腱鞘炎ノート

For All Patients Who Are Troubled With TENDINITIS.
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3人目の専門医


 

3人目の専門医は2000年の5月、大学病院で出会いました。
とはいってもルーレットみたいに 当たったわけではありません。実家に出入りの植木屋さんが気に入って通ってる整形外科の開業医を、紹介してもらったのがきっかけです。
そこの先生はリウマチの専門医で、桜のこれまでの病歴と職業を考慮して
「これは手術した方が早道でしょう」という見解から、後輩の手の専門医を紹介してくれたのです。
中には手術を嫌がる患者さんもいるので、とても慎重に提案しておられましたが、私が積極的なので、紹介状は 「自分も患者も手術が適当と考える」ような内容で書かれていました。(コピーを見せてくれたところに、人柄が忍ばれますネ…笑)

紹介された手の先生の前でワガママ桜は「ここと、ここと、ここと、それからこっちと…」と
痛いところを全部指し示しました。説明ももう慣れたもんです。
「最初は4年前、チョキもできないくらい親指が曲らなかった、注射もだいぶ打った…」
そして触診です。腱が腱鞘にどれぐらい引っかかってるか、どれくらい腫れてるか触って解るらしい。
でも、整形外科医でもこれをやるのは手の専門医だけでした。(桜が通ったところでは)
まぁいつもこの段階で、「そんなにひどくないね。注射も強いし、手術なんてもってのほか」と言われるとこなんだけど、その先生はちょっと違った。
「デケルバン庇って他にも負担かかってんのやなぁ」 (そう、そう。そうなのよ。)
「ほんなら、手術しよか?」(え? うっそぉーっ!)
やはり先輩の紹介と、手術の奨励ってのが効いたのでしょうか?
「やっぱりデケルバンからやろう。ここは痛いと逃げられへんし」とのご提案に従って
右手首デケルバン氏病の腱鞘切開術をすることに。
あっという間に一週間後の手術が予約され、血液検査をし、注意事項の書いた紙と誓約書を持って桜は家に帰ってきました。
手術の不安もないことはなかったけど、4年も同じ病気で自由を奪われてりゃ前向きにもなるってもんです!


手術

 

しかし病院から渡された誓約書ってのは穏やかじゃないよね…。
「手術の合併症や後遺症などの説明を受けた上で、何かあっても了承済みです」といった文章に、サインして押印するんだから。
インターネットで調べたら、大体誰もが
「腱鞘炎の手術は外来で20分ほどで済み、いたって簡単。ただし、周囲の感覚神経に注意」 と書いてある!
質問を受け付けているサイトで聞いたりもしましたが、「100%の手術などない」と返されてしましました。
感覚神経を傷つけるとRSD( Reflex Sympathetic Dystrophy、反射性交感神経性萎縮症 ) などの症状を 呈する…という怖い1文も目にしました。
その誓約書は桜に、いたって簡単だがどんなことが起こるかわからないよ、と囁いてたのです。(;_;)
結局、考えれば考えるほどわからなくなって、非常に少ない危険の可能性を取るか、確率の高い治癒の可能性を取るか、という選択ならばと、桜は手術に踏み切りました。
もう、そのときは6:4で治る(低いじゃん!)ぐらい思ってましたよ。最悪になったら漫画どころじゃないけど(笑)。
実はこの時桜は、既に右手の痛みで原稿を落としていました。2回目でした。明らかにこのままでは廃業だったのです。手術は「どうせ辞めるならできることを全部やってから辞める決心をしたい。でないと後悔する。」という気持ちから臨んだのでした。
医師もそんなに詳しい説明はしませんでした。非常に低い可能性に怯え出したらキリがないと言うことなのでしょう。でも「スジとして話してくれるべきだ」と思う人もいるかもしれませんね。

かくして手術に至りました。「 もう、今まさに痛くて痛くて、手がパンパンです」ってわけでもない、
極めて異例な 慢性化した腱鞘炎の手術です。
でも、長い間桜を困らせてきた患部がどうなってるのか、この際専門家にナマで見てもらってはっきりさせたいっちゅーもんですよ。 でナマで見た感想・・・
「うーん、そんなにひどくないなぁ…(つながってる筋肉が2つあるのでそれぞれ確認しながら) これは…引っかかってないなぁ。こっちも…大丈夫やなぁ 」(ほんならなんで痛いねん…)
そんなんで手術してくれたのはほんとーにセンセが初めてですわ…(涙)

