「うずのしゅげ通信」

 2023年6月号
【近つ飛鳥博物館にて】
今月の特集

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私俳句「ブラジルの月」(pdf)
私家版句集「雛の前」(pdf)
2023.6.1
プロフェッショナル

〈2023年5月9日にフェイスブックに投稿したものです〉

「今日の拙句です。

  (道の辺の鳥小屋に番の孔雀)
孔雀鳴き近つ飛鳥に夏来る

終活もあらかた卯の花くだしかな

  (近つ飛鳥博物館の回廊、安藤忠雄設計)
打ちっぱなしの壁の谺も夏めきぬ

青春の句なきはさびしかたつむり

薊の棘の痛みは深し発光ス

  (NHKプロフェッショナル「チャイルドライフスペシャリスト」を観て)
みじかくもひとよのしゅくふくからすうり

今夜のNHK「プロフェッショナル」を観ました。
「チャイルド・ライフ・スペシャリスト」という、小児病棟に入院している子どもたちに寄り添い、 支える専門職である佐々木美和さんが取り上げられていました。日本にはまだ50人ほどしかいない職業だそうです。
養護学校に勤めていたこともあり、いろいろ考えさせられたのですが、個人的にいくつかとても感銘を受けた箇所がありました。
中で、亡くなっていく子どもの話もあり、佐々木さんが、アメリカに留学していたとき、子どもを亡くした母親が、 「短い一生でしたが、この子の一生を祝福してやってください」と訴える話もあって、心を揺さぶられました。
その衝撃を詠んだ句です。ここで「ひとよ」はカラスウリの花の一夜であり、また人の一世でもあります。
番組に興味がある方は、再放送もあると思いますが、またNHK+でも配信しているようなので観ることができます。」


2023.6.1
フェイスブック


〈2023年5月22日にフェイスブックに投稿したものです〉

「今日の拙句です。

  (はじめての家庭訪問)
古都なれば僧の子も訪ふ新教師

  (劇『賢治先生がやってきた』)
わが夏帽子引き継ぐ賢治役二人

夏うぐひすかくれんぼうの声の距離

すこし固めに母のサイダーいちごかん

  (歌人の故國貞裕一氏宅
師のひとくさり不空の軸に新茶待つ

最近、回想の句が増えています。意識的にそうしているわけではないのですが、人生を振り返ることが多くなっているからでしょうか。
自分の教師人生で一番充実していたのはいつか、と考えることがあります。
充実となるとなかなか難しいのですが、一番楽しかったということなら明らかです。
高等養護学校(今は高等支援学校)の一学年五十人くらいの劇に取り組んだ数年間です。
スタッフは同僚の教師です。劇は、少なくとも一人一セリフが原則、配役は希望を優先していました。
とはいえ主人公役は、かなりの台詞をかかえることになります。自閉的な児ならなんなく覚えてくれるのですが、 負担が重すぎるようなら、前半後半で一つの役を二人で分けるようなこともしていました。
まあいろいろあって、今にして思えば、それは楽しい経験でした。
五句、不空は安江不空のこと。正岡子規に師事した歌人、画家です。」


2023.6.1
俳句


〈2023年5月にフェイスブックへ投稿した拙句です。〉

  (タイムパフォーマンス)
花薺タイパもなにも十七音

ぺんぺん草ついでに耳を確かむる

  (近つ飛鳥博物館)
銅鐸はこんな音色か濃山吹

すかんぽをリュックに挿して主宰かな

  (種を蒔いた土に)
油断も隙も目まで埋まりて蟇蛙

長靴の泥田に鳴くや水温む

天気とは天子の機嫌憲法記念日

(母が遺した日本國憲法の官報號外)
憲法官報風を入るるや手は母似

未生以前の憲法官報昼寝覚

きつつきの幹まはりこむすすすすと

ややの嘆くや夏帽子の向き変ふる

  (道の辺の鳥小屋に番の孔雀)
孔雀鳴き近つ飛鳥に夏来る

終活もあらかた卯の花くだしかな

  (近つ飛鳥博物館の回廊、安藤忠雄設計)
打ちっぱなしの壁の谺も夏めきぬ

青春の句なきはさびしかたつむり

薊の棘の痛みは深し発光ス

  (NHKプロフェッショナル「チャイルドライフスペシャリスト」を観て)
みじかくもひとよのしゅくふくからすうり

児らと賢治の舞台遥けし立葵

  (引っ越して)
移り来し覚悟の夕焼け全方位

芍薬の株分け忘れ越し来る

図書館の足につまづく薄暑かな

  (臓器を欠く身となって)
人体模型のピース揃はぬ万愚節

  (授業の一環として)
かけあひの生徒から買ふ李は甘し

  (はじめての家庭訪問)
古都なれば僧の子も訪ふ新教師

  (劇『賢治先生がやってきた』)
わが夏帽子引き継ぐ賢治役二人

夏うぐひすかくれんぼうの声の距離

すこし固めに母のサイダーいちごかん

  (歌人の故國貞裕一氏宅)
師のひとくさり不空の軸に新茶待つ

冷やし中華塩控へめはスルーされ

半夏生母の手捏ねの赤猫餅

さなぶり餅は搗かぬ育ちの賢治かな

  (拙句)
二日目の気抜けサイダー推敲句

からまるや人のかたちのさくらんぼ

  (旧居)
古座敷北をずらして昼寝かな

  (思い出)
ここまでは父追ひ来たり半夏生



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