「うずのしゅげ通信」

 2016年11月号
【近つ飛鳥博物館、河南町、太子町百景】
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落語のまくら「永代供養」

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2016.11.1
落語のまくら「永代供養」

(出囃子で落語家さんの登場)
突然ですが、人間の言うことほどあてにならんもんはありませんな。
「ぼくは、あなたを永遠に愛します。」
こんなことを言うて、「だから、結婚してください。」というんですね。
しかし、のぼせているときのこんな言葉は当てになりませんな。
この永遠はどれほどのもんやろうか、と考えてしまいます。
永い人でも、まあ一生愛し続けて、せいぜい七、八十年。まあ、そんな人はほんまれやと思いますが。 ほとんどの男は「永遠に愛します」といいながら、結婚して三年もすると、もう忘れている、 そんな男も多いわけです。
もっと短いのになると、「永遠に愛します」言うた翌日には自分の言うたことを忘れている。
人間というのは、そんなもんですな。まあ、そんなふうにはじめっから諦めていたらいいんですが。 ……
もう一つ当てにならん、永遠があります。
お寺さんにゆくと、永代供養という看板が出ていることがありますな。
お骨を永代供養します。代金は、ウン十万円とか書いてある。
あれってどうなんやろうと思いますが、みなさん、 そんなことありませんか? 永代って、永久ということですやろ。 ほんまにお骨を持っていったら永久に供養してくれるんやろうか。
お寺さんに聞いてみました。お骨は、たとえば、十三回忌までは、納骨堂に安置しておきますから、 どうぞお参りください、とおっしゃるんですわ。
それを過ぎると供養塔に入れられます。つまり、骨壷を ぶっちゃけてごちゃまぜにするんですな。
また、五十回忌までは位牌は残しておきますが、それを 過ぎると処分します、というんです。まあ、そりゃあそうですわな。五十回忌ともなると、もう 知ってるひともほとんどいませんからな。
ということで、 まあ、人間の言う永代というのは、その寿命からして、この程度のもんですわな。
ところが、ほんまに永代供養せんならんもんがあるんですわ。
何かおわかりですか。……そうです。あの放射能のゴミなんですわ。 これの供養は大変ですわな。
まずは、この放射能のゴミは、お骨と違うて、危ないんですな。
一番強烈な放射能のゴミは、ものの一分も、いやもっと強烈なんになると数秒近くにいるだけで 死んでしまう、それくらいこわいのもの らしいです。
家の周りとかの放射能を除染したり、庭を掃除して集めた放射能の弱いゴミは、 そんなに危険なことはないようですが、 それでも、そこらに放っておくわけにはいきませんわな。これはお骨とおんなじです。 お骨も放っておくわけにいきませんからな。
まあ、放射能のゴミの弱いやつは、セメントで固めて、 少なくとも五十年くらいは、地下水に溶けないように供養して、それを過ぎたら、二、三百年くらいは、掘り出さないように埋めて供養する。そんなふうになっています。……これは、まあお寺さんでもできそうですわな。床下をほってお骨のもう一つ深いところに埋めといてもいいくらいのもんですわな。
ところが、一番危険な放射能のゴミは、地下七十メートルより深い岩盤の中に閉じ込めて、 十万年間供養せんならんのですわ。
これは、まあ、人間の永遠を越えてますわな。 人間は、永遠に愛します、言うて、三日も守れんのがつねや、大事な親のお骨でも、 せいぜいが百年を守るくらいですわな。
それが人間の永遠、永代というもんですわな。 それを十万年供養せえ、いうんですから、これはめちゃくちゃですわな。
ところが、こんな処分方針を政府が決めたんですな。
電力会社が、三、四百年供養しなさい。それから後は国が立ち入りや掘ったり削ったりされへん ようにどうにか囲うて、供養するからとおっしゃるんですが、これほんまにできるんやろうか……。

ここまでが、まくらで、ここから落語に入ります。
その落語は、先月号でも紹介した、「地獄借景」−原発のゴミ処分場を地獄に?− という噺です。 副題にもあるように最終処分場を地獄に持ってゆこうという内容です。
どんなふうに展開してゆくのか、興味のある方はご一読願えたらと思います。