さて、術後です。 2時間ぐらいすると麻酔が切れるから痛いです。初日は素直にもらった鎮痛剤を飲みました。
翌日からは最低2日にいっぺんは消毒に通院。抜糸までの一週間から10日まで。
桜は、前述の紹介してくれた先輩の開業医に、執刀医から新たに紹介状を書いてもらってお世話になりました。 近いからね(笑)。
手術、創の痛み、消毒 、これは当たり前。ただ、やっぱり神経が相当痛みました。ぴりぴりするシビレ感と触って感覚のない症状も起こし、先生も「ほっそい神経触ったかなぁ…(汗)」。
術中に研修医に「ここに神経があるやろ、すぐ側通ってんねん。これに触らんようにせんと…」
とか言ってただけに、冷静そうに見えてかなり焦ってたかも(?)
神経の炎症を抑える薬(ビタミン12)をもらって様子を見ることにしましたが、かなり痛かったです。
手術の創の痛みは一ヶ月もかからないのに、神経の痛みは何ヶ月経ってもとれなかった。
先生は触ってないはずだけど、腱鞘を切る時に鉗子で神経を引っかけてよけるらしくて
その影響ではないかと…言っておられたが…真相はよくわからん(^_^;)。
「周囲の感覚神経に注意」って、ほんとに注意よね・・・


術後・痛みいろいろ

 

ここまで読んで、やっぱり手術って怖いと思った人、多いでしょう。
でも桜はその間もずっと手術してよかったと思っていました。 効果は現れたからです。
術後2日目ぐらいには、何気なく床に手をついたり 椅子から立ち上がるときにテーブルに手をついて力を入れたり、 そういうことができるようになっていました。 この4年間、手を着くという行為には必ず、手首につっかえるような痛みとも 違和感ともつかない感触が伴っていましたから。
それがないと気づいたときは 「あれ?」って感じでした。 「あれ?気のせい?」
気のせいではなかった。 それから、今までどれだけのことが変な感触を伴った状態で やっていたかわかりました。
鉛筆を握るのもそう、歯を磨くのもそう。腱鞘炎になる前私はこんな感じだったんだ! 感動ものですよ。本人も忘れていた健康なときの感触をもう1度味わえるなんて! 大げさ? いえいえ、マジです。
このHPの ■SKETCH■は、まだ包帯がとれる前に変化を楽しみたくてうちの猫を 描いたものです。
以前に比べて普通にペンを持って書けるようになっています。

その間、神経の痛みはあまり変化はありませんでした。
このあたりには橈骨神経という太い感覚神経と、それから広がる細い神経が無数に伸びているそうです。
神経は伝達機構だからか痛みが広範囲に及びます。 ただ痛みの原因が使うことだったり、1番の薬が安静だったりしないというのは 気が楽です。
寝起きやじっとしていた後に親指を曲げたりすると 一瞬飛び上がるぐらい痛いんだけど、それからは少しマシになるし せんねん灸による温灸がとても効きました。
神経痛にも温めるといいというし、神経はやはり温めれば痛みが収まるのだな。 そんなわけで1日2回も3回も、痛いところにびっしりとお灸を並べて ひたすら暖め作戦を続けましたよ。
しびれ感や痛みの範囲は少しずつ狭くなっていたので割と楽観してました。 先生も「範囲が狭くなっているなら大丈夫」と安心してたようです。
先生はほんとに別の意味で安心しただろうね(笑)。
その後この神経の痛みがどうなったかというと、 去年の夏マンションの真下で工事があり、桜はコンクリートを切断する 機械の高回転なモーターで難聴になってしまい、 その治療でステロイド剤を点滴したおかげで手首の方もかなり症状が取れたという、 全くラッキーなのかどうなのかようわからんことになったのでした。(笑)

 右手デケルバン手術痕:最近はコレと垂直に切る場合が多いみたい。その方が創が小さい。


一年後

 

