「うずのしゅげ通信」

 2022年9月号
【近つ飛鳥博物館にて】
今月の特集

「菩薩の微笑み」(玉里みどり)

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2022.9.1.
「菩薩の微笑み」(玉里みどり)

〈2022年8月30日にフェイスブックに投稿したものの一部です〉

先日、玉里みどりさんのお宅にお伺いしたとき、歌会「吾亦紅」の十五周年記念の合同歌集をいただきました。
「吾亦紅」は太子町で活動しておられるグループで、玉里みどりさんもそこに属しておられるのです。
玉里さんご夫婦とは、家庭的なカフェレストランをやられる以前から親しくさせていただいていて、 みどりさんの短歌も読ませていただいていました(お店は今はやめておられます)。
今回の歌集には、「菩薩の微笑み」と題して認知症を病まれた夫を詠んだ短歌二十首が掲載されています。
かつての睦まじいお二人を知っているだけに、読んでいるとつらくなる歌ばかりですが、 中でも心にのこった三首を引用させてもらいます。

「初コーヒーは爺が淹れる」という約束 十六歳に香り広がる

箸使い美しかりし夫なるに口あんぐりと次の匙待つ

何もかも呑み込みいるやに「いいんやで」 介護施設の入所告げれば

初コーヒーの歌、かつてカフェのコーヒーをたてておられた手で、約束通り孫のために淹れるコーヒー。
下の句「十六歳に香り広がる」がいいですね。
箸使いの歌。箸使いが美しかっただけに余計に募る悲しみ。
三首め、入所を告げられたときの「いいんやで」という言葉、どういう思いからだったのかと考えてしまいます。
小山正見さんの句、

「あなたのは」とばかり訊く妻さくらんぼ  小山正見

を思い出しました。


2022.9.1.
フェイスブック
〈2022年8月16日にフェイスブックに投稿したものです〉

「今日の拙句です。

手づかみで無花果喰ふも盂蘭盆会

夕立の境霞むや盆見舞

  (ろう学校に勤めていた頃)
手話で聞く銃後あたらし終戦日

昨日は本家の仏壇とお墓にお参り。
仏壇にお参りしたあと話しをしていると突然激しい夕立が。
しかたなく夕立の境の話などをしながら止むまで雨を見ていました。
三句目、ろう学校に勤めていた頃、古い職員の方に戦争中のろう者の生活について話を聞いたことがあります。
伝統的な手話と口話で話されるので、わかりにくいところもありますが、 この経験は私の中に新鮮で貴重な経験として残っています。
このような話題においては手話がいかにゆたかな可能性を秘めている言語かということを痛感させられました。」

2022.9.1.
俳句


〈2022年8月にフェイスブックへ投稿した拙句です。〉

伯父の軍服思はぬ高値終戦忌

夢の字のはらひはみ出す団扇かな

  (小学校に狂言が来た)
太郎冠者がこんな爺さん蝉時雨

  (少年の日の記憶、二句)
膝のつぼ二度打ち損じ夏の医者

つかず離れず父の背を追う夜の秋

検閲印や父の絵葉書軍馬冷す

孔雀鳴く王陵の谷晩夏光

一秒のずれを感謝の夏夕べ

人を信じて死んでゆきたい木葉木菟

  (演劇部)
玉音のLP持参夏合宿

堪ヘ難キヲ堪ヘ玉音CD鳥威し

  (深田敏夫さんの原子雲の写真)
頭上五分のスマホめきたる原子雲

  (深田敏夫さんの原子雲の写真にウクライナが重なり)
けふスマホめく原子雲見上ぐるショット

鳴きおさめ悪しき蝉なり今朝の秋

手づかみで無花果喰ふも盂蘭盆会

夕立の境霞むや盆見舞

  (ろう学校に勤めていた頃)
手話で聞く銃後あたらし終戦日

火の粉のごとくチェルノブイリの天の川

地はまはり月はやき夜の鰯雲

兵役八年その八月の写真の父よ

露の世に蓑虫宿るダンボール

ほのとありしが隣家の庭の花おくら

根っこに噛ませ忘れし斧やいなびかり

  (八月二十三日)
地蔵盆飾り上手で名を残す

  (昔の大ケ塚八朔市)
御坊さんの人形を見て葱の苗



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