「うずのしゅげ通信」
2024年10月号
【近つ飛鳥博物館にて】
今月の特集
原民喜の俳句
フェイスブック
俳句
「うずのしゅげ通信」バックナンバー
2024.10.1
原民喜の俳句
〈2024年9月15日ににフェイスブックに投稿したものです〉
「今日の拙句です。
渋皮も些少は母の栗ご飯
花芒持つ老人に目礼す
(賢治の雨ニモマケズ手帳、民喜の被災を記した手帳、二句)
賢治、民喜の手帳カナ字の夜長かな
蜻蛉流れる空は民喜の空ならず
悲しみの際まで迫る虫の闇
パスポート九月の雲の上歩き
原民喜は、その手帳に、被爆した翌々日につぎのように記しています。
「草津アタリマデ来ルト、漸ク青田ノ目ニハイル。トンボノ空ヲナガレル。」
八月の終わりごろから、原民喜の全集を借りて拾い読みしています。
原民喜は、昭和十年から俳句を詠んでいて、被爆後「原子爆弾」という連作句(二十三句)を詠んでいるのですね。
中から二句、引いておきます。
魂呆けて川にかがめり月見草 原民喜
廃墟すぎて蜻蛉の群れを眺めやる 原民喜
「原爆小景」のいくつかの詩とは、迫力がちがいますが、それはしかたないことかもしれません。
なにしろ俳句は花鳥諷詠ですから。
そんなこともまた考えてゆきたいと思っています。」
ここで2句だけ引用した原民喜の「原子爆弾」の題された俳句は全部で二十三句にのぼります。
以下、その句を全集から引用しておきます。
原子爆弾 原民喜
夏の野に幻の破片きらめけり
短夜を倒れし山河叫び合ふ
炎の樹雷雨の空に舞上る
日の暑さ死臭に満てる百日紅
重傷者の来て呑む清水生温く
梯子にゐる屍もあり雲の峰
水をのみ死にゆく少女蝉の声
人の肩に爪立てて死す夏の月
魂呆けて川にかがめり月見草
廃墟すぎて蜻蛉の群を眺めやる
秋の水焼け爛れたる岸をめぐり
飢ゑて幾日ぞ青田をめぐり風そよぐ
飢ゑて幾日青田をめぐり風の音
里とんぼ流れにうごき毒空木
もらひ湯にまた新しき虫の声
秋雨に弱りゆく身は昼の夢
薄雲の柿ある村に日は鈍る
小春日をひだるきままに歩くなり
歳月の刈田のはての厳島
吹雪あり我に幻のちまたあり
こらへ居し夜のあけがたや雲の峰
ある家に時計打ちをり葱畑
山近く空はり裂けず山近く
2024.10.1
フェイスブック
〈2024年9月29日ににフェイスブックに投稿したものです)
「今日の拙句です。
(能登の媼、二度目の被災に言葉を失い)
存へばこんなこともと秋出水
(水抜きの穴)
切岸の萩は蛇穴塞ぎをり
満月の誰に遅れて逝く道か
徒跣(かちはだし)嘉(よみ)して咲くや曼珠沙華
(妻と)
一匹で意見の合ひし虫の闇
真円もおぼろになりて老いの月
ひさしぶりの投稿です。
朝晩は幾分か秋めいてきました。この地ではいつもいまごろ金木犀が咲き始めるのですが、
今年の花芽はまだまだ小さいままです。
「青春舞台2024」が昨日NHKで放映されていました。まだ観ていませんが楽しみです。」
2024.10.1
俳句
〈2024年9月にフェイスブックへ投稿した拙句です。〉
(台風10号が近づき早めに収穫した桃を購入)
遺影の前に早取りの桃熟れにけり
(龍雲寺)
仏足石を撫でし風なり蓮の花
未明の厠佳境に入るや虫の音も
芯まで噛んで梨の性根もほぼ分かり
(近つ飛鳥の古墳公園)
萩の曲りゆ二上山(ふたかみ)の女男(めを)重なりて
露草の青二雫眼裏に
渋皮も些少は母の栗ご飯
花芒持つ老人に目礼す
(賢治の雨ニモマケズ手帳、民喜の被災を記した手帳、二句)
賢治、民喜の手帳カナ字の夜長かな
蜻蛉流れる空は民喜の空ならず
悲しみの際まで迫る虫の闇
パスポート九月の雲の上歩き
投函の音聞き十歩月今宵
平和塔より二上山(ふたかみ)低き良夜かな
忘れられたるペットボトルも良夜かな
盗人萩の道なり月の向き騙(かた)る
盗人萩の道なり月の刹那失す
(能登の媼、二度目の被災に言葉を失い)
存へばこんなこともと秋出水
(水抜きの穴)
切岸の萩は蛇穴塞ぎをり
満月の誰に遅れて逝く道か
徒跣(かちはだし)嘉(よみ)して咲くや曼珠沙華
(妻と)
一匹で意見の合ひし虫の闇
真円もおぼろになりて老いの月
「うずのしゅげ通信」バックナンバー
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