「うずのしゅげ通信」
2022年7月号
【近つ飛鳥博物館にて】
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2022.7.1.
ウクライナ侵攻X
〈2022年2月〜6月にかけてフェイスブックに投稿したウクライナ侵攻に関わる句です。〉
最初の句は2月24日にフェイスブックに投稿した中の一句です。
ウクライナ侵攻がはじまってすぐの投稿で、そのときの文章の一部も再録しておきます。
「 (ウクライナ)
戦争がはじまるよーと恋猫の声塀むかふ
世界のどこかで戦争がはじまりかけていると思うと底深い不安を感じてしまいます。
ケニアの国連大使キマニさんが演説でこんなふうに言われたそうです。(2.24朝日新聞)
(ウクライナの)「「この状況は我々の歴史と重なる」と切り出し、
アフリカの国境は「植民地時代のロンドンやパリ、リスボンなど遠い大都市で引かれた」と指摘。……終盤、
キマニ氏はこう強調した。「我々は新しい形の支配や抑圧に手を染めることなく、
いまは亡き帝国の残り火から立ち直らなければならない。」」
ウクライナへの介入は、まさにいつかきた道の感があります。
かつて列強に伍すべく同様の振る舞いに及んだ日本の過去も思い出されます。」
続けて、3月のウクライナ関係の句です。
(『罪と罰』)
地に口づけよとソーニャは言へり落椿
(いつの日か)
春泥に口づけロシア兵ウクライナ兵
木の家にシェルターはなし雛納め
逃げ水の野をゆく戦車追ひつけず
ふたたびを311の電源喪失
(ウクライナ、二句)
ようく見なさい轍乱るる春の泥
遠き戦争遠き死はなしふきのたう
続けて4月のウクライナ関係の句です。
(ウクライナ、三句)
春泥に日々忸怩たる思ひあり
灰燼の街にも色の花のひとひら
三月の色なき街のスマホかな
(1986年のゴールデンウィーク、奈良公園に遊ぶ)
チェルノブイリの日や飛火野の松花粉
(中国の胡偉氏)
約まりは永久(とは)の国益万愚節
花冷えや士気のあがらぬ兵たりし父
ロシア侵攻恥辱に加へ三月尽
(ある歌人に聞きし中国の柳絮)
百年の遺恨降り積む柳絮かな
ニホンタンポポ真中を猪よけ鉄条網
続けて5月のウクライナ関係の句です。
(ウクライナ、三句)
原子野の色なき五月蛇苺
戦況に七曜あらぬ四月馬鹿
花錆びて戦車も錆びる卯月かな
(ウクライナ、三句)
数メートル先の戦争柿の花
シェルター出るや深きみどりの十薬に花
シェルター出るや原子野まぶしどくだみの花
(小嶋洋子氏の句「地下鉄に息つぎありぬ冬銀河」)
地下鉄に息つぎありて八月危ふし
続けて6月のウクライナ関係の句です。
(ウクライナの動画)
蝿取紙垂るる兵たるものの上
春泥を浴びて砲兵たりし父
(小学生の見た光景)
被爆夫婦の菜種干す茣蓙影ふたつ
ウクライナの夕焼け色の夕焼けかな
ウクライナ侵攻、どうも長期化する模様です。そうなると、犠牲者が、市民においても、軍人においても増えすばかりです。
なんとか早く戦いを終わらせる道はないのでしょうか。速やかな終息を願うばかりです。
2022.7.1.
フェイスブック
〈2022年6月8日にフェイスブックに投稿したものです〉
「今日の拙句です。
詩集一冊老いて新じやが持ち来る
腰痛の水無月の葱もらひけり
(ろう学校教師に)
三十三歳の手話たどたどし額の花
(友を偲んで)
梅雨寒の集ひ茶店(さてん)の椅子並べ替へ
人に遥かな雨来る予感濃紫陽花
(ウクライナの動画)
蝿取紙垂るる兵たるものの上
(高等養護学校で)
李売る生徒に和む空き教師
蚊が居て放哉父の句乳房につまづけり
存へて賢治の倍や半夏生
六句、蝿一匹逃すな、と。
サッカーの応援をする兵士の上にリボンの蝿取紙。
九句、尾崎放哉の句を読んでいて、父の句を思い出しました。
すばらしい乳房だ蚊が居る 尾崎放哉
父も似たような句を詠んでいます。
(淺田素由句集「万年青の実」より)
秋の蚊の妻の乳房につまづける 淺田素由
父の場合は秋の蚊ですが、蚊と乳房の取り合わせは同じです。
父の句に触れたついでに、句集からいくつか抜きだしてみます。
蹠より剥す飯粒花疲れ 浅田素由
紫陽花や少女剣士の土不踏
目づまりの印二つ捺す夜学生
嘘と云ふ一抹の悔いとろろ汁
つくばいに使ふ大臼白式部
三台の地車邨の音囲ひ
妻の歩に銀河は遠し万歩計
生涯に残すものなし耳袋
追ひかけて追ひつけぬ夢冬銀河
惜命の悟りは遠し生姜酒 」
2022.7.1.
俳句
〈2022年6月にフェイスブックへ投稿した拙句です。〉
詩集一冊老いて新じやが持ち来る
腰痛の水無月の葱もらひけり
(ろう学校教師に)
三十三歳の手話たどたどし額の花
(友を偲んで)
梅雨寒の集ひ茶店(さてん)の椅子並べ替へ
人に遥かな雨来る予感濃紫陽花
(ウクライナの動画)
蝿取紙垂るる兵たるものの上
(高等養護学校で)
李売る生徒に和む空き教師
蚊が居て放哉父の句乳房につまづけり
存へて賢治の倍や半夏生
春泥を浴びて砲兵たりし父
二つ夏帽一つは星の王子かな
(小学生の見た光景)
被爆夫婦の菜種干す茣蓙影ふたつ
粗相に生ききて泰山木の花闌くる
(近つ飛鳥博物館)
打ちつぱなしの壁の羨道夏鶯
ウクライナの夕焼け色の夕焼けかな
屈託を雨打つままに濃紫陽花
(近つ飛鳥の散歩道でお会いした老人)
笹百合や補聴器の耳さりげなく
涅槃図に衣(きぬ)あらためし蛇もゐて
(昔の八朔市)
アセチレン臭ふなどして夜店眩し
蜂群れてのうぜんかづらあざやけく
真昼間を睡蓮のはや閉ぢはじむ
屈託に色くすみゆく濃紫陽花
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