こうして初めての手術を終えました。桜が受けた腱鞘切開術は腱鞘を縦に2回切り、少し幅を空けたそうです。切りっ放しの腱鞘はそのうち膜が再生し前より広いトンネルになってるようです。
1年以上がたった今、手術した部位の痛みは時々ぶり返す例の神経の痛みだけです。 鉛筆を持っても、雑巾を絞っても、何かをしたからといって痛くなることはありません。
痛むのは手首の小指側やかく指の付け根の関節、左手のデケルバン…。 相変わらず広範囲に及んでいます。(^_^;)
桜は人に手術を薦めるつもりはありません。手術は完全ではないからです。
人間の手は巧妙で繊細で、途方もない複雑なことやってのける装置です。 だから構造は緻密でデリケートで、1度損なわれた機能はなかなか完全には回復しません。
小さい範囲に骨と筋肉と腱と神経と血管が絡み合い、人間にしかできない器用な技を可能にしているのだと思います。
最初の手の専門医は「手術による痛みとか不具合があるから、これぐらいの症状ならば手術によってかえって、不快感が増すからしない方がいい」と言いました。
右デケルバンの半年後、左親指のばね指(指の付け根の内側を切開)も手術しましたが、これに関しては今でも十分に親指が曲がらない状態です。(2004年現在は問題ありません) 
桜は特に痛がりなので、手術したところの周りがなんだか痛む、理由もないのになんてことは今でも時々ありますよ。
それでももう悪化することはないのです。 それが、手術の危険性、手術前の不安、手術後の痛み、それに伴う不快感をすべて足してもお釣りがくるたった一つの価値です。
メスを入れた場所には、もう使い痛みは起こらないんです。
その後2005年までの5年間でコミックスが3冊(少っ!)出たのですが、中を見るとけっこう細かく描き込んであって、手術前に比べて絵のクォリティが格段に上がりました。
何をしても腱鞘炎がひどくなると強迫されてるようで、無気力でどんどん無関心になっていたことを考えると、そういう不自由な生活と無力感から解放されることは、多少手術の後遺症で慢性の痛みを伴ったとしても桜にはとても意味のあることでした。
手術の是非はそういう比較でしか問えないと思います。
メスを入れた場所には、もう使い痛みは起こらない、その変わり、体にメスを入れるんですから完璧に元通りってわけには行きません。
ただし、全くなんの後遺症も無くスッキリサッパリ治る人だっていっぱいいると言う事も忘れないでください!(主治医の名誉の為に)。そういう人はみんないいます。「こないだまでの腱鞘炎の痛みはなんだったの?」と。

完全でないからこそ、医師はなかなか手術をしたがりません。
蚊に刺されたぐらいの傷で腱鞘炎が治るならみんなもっと積極的に手術するでしょう。
桜の主治医が仰るには、「手というのは手術後患者さんがすぐに具合いがいいとか悪いとかわかるからな。内臓とかならすぐにはわからへんのに。みんないろいろ言うて来はる。妙なものを専門にしてしもた(笑)」
いつも結果が晒されてしまう。内臓とかならガーゼ残したまま縫合しても患者は気づかないでいたりするのに。
簡単な手術だし、日帰りで、費用も安い。それでいて結果が見えやすい。 でもって腱鞘炎以外はいたって健康だから文句ばかり言う。 ごまかしがきかない。
腱鞘炎の手術は簡単だと、みんな口をそろえて言うくせになかなか医師が手術をしたがらないのはそのへんの理由なんかもしれない。
桜の主治医は今でも「いややなぁ、いややなぁ。あっちこっち切りとぉないよ」と言っておられます。
いつひどくなるか解らない腱鞘炎がいっぱいあるから。
でも一番頻繁に痛くなる部位に関しては「いつか切らなアカンかもしれん」とも言われてます。
桜ももう手術はしたくないんだけど、それが「フツ」とそれまで圧し掛かっているストレスから一気に逃れられる方法なら、また決心する時がくるかもしれません。
ちなみに手術費用は¥6.000(3割)でした。もうちょっと高いところもありますが¥10.000はまずしないでしょう。
※RSDについては別のページにて…。

 ここまで読んでくださってありがとうござました、&お疲れ様でした。
でもそれだけ悩んで、不自由な思いをされてるってことですね。お察しします。ここに挙げた例はあくまで私の経験です。
病態や病歴は想像以上に個人差があるようなので、あくまでも参考にしてくださいね。
あと、機会があったら漫画も読んでみてくださると嬉しいです〜^^;(笑)

2001年8月初稿