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●是正勧告の事例
パートには有給休暇がない。
●是正勧告・事例の詳細
スーパーを経営するL社は社員10名、パート20名を雇っているが、年次有給休暇については社員でなければ与えないという決まりがあった。ある日パートの一人である鈴木花子が個人的な事情でどうしても2日間の年次有給休暇を取得したいと会社に申し出た。会社は、2日くらいなら有給休暇を与えてもよいのではないかという気持ちもあったが、ここで認めてしまうと他のパート従業員も年次有給休暇の取得を主張してくるのではないかと思い、これを断った。しかし労働基準監督署の監督官に「これは違法行為」と指摘され是正勧告を受けることとなった。
●是正勧告書の内容
法条項等 |
違反事項 |
是正期日 |
労働基準法
第39条第3項 |
労働者鈴木花子に対して、年次有給休暇を取得する資格があるにもかかわらず、平成○年5月1日に本人が休暇を請求したのに対し、これを付与しなかったこと。 |
即時 |
●なぜ是正勧告を受けたのか?
年次有給休暇は、その発生要件である「雇入れの日から6カ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した者」には、パートであっても社員と同じように法律で決まった日数(たとえば雇入れ6カ月の者なら10日間)の休暇を与えなければなりません。
ただしパートタイマーなど所定労働日数の少ない労働者については、その所定労働日数に比例した日数の年次有給休暇を与えればよいことになっています。これを「年次有給休暇の比例付与」といいます。
「比例付与」の対象となる労働者は、次のいずれかに該当する者です。
1.1週間の所定労働日数が4日以下の者
2.週以外の期間によって所定労働日数が定められている労働者
については1年間の所定労働日数が216日以下の者
以上にあてはまる労働者については、労働者の所定日数に応じて下の表の日数の有給休暇を付与することになります。
所定労働日数 |
継続勤務年数に応じた付与日数 |
週 |
年 |
0.5年 |
1.5年 |
2.5年 |
3.5年 |
4.5年 |
5.5年 |
6.5年 |
4日 |
169〜216日 |
7日 |
8日 |
9日 |
10日 |
12日 |
13日 |
15日 |
3日 |
121〜168日 |
5日 |
6日 |
6日 |
8日 |
9日 |
10日 |
11日 |
2日 |
73〜120日 |
3日 |
4日 |
4日 |
5日 |
6日 |
6日 |
7日 |
1日 |
48〜72日 |
1日 |
2日 |
2日 |
2日 |
3日 |
3日 |
3日 |
なお、所定労働日数の少ないパート従業員でも、1週間の所定労働時間が「30時間以上」の労働者については社員と同じ日数の年次有給休暇を与えなければならないので注意してください。
本題に戻ると、以上のようにパート従業員に年次有給休暇を与えないのは違法であり、労働基準監督署の是正勧告にも真摯にこたえなければなりません。まずは今回、年次有給休暇を請求した鈴木花子に請求どおり2日間の年次有給休暇を与え、以後、このようなことが起こらないようパート用の就業規則を作成するなど、対策を講じておきましょう。
●是正報告書の書き方
是正勧告の指摘箇所
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是正報告書の記載例 |
〔パートに有給休暇がない〕
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