朗読する落語台本「地獄借景」
      −原発のゴミ処分場を地獄に?−

また、この落語を普通の劇に脚色した脚本もあります。

落語劇「地獄借景」(脚色版)
      −原発のゴミ処分場を地獄に?−


2016.11.1
フェイスブック

〈10月13日のフェイスブックへの投稿です。〉

「今日の拙句です。

鯨尺遺せし妣(はは)や藤袴

虫喰ひの熟柿落ちをり柿ほとり

ありてなき日にち薬や鰯雲


一句目、母が裁縫で使っていた鯨尺が残っています。
二句目、家のガレージの側に柿の木があって、時々虫食いの熟柿を落とします。
三句目、「ありてなし」は「あってないようなもの」。
ということで、今日は藤袴の句。

藤袴手に満ちたれど友来ずも  橋本多佳子」


〈10月25日のフェイスブックへの投稿です。〉

「今日の拙句です。

夕霧や二上山(ふたかみ)の女男(めを)重なりて

妻いねて金木犀の窓を閉づ

金木犀の粒花溜めて蜘蛛の奴(やつ)

三叉のやす傷癒えし紅葉鮒


近つ飛鳥の古墳公園を散歩していると、木立が切れて、二上山が望める場所がいくつかあります。 雄岳と雌岳が重なって見えるのです。普通二上山というと二瘤ラクダのような山容を 思い浮かべますが、それは東や西の方角から見た場合であって、 古墳公園は二上山の南なので二つの山が重なるのです。
四句目、腹腔鏡手術を受けてもう少しで三月、傷跡もかなりよくなってきました。 しかし、術後の自分を振り返ってみると、腹に三つも穴をあけられ、 まるで三叉の「やす」で突き刺された鮒のようだったと思うのです。

ということで、今日は霧の句。

霧の奥より母の声谿の声  原 裕

濃い霧の中から、母の声、谷川のせせらぎの音。」


2016.11.1
俳句

〈10月のフェイスブックに投稿した拙句です。〉

盗掘の穴より萩の零れ花

鰯雲満目の夜を妻の言ふ

犬走りに蝉穴二つ秋黴入

竹箒みぎはの蛍搦めたる

二上山(ふたかみ)を隠す霧かも歩に纏ふ

どでかぼちゃの重さ評定おほらかや

赤ままを詠ふ余生を悔しとも

銀河果つる国に香華を賜りて

菜の虫は糞(まり)も真青や秋日和

手作りのさしみ蒟蒻茸汁

「労働者諸君」の吹き出し持つ案山子

「天国と地獄」にまろぶ体育日

父母の骨納めし尼寺や実むらさき

業の深きか散りて茎立つ曼珠沙華

減塩になじむ頃ほひ薄紅葉

鰯雲十年の癒し妻と吾に

袈裟斬りに霧吹く母の躊躇はず

鵯も玻璃を隔てる気安さに

露けしや菜虫の糞の藍滲む

鯨尺遺せし妣や藤袴

虫喰ひの熟柿落ちをり柿ほとり

ありてなき日にち薬や鰯雲

朝寒や青紫蘇の種零すまで

吉野葛の包みほどかむ十三夜

子蟷螂鎌やはらかく緑愛(は)し

月の客忘れし声を聞かぬまま

はしり花惜しみて今朝の金木犀

金木犀のほとり箒の花の筋

三世(さんぜ)にわたり笹舟流して秋の水

無垢なるを菜虫潰すや帰り花

捨て所なき盗人萩の種十まり

香りに暮るる金木犀の忌日かな

夕霧や二上山(ふたかみ)の女男(めを)重なりて

妻いねて金木犀の窓を閉づ

金木犀の粒花溜めて蜘蛛の奴(やつ)

三叉のやす傷癒えし紅葉鮒

古書の函落ちて響くや神の留守

櫨紅葉映えて小暗き転害門(てがいもん)

夕暮れてさかしまに着く花野駅



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