち直らなければならない。」」
ウクライナへの介入は、まさにいつかきた道の感があります。
かつて列強に伍すべく同様の振る舞いに及んだ日本の過去も思い出されます。」
続けて、3月のウクライナ関係の句です。
(『罪と罰』)
地に口づけよとソーニャは言へり落椿
(いつの日か)
春泥に口づけロシア兵ウクライナ兵
木の家にシェルターはなし雛納め
逃げ水の野をゆく戦車追ひつけず
ふたたびを311の電源喪失
(ウクライナ、二句)
ようく見なさい轍乱るる春の泥
遠き戦争遠き死はなしふきのたう
続けて4月のウクライナ関係の句です。
(ウクライナ、三句)
春泥に日々忸怩たる思ひあり
灰燼の街にも色の花のひとひら
三月の色なき街のスマホかな
(1986年のゴールデンウィーク、奈良公園に遊ぶ)
チェルノブイリの日や飛火野の松花粉
(中国の胡偉氏)
約まりは永久(とは)の国益万愚節
花冷えや士気のあがらぬ兵たりし父
ロシア侵攻恥辱に加へ三月尽
(ある歌人に聞きし中国の柳絮)
百年の遺恨降り積む柳絮かな
ニホンタンポポ真中を猪よけ鉄条網
続けて5月のウクライナ関係の句です。
(ウクライナ、三句)
原子野の色なき五月蛇苺
戦況に七曜あらぬ四月馬鹿
花錆びて戦車も錆びる卯月かな
(ウクライナ、三句)
数メートル先の戦争柿の花
シェルター出るや深きみどりの十薬に花
シェルター出るや原子野まぶしどくだみの花
(小嶋洋子氏の句「地下鉄に息つぎありぬ冬銀河」)
地下鉄に息つぎありて八月危ふし
ウクライナ侵攻、どうも長期化する模様です。そうなると、犠牲者が、市民においても、軍人においても増えすばかりです。
なんとか早く戦いを終わらせる道はないのでしょうか。速やかな終息を願うばかりです。
2022.6.1.
フェイスブック
〈2022年5月7日にフェイスブックに投稿したものです〉
「今日の拙句です。
(幼い頃)
世が世なら甲種と言はれ蛇苺
蛭の傷母に隠して長ズボン
(理科室の人体模型)
乾拭きの五臓を嵌めて夏来る
「OK, Google」と呼びかけてみる葱坊主
メーデーの下り坂にて著莪の花
(高校生の自転車が追い越してゆく)
背なのギターを荷台に立てて聖五月
暦日のごと球根を干す立夏かな
散歩には最適の気候です。
小さな庭で掘り出したチューリップの球根を妻が干しています。来年のために。
先日近つ飛鳥博物館に立ち寄った時の写真も添えておきます。」
私達の歳になると、来年は、いや明日もまたどうなるかわかりません。
しかし、だからといって手を休めることはできないのです。
旧約聖書の「コヘレトの言葉」につぎのようなことが書かれています。
「朝に種を蒔き
夕べに手を休めるな。
うまきくのはあれなのか、これなのか
あるいは、そのいずれもなのか
あなたは知らないからである。」
チューリップの球根もおなじこと。来年はどうなるかわかりませんが、
しかし、それはそれとして、来年植えるためにも、球根を干しておかなければなりません。
2022.6.1.
俳句
〈2022年5月にフェイスブックへ投稿した拙句です。〉
(幼い頃)
世が世なら甲種と言はれ蛇苺
蛭の傷母に隠して長ズボン
(理科室の人体模型)
乾拭きの五臓を嵌めて夏来る
「OK, Google」と呼びかけてみる葱坊主
メーデーの下り坂にて著莪の花
(高校生の自転車が追い越してゆく)
背なのギターを荷台に立てて聖五月
暦日のごと球根を干す立夏かな
初夏のペットボトルで水を遣る
天才は要らぬ詩形や茄子の花
翡翠や老女(おみな)は機微を見逃さず
(仏壇屋さん)
お性根抜きし薄暑の仏壇二人がかり
姫女苑母は窶(やつ)るるものとして
初夏の富士孫三人の背なの幅
さくらんぼうを治む長女の威厳もて
(ウクライナ、三句)
原子野の色なき五月蛇苺
戦況に七曜あらぬ四月馬鹿
花錆びて戦車も錆びる卯月かな
寡婦の指す翡翠の影吾は追へぬ
十薬を母の干しゐてあと知らず
花あしび村の女子(おなご)も鬱を病む
乱調も楽しき青葉時雨かな
(得生寺)
左右(さう)の柱に脇侍は名のみ五月闇
(ウクライナ、三句)
数メートル先の戦争柿の花
シェルター出るや深きみどりの十薬に花
シェルター出るや原子野まぶしどくだみの花
見舞ひもならず供へもできぬ蛇苺
手暗がり写経の堂に新樹光
(竹ノ内街道)
謀叛の噂ゆきかひし道栗の花
燈明田は畑の呼び名夕立雲
小満の頭上烏に侮られ
減塩や冷やし中華の酢に噎せて
砥石のにほひのこるてのひら冷奴
古切手貼り連ねたる夏の小包
母の手ごねのあかねこ餅や半夏生
摩尼車のごと瓶じゃらじゃらとラムネ売り
気安くは並べぬ村の端居かな
宵宮の提灯出でて留守居かな
(小嶋洋子氏の句「地下鉄に息つぎありぬ冬銀河」)
地下鉄に息つぎありて八月危ふし
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