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FILM MAKER TAKESHI IKEDA
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2004年12月03日(金) ボナセーラ

到着が遅かったので,普段は撮れない夕景を撮りにポー川まで歩いた。
川までの道中、すれ違う初老の白髪オヤジに「ボナセーラ」と言われた。
またか、と思いつつ、その滑稽さにふと笑ってしまった。
でも自分の心はちょっぴり開け、自然の笑みが浮かんでくる。
面白い国だなぁ。

仮に日本で知らんオヤジから「こんばんは」と言われ,同じ感覚になるだろうか?
自分が日本に戻って知らぬ人に挨拶して何と思われるか?
僕が海外で暮らしたいと想う気持ちはこういうところにあるのではないだろうか?
あたりまえの事だけれども,そんな事に幸せになれる自分がいる。
そういう出来事が起こる事に感謝できる。
これは日本人だからこそ起こる感情なのだろうか?

あたりまえの事になってしまっているから、あえて言葉に出して伝えようとしない気持ち。
それは意外と人々の求めている事なのではないだろうか?
相手を「大切にしたい」と思っていても,それをはっきり言葉で伝えないと人はわからないものである。
でもそれを言ったとき、人は前述した僕の気持ちのように心は開かれてくるものである。
人と人の和はそこから始まるものなのではないだろうか?
イタリアでは頻繁に「Grazie」というが、日本でも「ありがとう」は頻繁にいいすぎても悪い事ではない。

マルコの工房に着いたのもかなり遅かったので,30分くらいしかいられなかった。
年末年始の予定を聞いて足早に帰ろうと思っていた。
すると日本人のお弟子さんがいるではないか!

最近マルコの周辺の事柄,他の職人や日本の楽器店の事を調べていくうちに、
リュータイオのことに興味を持つようになった。
技術的な事はまったくわからないけれども,僕自身この仕事が面白そうに思えるようになってきたのである。
バイオリンを創るという事に人生をかける。
そういうひたむきな一生懸命な気持ちがここに集っている。
そう想うと自然と謙虚な気持ちになるものである。

プラスのエネルギーのつまっているこの空間にいさせてもらえるだけで僕は幸せになる。
ありがとうマルコ。
彼にはいつもGrazieと言う。


お弟子さんは鈴木さん。
彼はハキハキとした応対で明るく元気。
ものすごくいい感じで、これがマルコの弟子なんだろうな、と思わせられる。
彼ともいろいろ話して、マルコのことを聞こうと思う。

マルコの人柄,そして弟子たちのひたむきな姿。
バイオリンにたずさわる人々との出会いは確実に僕の心を動かしている。
映画職人であるからこそ出会えるこういう人々。
いやリュータイオの世界はこういう世界なのかもしれない。
もし僕が人生振り出しにもどったらリュータイオを目指すかもしれない。

僕が日本にいた頃、やりたい事がわからないという人によく会っていた。
そういう人にはいまなら有無をいわさずリュータイオを勧めるかもしれない。
これは性格にもよるけれど,のめり込んだらとんでもない事になるだろう。
資金をためてクレモナに跳んでくる事は人生を開く活路となるはずだ。

マルコは彼得意のコントラバスの製作にとりかかっていた。
時間のない中、スチールだけにしぼってシャッターをバチバチ切る。
あっという間に100枚以上撮っていた。

帰り際、僕のホームページを見たかたずねた。
メールしたのにやはり見ていなかった。
マルコがいま見てみようという。
興味津々に見ていた。




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