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2005年06月26日(日) 海に洗い流した恍惚

前回ジェノバに来たときに、朝早くに海に出ると聞いていた。
それはイタリアだろうと日本であろうと同じことであろう。
ただどんなに頑張って始発でミラノを出たとしても、
ここボッカダッセに到着するのは9時をまわる。

ジェノバでのロケは夏である。
イタリアの夏の日差しはとてつもなく強い。
そんな中であえて日差しの強い日中に漁に出るわけがない。
僕は毎回、彼らの予定などわからないまま現地に着いて彼らの動きを待つだけである。

日は長く日差しが強い。
涼しくなるのは 19:00 を回る頃から。
でも彼らの仕事は日差しなど関係なかった。
海岸で待っていると彼らはいつの間にか船の脇にいて、漁に出ようとしている。
15:00 前である。

彼らの帰りを待つこと約2時間。
いつもの2人コンビが、いつも通り海から戻ってきて、いつも通りに船をあげる。
海岸にいた一般人はいつも通り野次馬のようにたかってくる。
そしてメインの漁師が魚を引き上げ始める。
野次馬の中にいた一人が魚を何匹かその場で買っていく。

僕はどのタイミングで声をかけようかうかがっていた。
パートナーのオヤジは温和で話しやすかったが、漁師自身は訛のことも頭にあり、
少し敬遠気味だった。
しかしとにかく話さないことには前に進まない。
なにがあっても話すことから先の展開が開けてくるものだ。

考えるより容易いこと


「シニョーレ!! 」

初めて声をかけた。
彼は意外にも僕にもわかる言葉で、丁寧に答えてくれた。
先入観などというものはよくない。
そんなものは吹っ切って物事に取り組むものである。

彼の答えは「NO」
法律のことを考えれば当然の答えである。
僕にとっては彼の船に一緒に乗り込んで撮影することが、
ボッカダッセでやるべきことだったのに、完璧に打ち砕かれた。

しかし僕はやらなくてはならない。
とにかく彼とコミュニケーションをとることが必要である。
そして彼らしさをおさめること。
その中で船に乗れればいいが、そんなことで乗れるようなもんでもない。
それなら別の案もイメージすべきである。

たった一つの答えが出たことで、こんなにも広がって行く世界。
プロジェクトを先にどんどん進ませるためには、
目の前にある壁を一つずつ崩していくことである。
ごく単純なことである。

船以外であれば問題はないと言っていた。
彼とはどんなコラボレーションが展開されていくんだろう。
踏み込んでいくことを恐れてはいけない。
美しい世界を描ききるために。



コメント

■海に洗い流した恍惚

漁のシーンの撮影ができないのは、とてつもなく残念なのですが、
だめだとわかっていながらも、いまだに何とかして撮れないかと考えています。
撮影できないケースでの作品作りをしなくてはならないのがわかったことは、
前進した証拠ですが、そんなときこそ、どう対応するかが僕の腕の見せ所なんでしょう。
絶対にいいもんになりますから。
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池田 剛 2005/07/05 07:18

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