「うずのしゅげ通信」
2016年10月号
【近つ飛鳥博物館、河南町、太子町百景】
今月の特集
短い劇「賢治花壇」
高レベル放射性廃棄物
俳句
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2016.10.1
短い劇「賢治花壇」
数日前、福島県の稲田小学校の先生から文化祭で「賢治花壇」を上演したいという
申し入れがありました。
もともとこの脚本は、クラス全員が舞台に出ることができて、できるだけ短い劇、ということで
二年前に書き上げたものです。
最近の学校は授業をこなすだけで精一杯、文化行事など、準備期間も充分取れないほど
忙しいと聞いていたからです。
それならば、内容を薄めることなく、練習もそんなにしなくても済むような、
凝縮した脚本を書いてみようと考えたわけです。そんなふうにしてできた脚本が「賢治花壇」です。
今回がはじめての舞台化ということになります。
いつもそうなのですが、上演の申し入れがあると、その脚本をあらためて読み返すことにしています。
間違いを発見して修正したり、新しいアイデアが浮かんで部分的に書き換えたりすることもあります。
今回も読み直してみましたが、あらたに手を入れなければないらない箇所はありませんでした。
一クラス全員が登場して、内容があって、上演時間が10分程度ということになると、
まともな脚本が書けるのかどうか、危ぶむ思いが先に立ってしまいますが、この脚本、
自分で言うのもおかしいですが、短いなりに考えられていて、充分に上演に耐えるように思います。
自己宣伝になってしまいましたが、興味のある方は読んでみてください。
短い劇「賢治花壇」
−クラスみんなで演じる10分の劇 〈40名〉
[10分]−
2016.10.1
高レベル放射性廃棄物
9月1日の朝日新聞デジタルに、原発の高レベル放射性廃棄物についての記事が掲載されていました。
原発から排出される放射性廃棄物には、高レベル放射性廃棄物(L1)から、
原子炉圧力容器の一部などレベルが比較的低い廃棄物(L2)、
周辺の配管などレベルが極めて低い廃棄物(L3)があります。
そのうちもっとも放射能レベルが高い廃棄物(L1)は、地下300メートルより
深くに10万年保管するとという処分方針が決まっていたのですが、規制委員会は、
とりあえず、その処分をつぎのようにするというのです。
「規制委はL1について、コンクリートなどで覆って70メートルより深い岩盤内に
少なくとも10万年間は埋める必要があると結論づけた。電力会社が管理する期間については
『数万年とするのは現実的でない』として、300〜400年間とした。
その後は、国が立ち入りや掘削がされないように対策を取るとした。」
この処分方針ははたして現実的なものなのでしょうか。
電力会社の管理期間が300〜400年間というのは可能なのか?
まあ、400年間存続している会社がありますから、それは可能なのかもしれません。
では、国が10万年という規制を設けるというのは、どうなのでしょうか?
そもそも10万年にわたる規制などというものがありえるものなのでしょうか。一国の存続、というより人類の存続そのものが危ぶまれるほどの時間を持続する規制などというものに
はたしてどんな意味があるのか。……
私は、以前、この高レベル放射性廃棄物の処分ということについて、
落語の台本を一本書いたことがあります。
読むための落語台本と銘打ち、「地獄借景」−原発のゴミ処分場を地獄に?−という題目です。
副題にもあるように最終処分場を地獄に持ってゆこうという内容です。
どんなふうに展開してゆくのか、興味のある方はご一読願えたらと思います。
朗読する落語台本「地獄借景」
−原発のゴミ処分場を地獄に?−
また、この落語を普通の劇に脚色した脚本もあります。
落語劇「地獄借景」(脚色版)
−原発のゴミ処分場を地獄に?−
2016.10.1
俳句
9月23日のフェイスブックへの投稿です。
「今日の拙句です。
夜盗虫寝込み襲ふはわれならむ
老農の厭地(いやち)を云へり秋蒔き菜
「労働者諸君」の吹き出し持つ案山子
一昨日、キャベツの苗を植え、大根の種を蒔きました。この時期、毎年悩まされるのが根切虫、
またの名を夜盗虫。芽を出したばかりの細い茎を無残に切られてしまいます。
以前、二株をやられたとき、腹立ちまぎれに詠んだのが次の一句。
根切虫愉快犯としか思はれぬ
一句目は、これと対の句として詠んだものです。一昨日、苗を植える前に、
土を掘り返して夜盗虫を七、八匹やっつけました。
だから、寝込みを襲う夜盗はオレだと。
二句目、厭地というのは、連作を嫌うこと。
ということで、今日は夜盗虫の句。
身を丸めだましてひそむ夜盗虫 阿波野青畝
にっくき夜盗虫は、この句のように土に中に身を丸めて潜んでいるのです。」
9月にフェイスブックに投稿した句です。
太子道に道標暮れて地蔵盆
秋灯や良寛歌集も捨てごろか
颱風が軍事機密でありしころ
垂直に日差しを登る蜥蜴かな
打ちつぱなしの壁の居心地秋燕
バーコードの棒と化し果て夏患者
バーコード翳して点滴今朝の秋
直(ひた)と告げらるいのちのことや百日紅
虫時雨今生の夜の真中(まなか)かな
夢現(ゆめうつつ)われ持ち上げよ虫の闇
忌を重ね人老いゆくや葛の花
長月の香(こう)の香(か)のまづ爽やかに
落し文拾ひし妻の見せず捨つ
閑人となりて見上ぐる鰯雲
長月の香煙のまづ爽やかに
をらぬこと幾日重ねて帰燕かな
閑人となりて見上ぐる鰯雲
忌を重ね人老いゆくや葛の花
秋灯や良寛歌集も捨てごろか
戦争の世紀の梨のけふ美味し
生(な)りやうの疎らに熟れし山葡萄
一本の竹伐りてその夜の月天心
河内野に千年の畦曼珠沙華
虫時雨平家群読夜もすがら
青毬を踏み割ればなほ白き栗
尾の先の跳ねるがをかし穴惑い
露草の濡るる間もなし須臾の雨
要(かなめ)はづして木鋏を砥ぐ秋の水
みのむしを掌に五つ摘み数へしむ
花芽ふふむ金木犀の忌の日かな
詠みやうの死にやうの勇獺祭忌
夜盗虫寝込み襲ふはわれならむ
老農の厭地(いやち)を云へり秋蒔き菜
「労働者諸君」の吹き出し持つ案山子
倒したる一樹の蓑虫移りける
犀の背のごとき葎や花芒
砲兵父の夜の進軍蚯蚓鳴く
蚊柱やまろき柱の西塔跡
亡き人の思ひほつほつかりんの実
今年の実去年(こぞ)の木の実の蝦夷塚
父母の骨納めし尼寺や実むらさき
姥目樫(うばめがし)伐れば蓑虫移りける
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